「うぉらあぁぁ！」

胸板に肩、腕に拳の…

ラッシュ！ラッシュ！ラッシュ！ラッシュ！ラッシュ！ラッシュ！ラッシュ！ラッシュ！ラッシュ！

「踏み込みが足りん！！ふん。」

「おわっ！」

また、同じ様に弾かれた。
「こうだっ！！」

ドウメキは右腕を縦に、ガードするような構えでぶつけてきた。
ドッ！

「うぶっ！」

ドン！ドン！
二撃目の右ストレート、三撃目左ストレートの連拳……

「ぶるあっ？！」

対衝ヴェストをまるで意味を無いような威力…
二発で俺は後ろにブッ飛んだ…

「おら、立たんかあぁ！！」

ゴガッ！
「おげっ」

「起きろぉ！」

ズンッ！
「ぬぁっ」

「どうしたぁ！こぞぉ！」
ドン！ﾋｭﾝｯ…

バキャッ！バキーン！ﾊﾞｷﾍﾟｷﾊﾟｷ…


「うむ…任せて大丈夫の様だな…なの」

ブッ飛ばされる悠を見て、真桜はうなづき立ち上がる。

「あ、そうだ。駒狸…」

「「なにさね(ですか)？」」

駒狸家の二人が同時に返事をする。
まおは面倒そうな顔をした。

「……雷果の方なの」

「はい？」

「お前掃除や洗濯は出来るか？…なの」

「えっ、はぁ、まぁ得意ですけど…」

「料理は？」

「それは…あまり。簡単なものくらいならできますけど。」

「わかった。じゃぁ、これ…任せるなの。」

真桜はライカになにかを手渡す。

「え、と。なんですか？」

「真桜は今から出かける…なの。その間…洗濯と掃除…頼むなの。きっと…あの調子だと…すぐに汗だくになる…なの。」

真桜はチラっと目の端で悠を見る。
倒されるたびに起き上がり何度もドウメキに向かっていく。

「ついでに…適度に水分も与えてやって来れ…なの。」

「わかりました。しっかりサポートします。」

「しっかりやれなの。」

真桜はライカの肩を叩いて道場から静かに出ていった。


「らあぁぁ！」

俺が真桜が出ていったことに気づいたのは後のことだ。なにしろ、周りのことに気を回せる余裕がなかったからな。

目の前にいる筋肉オヤジはどんなに殴ってもビクともしやがらない。

まるで分厚い綿でもなぐってる様な感じがした。

「ふっ…らぁ！」

ぴっ…殴るのを止めて、右足をギリギリまでのばして左の足を顔面目掛け、蹴りあげた。

「ふん。」

ドウメキは余裕な表情だった。
右腕で蹴りを受け止められた。

「ふぅん！」

俺の蹴りを振り払い、不安定な体勢のところをぶん殴られた。

「…っがぁ！」

俺は受ける覚悟も力を入れる間もなく打ち込まれ、数メートル後ろに飛んでうつ伏せに倒れた…。

「む…仙ばぁ。」

「はいはい。」

水仙は悠に近づいて、腹の辺りに手を添える。

「どうじゃ仙ばぁ？」

ドウメキが悠を見下ろしながらたずねる。

「………ダメだね。しばらく寝かせといたほうがいいさね。」

水仙は悠に添えた手を腹部から頭に移動させながら首を振る。