「そうだ。悠はあのオッサンとどんな関係なんだ？」

紅は拳二の事を聞いてくる。
子供でもかかえるように俺を後ろから抱きしめながら…。

「話してやってもいいが、まず、腕をどけろ。そして、離れろ。」

「え～。」

紅は人の頭のうえで不満そうな声を出してからしぶしぶ離れた。

「なぜに、嫌そうに……拳二は俺の先輩だよ。俺が一年の時、三年だった。」

「なんだ、普通だな。…ラヴリークラッシュって？」

普通以外にどんな答えを想像してたんだ？

「ラヴリーじゃなく正しくはダブリー。革命的なバカで高校1年生を2回もやったんだよ。その癖やたら中学に遊びにくるし。」

「やっぱ、オッサンバカなんだ。」

「色んな奴を見てきたがアイツ以上のバカは居ないはずだ。」

何しろ秀吉を【しゅうきち】。織田信長を【おりたしんちょう】と読んだ奇跡のバカだ。
よく、高校に入学して卒業できたと思うよ。

「ふぅん。それで今はヤクザか。」

「人間どう転ぶかわからんと感じさせられるな。けどアイツ腕っぷしは凄いから。」

「あぁ。それはわかった。Aクラスかな。けど、あれくらいなら結構いるぞ。」

「う～ん……何て言うか、拳二は熱いタイプなんだよな。」

紅はどういう意味だとわかりやくす首を傾げる。

「ダチのためとか誰かを助けたいって時に本気になるったら、解りやすいかな。」

「おぉ、見た目オッサンのわりにはカッコいいじゃん。」

コイツわりとズバズバ言うな。まぁ、拳二はまんまオッサンだし仕方ないけど。

「そだな。…サンシャイン通り対立族団壊滅の乱しって知ってる？」

「4年前かな族同時の衝突があった。確か双方が壊滅したんだよな。重軽傷者で死人は出てないのが奇跡って騒がれてたな。」

今と同じくらい、夏に起こった最大級の事件で

「そ、けど事実は別にある…本当はサンシャイン通り族殺し。やったのは拳二。しかも1人でだ。」

そこまで話すと紅は姿勢をただして詳しく聞きたいと言う。

「馬鹿な話しだよ。」

拳二はダチだか後輩だかがとある暴走族チーム員である「1人の男」にカツアゲされたって話をきいた。

拳二が聞いた男の情報は「見た目の特徴だけ」非常に曖昧な情報だ。
俺でもこれだけじゃ探しようが無い。

「馬鹿がとった行動は、目標が所属してるであろう暴走族チーム員を片っ端から襲ってみせた。」

けど相手の数だって4、5人じゃない。人数が多く「全員をヤる」には時間がかかりすぎる。

「確かに…いや、けど…」

「言いたい事はわかるけど聞け。そこで拳二は今度は「その暴走族チームと仲が悪いとされていた別のチームのメンバーまでも襲いはじめた」。そして、互いが互いの「刺客」であるって偽る事で両チーム間の関係は悪化。最終的には壮絶な大乱闘に発展して多数の重軽傷者だけを残して両暴走族チームは壊滅した。」

「1人で潰したのは凄げぇけど……バカじゃん。目的すら変わってるし。」

「そ、だいたい、仕返しも頼まれた訳じゃないし。結局、伝説と異名が残っただけだ。」

笑い話にもならない大バカ話だよな。