ｰトレーニングルーム【デイジー専用】ｰ

「あん？」

さっきとはうって代わり…トレーニング器具の様な物は一切無い小部屋。

だが…明らかに変だ。

「……なんで、一部だけ畳なんだ？」

壁も床も体育館の様な木製タイル張りなのに…

何故か部屋の中央だけ畳が四枚ほど敷かれている。

「ワビサビと言うやつデスワ♪まぁ、座りましょう。」

「……」

コイツは一度日本の文化を勉強し直すべきだな。
詫寂の意味を全く理解してない。

「さて、あらゆる冗談をオイトキマシテ…千夜様。」
「あ゛？」

「３日で強くなるのは一般的には不可能デス。」

「……悠とあの小娘(真桜)の組み合わせでもか？」

「無理デスワね。ナニかしら常軌を逸した真似でもしない限り。」

「ふん……っー事はだ。俺も変わりようがねぇわけだ。」

俺は立ち上がる。

「アラ？どちらへ？」

「帰る。変わらねぇなら居る意味がねぇ。だったら死ぬ気で走り込みでもする。」

「はぁ…千夜様、皆さんに「人の話は最後まで聞け。」と言われませんこと？」

「なんだと…」

「一般的には不可能でも、私なら可能デスワ。」

「……信用ならねぇな。」
俺は座っているデイジーを見下ろす。

すると、デイジーは立ち上がり。

「フフ、千夜様。」

スッ…パァン！ドザッ…

「うっ…？！」

俺は倒れた。
いや、正しくはナニかをされて仰向けに倒された。

「ヨイショ。」

デイジーは俺の上に馬乗りになり、マウントポジションで顔を覗き込んでくる。

「テメェ…」

「確かに私は勉学等では真桜には「やや劣る」所もアリマスワ。けれど…コーチングと言う点では一度も負けた事はアリマセンワ。」
デイジーはビシっと指を立てる。

「はっきり言って、真桜は…あの娘は鬼才の天才。ユエに人にナニかを教えるのは不得手、下手と言ってもいいデスワ。」

「……(コイツ…)」

本気っ…真剣だ。
デイジーの眼を見れば判る。

普段、秋宵月を親友と語ってるコイツだが…

多分…それと同等に好敵手として思ってんだろう。

「…千夜様、聞いてマスの？」

「んっ…あぁ…」

「真桜は唯我独尊の天才。しかし、私は稀代天才。私をコーチにする選択は大正解デス。さぁ…ドウシマス？」

デイジーは両手を広げる。

「……信用ならねぇ」

「お嬢様が此処までへりくだっているのに、この男…」

朝露が今にも頭を踏み潰すぞという形相で俺を睨む。
「キリ。私は今、千夜様と話してイマスワ。」

「っ……失礼しました。」
『ふっ…』

苦虫を噛み潰した様な顔の朝露をみてローガンは小さく笑う。

「この際だ。腹割って話せ…テメェの目的はなんだ？」

「仕方アリマセンワね……目的と言う程の物では無いデスワ。ただ…ゴニョゴニョ(真桜に敗けたく無いだけデス)」

デイジーは耳うちしたあと恥ずかしげにプイッと横を向く。

「……そんだけかよ。(敗けたく無い…だけか。)」

「十分な理由デスワ。けど1つ勘違いシナイで下さいまし。」

「あ゛？」

「私も真桜も遊びではやらない。やるからには本気デス。」