それから二時間、皆で歌いまくった。
多分今まで生きてきた中で一番喉を酷使したきがする。

部屋を出て赤いカーペットの敷かれた明るい廊下を歩いていると紅が肩を叩いて言ってきた。

「楽しかったろ?」

「ん～…まぁな。」

楽しくてもやっぱり人前で歌うのは苦手だ。

「ところで今何時?」

「8時少しすぎだな。」

千夜が携帯を開いて時間を確認する。

「帰るにはちょっと早いな」

「いや、ちょうど良いと思うぞ。それに、そろそろ手持ちが…な。」

亮は財布の中身を見ている。
帰りの電車賃などを心配してるのだろう。

隣では千夜が疲労顔で言う。

「俺もダリィ…」

「んじゃ解散にするか?」

「えー……一階ってゲーセンだよな?解散なら何か最後に勝負してこうぜ。喉渇いたしジュースかけて。どうだ?」

このメンツで勝負なんて言葉を使ったら、断る奴は一人もいなかった。
全員やる気満々。

だって仕方ないよな。
男ってのはいつの時代も勝負事には目を輝かせちまうんだ。老若関係なくな。


「これにするか。」

結構広めのゲームセンターを歩きまわった結果。
選んだのはエアホッケー、最近はあまり見なくなった対戦ゲーム。

最初はバトルロワイヤルでやるつもりだったが時間もないし、格ゲーやガンシューでは明らかに俺が圧倒的に有利になるから。

2・2でガチ勝負できるものを選んだ。

肩を回しながら紅が聞いてくる。

「どう別れる?ジャンケンか?」

「ん～…東西連合ＶＳ秋葉組でどうだ?」

別に何か考えがあったわけじゃないが言ってみた。

「俺は問題なし。」

「…OKだ。」

「よし、勝つぜ。亮。」

「おう。」

3人は所定の位置に移動して、準備をする。

俺は金を入れてから亮の横に行く。

円盤はこっち側に落ちてきて亮がステージに乗せる。

「じゃ…いくぞ？」

「先制を決めてやれ亮。」
空手界の若き新星
四季のセクハラマスター
VS
紅色ストーリーギャング
孤高の死神

「いつでもどうぞ。」

「……来い。」

「どりゃ。」

カコーン！
亮が弾いた円盤はど真ん中を突き抜けていく。

コン！

「よっと。」

紅は向かってきた円盤を軽く弾き返した。

コン！ココン！
斜め前の壁に当たり俺の方に来る。

「もらったぁ！」

ガコォーン！
フルパワーでぶん殴る勢いで打ち返した。

「うわっ」

ガコォーン、ガコォーン、ガコォーン、ガコォーンガコォーン……スコン！

円盤は乱反射につぐ乱反射、誰も手が出せずにステージの上をしばらく暴れまわり。

ゴールソケットに落ちた。俺たち側の…

「悠…」

亮が円盤を取り、俺に渡してくる。
目は冷たい。

俺は一言謝って円盤をステージに戻す。

「……すまん。っと言いつつスキアリ！」

ガコォーン！スコン！

「あちゃ、油断した。」

「…ちゃんと見とけよ」

円盤を置く、打つの速攻で相手のゴールソケットに叩き込んだ。