「はは…。そうだな。悠はそういう奴だ。お前も気に入ったか？」

俺の問いにシシマルは首を左右に振った。
口を尖らせたようにいう。

「いや、俺はやっぱり嫌いですね。小鳥遊悠とはダチにはなれないです。」

「ほう…。」

俺は目を細めた。
こいつは…また意外な答えだ。

イヌヅカはシシマルの首に腕を回して軽く絞め始めた。

「コイツは～、兄貴のドコが気に入らないんだぞと！」

「うぐぐ、ちょ、マコト！マジに絞まってるって…」

「イヌヅカ、止めろ。けど、理由を聞かせてくれないか？」

しぶしぶ腕を解くイヌヅカから解放されて大きく息を吸い込みシシマルはいった。

「理由っうほどでも無いですよ。ただ、あの性格が苦手ってか……なんか嫌いなだけで」

俺は小さく笑った。
なるほど、悠も嫌われる事があるんだな。

「いや、十分だ。人間生理的に受け付けねえ奴はごまんといる。けど、解ってるな勝手な事はするなよ？」

「大丈夫。次はキッチリと段取りします。」

やる気満々の面でシシマルは笑っている。
コイツと悠は同じ学校みたいだし…露骨に喧嘩売るような真似はしねぇと思うがちぃとばかり不安だ…。

「よろしいではアリマセンの。でも…どうせなら次はワタクシが悠様と闘りたいデスワ。」

また、人の目の前に割り込んできたデイジーの髪を俺とローガンが片方づつ引っ張った。

「お前はスッ込んでろ。邪魔だ。」

『止めろよ。お嬢、どうせ、アキヨヅキに邪魔扱いされんだから。』

「痛！ちょ、二人とも離しなさい！取れる！取れてシマイマスワ！」

取れるって…やっぱりコレは触角かなんかなのか？

倉庫から戻ってきたメイドが叫んだ。

「お嬢様。準備が整っ……って！お、お前ら！お嬢様に何て羨ましい…羨まし…羨ま……何て酷い事を！その汚らわしい手を今すぐ髪から離しなさい！」

メイドは俺とローガンの手を叩き落としてデイジーを抱き締めた。
っか、だらしないぐらい顔がニヤケててウゼェ…っか、きめぇ。

「メイドどっからわいた。」

「だから…人の事をゴキブリみたいに言うのやめていだけませんか。この暴漢。」

「あ゛？」

アサツユはニッコリと笑ってない目をした笑顔で俺を見ていった。

「お嬢様に無礼を働いておいて暴漢以外なんと呼べばいいのでしょうか？」

「キリ、およしなさい。それより準備は出来たのデスわね？」

アサツユは姿勢をただして一礼する。

「はい。滞りなく。」

金髪触角は真面目な面で俺を見上げていった。

「よろしい。では、センヤ様行きマスわよ。」

「あ゛っ？何処に？」

「彼方の倉庫デスワ。ほら、行きマスワヨ！」

デイジーはステップを踏み。金髪触角を揺らしながら倉庫に向かった。

俺はイヌヅカ達と顔を見合わせた。
どうも嫌な予感がする…。

『怒鳴られる前に行け。ノッてる時に言うこと聞いてねぇとお嬢は手がつけられなくなるぞ。』

それはシャレにならねぇ。
ローガンの言葉に背筋を冷しながら俺らは倉庫に走った。