「ったく、これからは物を投げない、わかったか？」

「手が滑っただけ…なの。」

まったく反省の色無し。
俺はなにか嫌みでも言おうかと思ったが、腹がグゥッと鳴った。

「……朝めし、食ってなかったな。まお、準備してくれ。」

「了解…なの」

真桜はソファからやたら綺麗に降りて台所に向かっていく。

後ろ姿を見届けて、俺はコマリの方に向きなおり聞いた。

「コマリさん、朝飯食った？」

「え、いや、急いで来たので食べてませんけど、抜くことも多いですから。平気ですよ。」

「急いで来た？」

俺は無駄にデカイアンティークの古時計を見た。
時間六時半前をさしている。

確か鍛練は七時からだったはず。

「何か用事でもあったのか？」

「そ、その…ですね。少しでも…その…私」

コマリは指と指をつきあわせたり。足をまごつかせたりして、なんだが久々に女の子らしい女の子を見たきがする。

俺は何も言わずに、コマリがしゃべり終わるのを待った。

「何か…その…お、お手伝いをした…」


「お前たち、朝食の準備ができたなの。」

普段よりやや大きめのトレイに朝食をのせた真桜が戻ってくる。

それと同時にコマリは口を閉じてしまう。

「あ、あぅ…」

「話すのもいいけど…朝食を食べながらにしろなの。」

真桜は俺とコマリの前に朝食を並べていく。
メニューは炊きたてのご飯にワカメと豆腐と油揚げの味噌汁、アジの干物、キュウリの浅漬け。

バランスを考えた満点の朝食。

「あ、わ、私の分までわざわざ用意…」

「真桜の作った朝食をキャンセルは…認めないなの。」

「い、いただきますぅ！」
コマリは真桜の一言でヒュバっと席に座って両手を合わせる。

俺は笑ってしまった。

「ふ、はは。コマリさんは、まおが苦手か？」

「に、苦手じゃないですよ。ただ、その…あ、秋宵月さんと悠君の…関係が気になって…」

「まおと俺の関係なんて、そりゃ…」

「夫婦なの」
「家族だろ」

「「「……」」」

窓の外で鳴いているスズメの声が聞こえるくらい、部屋の中が静まった。

「普通に誤解される言い方はやめい。」

「なんだ、真桜に不満でもあるのか…なの。なんなら…朝食と一緒に真桜を食べると…いいことがあるなの…性的な意味で…」

本当に朝っぱらからこの小娘はナニを言っているんだろう。

「コマリさんが固まってんだろ。冗談はその辺りにしとけ。」

真桜の頭をワシワシッと撫でた、何か言いたそうな顔で俺を見たが小さくため息を吐いて近くのソファに座った。

「あ、あの…」

「悪いな、うちはだいたいこんな感じなんだ。気にしないでくれ。むしろボケれたら気軽にボケてくれてもいいし、ツッコミも大歓迎だから」

「が、頑張ってみます。」

どうやらコマリは何事にも真面目にとらえてしまうタイプみたいだ。

朝食をたべながら改めて急いで来た理由を聞くと色々と俺のサポートをするためにきてくれたらしい。

それを聞いて俺はどうしようかと考えている間に、意外にも真桜がよろしく頼むと先に答えた。