食事が済んで。

まおとコマリが食器の片付けに台所にいったので、俺は軽く時間まで休憩しようと新聞を開いた。

経済などの意味不明かつ興味なしなものは無視し。

だって、日本円がどうのこうの難しい言葉を使わなくても俺なら一言でおわる。
不景気。たった三文字だ。

俺はテレビ欄に軽く目を通してから、ニュース記事に目を向ける。
【集団自殺！！今度は若者が6人！】
【ワゴン車で練炭自殺！】

「また、この事件か…。」

最近、新聞はこの手の記事ばっかりだった。
夏休みには街にガキが溢れるが、何故か同じように死人も溢れるのだ。

「悠君。」

名前を呼ばれて俺は新聞を畳んだ。
コマリは俺の前に絵の具の白と緑を少しの水に溶かした様な色をした液体がたっぷり入ったコップを置いていった。

「どうぞ。」

「……これは？」

「特製の栄養ジュースです。」

俺はコップを持ち上げてみた。
何故だろう、見た目はいたって液体なのに波紋が立たない。ゼリーのように固まっている。

俺は小指でちょっと突っついてみるとホットミルクを作った時にできるような膜が張っていた。
色は不気味な白濁緑色だけど。

「あ、早く飲まないと固まっちゃいますよ？」

「(え、これ固まるのか？)まてまて、これは飲めるものなのか？」

「え……飲めま…せんか？」

コマリは分かりやすすぎるくらい、悲しそうな顔をして俺を見てくる。

「え、いや。飲むよ。俺のために作ってくれたんだもんな！」

俺は自分を呪いながら、謎のジュースをイッキ飲みした。

「……？！！」

甘、辛、苦、酸……
口の中にあらゆる味が広がる。
しかも…青臭さや甘ったるい匂いがなぜか今さら出てくる。

「どうしました…？」

不味い！飲めるか！いや、それ以前にこれは飲み物か？ふざけるなバカヤローって言えるわけがない。

俺は鼻からめいいっぱい空気を吸い込んで、口のなかの液体を喉の奥に流し込んだ。

「ふ、ふぅ…な、なんかどくそうせいのあるあじだたよ。」

むわ～っと口内に青臭ささが充満している。

「美味しくなかったですか？」

「えーと、これ中身は？」
「お野菜にサプリメントを砕いたものと牛乳です。」

絶対嘘だ。野菜と牛乳であらゆる味を引き出せる不思議な液体が出来上がる訳がない。

コマリは錬金術でも取得してるのだろうか。

「そ、そうか…うん。ありがとう。なかなか良かったよ。」

「そうですか！嬉しいです。九頭竜さんたちは何でか飲んでくれないんですよ。これから鍛練前と鍛練後に作るんで飲んでくださいね。」

「え゛？」

「あ、嫌…ですか？」

コマリはものすごく落ち込んだ顔をして、しずしずと空になったコップを持ち上げる。

「そ、そんなことないぞ……」

自分でもわかるくらい固い笑顔で俺はいった。
まったくのバカだ？
自分で死亡フラグを立てたんだから。


だけど、仕方ないよな…
コイツはあんなにも似てるんだから。