「なんだ、俺が一番か。」

ドウゲンは白眼でギョロリっと道場を見渡し終わると俺を睨む。
もしかしたら、ただ、見てるだけなのかも知れないけど目が座っていて怖い。

「なぁ、オッサン。ちょっと聞きたいんだけど。」

「…なんだ。」

「昨日、あれから勁を打とうとしたら一度ぶっ倒れたんだけど。」

ドウゲンは喉の奥でどもりながら口を開いた。
笑ったのかもしれない。

「当然だ。どれだけ勁を蓄積できようが100は100。1000は1000。出しっぱなしすれば空になる。特にお前は栓の出来ない蛇口と同じ、一度で大量に吐き出す。1日5発も打てば勁力は尽きるだろう。」

ドウゲンが言うには勁とは氣。氣とは生命エネルギーの様なものだといった。

「……じゃぁ、どうしたらいい？」

ドウゲンは猛禽類の様な指を三本立てて、俺の目の前に前につきだす。

「答えは3つ。1、蓄積量のキャパシティを増やす。2、一発一発の勁を調節する。3、勁力の回復力をあげる。例外を除けばこれ以外の方法はない。」

「例外ってのは？」

「………外氣を喰らい取り込む。例外中の例外だがな。」

ドウゲンは口早に言い切ると腕を組んで、フンッと唸った。
言ってる意味がわからなかったけど、俺はそれ以上話を聞くのは止めておいた。
だってヤツの額に筋が浮かんでたからな。

「じゃぁ、どれがいいんだ？」

質問するとギョロっと俺を睨む。
頼むからやめて欲しい無茶苦茶怖いから…

ドウゲンは口の中で何かを噛み砕いたように言う。

「………2だ。ただし、それでも付け焼き刃程度にしかならんぞ？本当ならお前の様に大雑把な奴が1日2日でどうこうできる話じゃないからな。」

「本当ならって事はどうにか出来るんだろ？」

俺はニッと笑った。
笑顔で言えば、ドウゲンも笑顔で答えてくれるはずだ。

「口の減らんガキだな。しかも、憎たらしい部分は弥一に似てやがる。」

「……」

ぜってぇ、ブッ飛ばしてやる。



ドウゲンと話してる内に残りの8人も訪ねてきた。
じいさん、ばあさん、オッサン、お姉さん(？)なんだか町内会の集まりにも見えてくる。

皆、私服から胴着に着替え終わると俺を囲う様に座って色々と話はじめた。

「さて、人は集まれど時間は過ぎる一方どうする」

「各自が得意分野でしめあげるか。」

「ただ、がむしゃらにやるわけにもいかんじゃろうが。」

猿渡、天馬、夏喜の順に話が周り始める。

そのやり取りを無視して、ドウメキがまおにいった。

「秋宵月の何か考えは有るか？」

まおは首を横に振った。
珍しく考えがまとまっていないみたいだ。

俺はそっと手をあげる。

「……あの、皆さん。少しよろしいですか？」

全員の私語が止み、視線が俺に集まる。

姿勢をただして俺はいった。

「鍛えてもらう側が言うのもなんですが。できれば…俺の考えを聞いていただきたいのです。」

「悠…何かあるのかなの。」

俺は笑った。
策なんて大袈裟なものじゃ無いけど、すこし前から考えていた事を話した。

内容はかなり無茶苦茶だったはず、だけど今ここに集まったヤツらは俺の話を聞けば聞くほどまえのめりになった。