嬢ちゃんはすべてをあきらめた様に首を左右に振っていった。

「わかった…お前ら単細胞生物頭にもわかるようにいってやる…なの。」

目を丸くしてる俺と岡崎君は苦笑いした。

「銃弾の原理はわかるか…なの」


俺は指を鉄砲の形にしていった。

「弾を撃つんだろ。」

「要はそれなの。…弾(左)を相手に触れて、撃鉄(右)で打ち出す…なの。あとの細々は同時に打てばすげぇ威力になるとでも思っとけ…なの。」

若干バカにされた気もするがやっと理解した。
ゼロ距離射撃ってわけか。

おっちゃんがいった。

「まぁ…本当はもっと複雑なんだがなぁ。」

「羅漢の…このアホ二人には説明するだけ無駄なの。…それより、ウニ頭…腕は平気か…なの？」

岡崎君は二、三回ほど拳を握る、開くを繰り返してうなずく。

俺はいった。

「捻ったのか？」

嬢ちゃんがいった。

「アホか…なの。自分の拳を…自分で殴る技…そうなんども使えるわけ…無いだろ…なの。今は平気でも…いずれは腕か拳が壊れる…なの」

岡崎君は自分の拳を見つめた。
少し間を開けて嬢ちゃんを見ていった。

「一日どのくらい打てる？」

「本気なら一発。でなくとも四、五が限界だろ…なの。もっとキッチリ完成したら六、七発は打てるかもな…なの。まぁ…その場合は一撃で終わるから数を打つ必要はないけどな…なの」

「そうか。」

「けど、嬢ちゃんには通用しなかったよな。」

嬢ちゃんはﾆｬﾘと笑っていった。

「理合技の流しは何千回と…やってきたなの。たかだか数日で出来た…技が…通用するわけ無い…なの。」
それにしてもだ…
今だけでいったい嬢ちゃんにどれ程バカにされたことやら……さすがに悔しい。
俺と岡崎君は顔を見合わせて肩をすくめあった。
言葉にしなくても相手の顔を見れば何を考えてるかわかりあえることはたくさんある。

俺は立ち上がっていった。
「あ、嬢ちゃん。」

「なんだ…なの。」

俺は嬢ちゃんの肩に手を置いて、そのまま腰をおろした。

「よいしょ。」

嬢ちゃんもいっしょにペタリと座る。

俺はニコリと笑ってうしろを見た。
岡崎君がいった。

「膝ついたな。」

秋宵月の嬢ちゃんは半開きの目をパチリ開いてまばたきする。

「なっ…」

「油断大敵って奴か嬢ちゃん♪」

嬢ちゃんは一度顔を伏せると、すぐに頭を上げてニコリと微笑んだ。

純粋にはじめて見る笑顔で秋宵月の嬢ちゃんはいった。

「成る程…まだ、まだ…元気と言うわけか…なの。いいだろう…一度…秋宵月流の本領を体験してみろ…なの。」

だが、正確にそれを見てたのは多分コンマ数秒だけ…なのに何でそんなにはっきりわかるのかって？

そりゃ…決まってるだろ走馬灯ってやつだよ。

「死ぬなよ…なの。」