「ムググ？！(何？！)」

「……」

ザッ！

「ムグー！ムグ！(悠！前！)」

天狗面が再び仕掛けようとしたが…

ヒュ…トンッ！

悠は優しくさえ思えるほど緩やかに柔らかく拳を天狗面の鼻先に当てる。

ボゴッ！

悠の足下の畳がまるで岩でも落とした様に凹み。

グワッシャーンンン！

天狗面は後ろからゴムにでも引っ張られた様に縁側の窓をブチ割り飛んでいく。

「(まさか、ここまで！？)……成功…なの」

「ぷは！ま、ま真桜！あんた？！縛られて…って…悠？」

「……」

悠は腕を挙げたまま動かない。

「成功…って…何？悠はどうしたの？！！」

鈴猫はいつの間にか縄から抜け出して自分の事を押さえ付けてきた真桜を引っ付かんで質問する。

「あ、あのね…鈴猫さん。これ全部お芝居なの…」

「え？」

「よっ。」

さっきまで倒れてたはずの紅は自分で縄を解き。
優日は帽子を新しい物と変えつつ2近づいてくる。

「ぬ……痛っっ…全く大した威力だ。」

ザリリ！！

さっき、ぶっ飛んだ天狗面を着た男は面を外しながらノソノソと近づいて来る。
「むっ…平気か猿渡の」

「無論…だ。俺を誰…」

ﾌﾞｼｭ！
猿渡と呼ばれた男の額が裂け血が吹き出す。

「ぐおおつっ？！裂けた！額が裂けたー！」

ドダ！ゴロゴロゴロ！
ブシュュ！
流血しながら転がりだす。

「水仙っ、仙ばぁっ！」

「うるさいねぇ…叫ばんでも居るさ…それより、ﾊﾞﾊﾞｧ言うな。」

緊迫した雰囲気から一気にドタバタしはじめる。

「え、あ？な、何？お芝居って…？」

「ふぅ……一芝居打たないと悠はハンマーで…殴っても開門しないと…思ったから…なの」

「……」

悠は意識があるのか無いのか無言で居る。

「……どうやら、まだ放心状態の様だな。」

龍(？)の面を着けた、一番大きくてゴツい身体をした男が悠に近づく。

「アレだけの勁を出し切ったんだ。まぁ当然か、よし…戻ってコォイ！」

ドゴンッ！

「ゴホッ！？」

龍面の男は悠のボディに右ストレートを打ち込む。

「「「オオォイィ？！」」」

紅、鈴猫、優日は同時に叫んだ。

「はっ…俺は一体？」

俺はキョロキョロと辺りを見渡す。

「「「ウソオォ！なんで！」」」

「アホ…さっきのは…殴ったんじゃ無く…勁を送っただけ…なの」

真桜はバカにした目で鈴猫達を見る。

「そうなんだ…勁って凄い…」

優日は両手を組んで感動する。

「「いや…絶対違うだろ(から)。」」

紅と鈴猫はブンブンっと首を振る。

「っか…？なんだ…この状況？紅、真桜、優日無事なのか？」

俺は3人の元に駆け寄る。

「おぅ。大丈夫だぞ。全部芝居だからな。」

「芝居？」

「あ、えとね…」

「説明は…後で…いいなの」


説明をしようとした、優日を真桜が止める。