裏道を使い。
飛ばす事、数分で目的地に近づき。

ブロロロロォ！
キキィ！

ビルとビルの間にある空地にハーレーを停車した。

「おーい、千夜！」

誠が手を振りながら小走りに近づいてくる。

「どうなってる？」

俺はヘルメットを外し、すぐに誠と合流して闘路に向かう。

「どうもこうも…行けばわかるぞと…けど、怒るなよっと？」

「あ゛？」

ｰ東口闘路ｰ

ザワザワザワ…
ザワザワザワ…

「だからよ、解るだろ？どう考えてもおかしいだろ？」

「解りませんし、おかしくもありません。」

闘路では大勢の人だかりが出来て、その輪の中央では2人の男女が言い争っている。

「だいたい、乙女(おとめ)だって、気に入らねぇだろ？あの威張りくさった和辰の…」

「俺がなんだ？」

ザワザワザワ！
ザワザワザワ！

俺が近付くと人だかりが割れ道が開かれる。

「わ、和辰に戌塚…」
「和辰さん！」

言い争っていた、男は苦い顔をして女の方は少し明るくなる。

「なんだ？何でさわいでる？」

俺は男に近づき睨み付ける。

「っ…」

さっきまでの威勢は何処にやら男は黙り込む。

「和辰さん、私が話します。」

ショートボブヘアで前髪をカチューシャで止めた少女が手をあげる。

「話せ。五月女(さおとめ)」

この女は五月女乙女(さおとめおとめ)
東口ランキング４位で唯一の女ランカーだ。

「はい。こいつら、下剋上を起こすと…」

「下剋上だと？……何のつもりだ？あ？こら？」

「ふ、ふん。決まってんだろ…お前にはついてけねぇんだよ！」

「あ゛？」

「(あ～ぁ…絶対切れるぞと)」

戌塚は千夜の後ろで首を振った。

「ボス(氷室)が消えてから、うちは無茶苦茶だ。秋葉にも東にも嘗められちまうし、何よりあのランカー荒し！あの件だって音沙汰無しじゃねぇか！」

男は堰を切ったように怒鳴り散らす。

「…ランカー荒しは勘違いだ。」

「勘違い？勘違いでボゴられて終いか？おかしいだろ！戌塚！アンタもそうだろ！とばっちりで秋葉の頭にやられた腹が立たないのか！」

男は戌塚に同意を求めた。

「……」

俺はあえて口を挟まずに誠を見る。

「俺はそんな事は知らないぞと。」

「「「……」」」

誠の言葉に皆固まる。

「…っはぁ？」

「ランカー荒し何か知らんし、アニキと喧嘩(やった)のは個人の挑戦だぞっと。だから俺は腹なんか立たないぞと。」

「ぐっ…」

「だいたい、嘗められるとか嘗められないとか…もっと仲良くしたらいいと思うぞと。アニキ達も西の連中も楽しい奴等が多いぞと。なー？千夜？」

誠は俺の肩をポンと叩く。

「ふん。…仲良くは兎も角………競い会うってのなら歩み寄るのも良いだろ。」
俺は誠を見ずに呟く。


「あり得ねぇ…話になんねぇ…そんな甘い考え！マスターが良いと思うのか！」
「るせぇよ。氷室さんだって、悠や虎琥狗さんとは普通に話してんだ。問題ねぇだろ。」

俺はザックリと切り捨てた。