ギリッ
悠は歯を喰いしばり、拳を固めるが…

「動くな…判るだろ？今お前は死んだ。」

「ぐっ…」

頸動脈を正確に抑える柏に悠の身体はビクッとなる。

「それとも…ションベン撒き散らして情けない姿で眠りたいか？あ？」

ﾐｼｼ…
柏の指が首にめり込んで行く…

「っ……(ヤベェ…)」

視界が朦朧になりはじめ…
パンッ！

「かはっ…はぁはぁ！」

「ほぉ…」

あれだけ食い込んでいた柏の手が秋宵月の叩きで簡単に外れる。

「そこまでなの…誰か知らないけど、真桜のモノに手を出すなら…殺すなの。」

「くっくく……なるほど、いい女だあと10いってりゃ俺の女にしてやりてぇ」

柏は立ち上がりながら秋宵月を見る。

「真桜にも選ぶ権利はあるなの。」

「くっくく、柏だよろしくな。」

「ｺﾞﾎｯｺﾞﾎｯ…何しに来やがった？」

喉を撫でながら悠は秋宵月を後ろに引っ張り柏を睨む。

「おー、そうだ、姉貴に挑む馬鹿を見に来たが…これじゃ…立会人はしてやれねぇなぁ。」

「あ？」

「そうだろ？姉貴より弱ぁ～い弱ぁ～い俺に負ける様なもっと弱ぁ～い男を挑ませると思うか？」

「てめぇ、今のは…」

「勝負は！」

柏は怒鳴る…

「勝負は一回一回が決着だ。例え一瞬でもお前は「負けた」…違うか？」

「……っ」

悔しいが反論出来ず、唇を噛み締め血が流れる。

「(ふふ。)チャンスをやる。四日後、正確には三日後ちょっとしたバカンスに行く…地獄のな。」

「……」

「そこで見極めてやる。まぁ…来る覚悟があるならだけどな…あぁ…別にバカンスを楽しみたいなら別にそれでもいいぞ？何人でも呼べよ。はっははは。」

柏は高笑いしながら出ていく。


「その……悪い、悠。その柏は…」

「いい、何も言うな。金剛…柏に言っといてくれ。」

「……何てだ？」

「地獄のバカンスでテメェの顔面潰してやる…てな」

「…わかった。…悠、俺は柏側だけど……お前の味方だからな。」

「こっぱずかしい事言うなよ。またな。」

「おう。」

金剛は出て行こうとしたが…

「なぁ金剛…柏の……鍛練耐えれるか？」

「……殴られるし酷いときはナイフとか瓦礫とか投げて来るし無茶苦茶ばっか言うけどな…あぁ見えて柏は自分が出来ない事はやらさないんだよ。」

金剛は軽く手を振り出ていく。

「……なぁ秋宵月」

「何。なの…」

「今から2日で、10倍強くしてくれ。」

「不可能なの」

「はっきり言うなよ～、今は覚悟しろ！とか言ってくれる所だろ…」

「真桜は魔法使いじゃないなの。けど…」

「けど？」

「血ヘド吐くまで走り込ませて、血尿出るまで投げ飛ばしてやるのは出来るなの」

秋宵月はうっすらと笑い、手を伸ばす。

「ｿﾞｯ……に、にひひ。OK頼むぜ、まお。」

悠は手を握る。

「まお？」

「真桜だからまお。秋宵月は呼びにくいし…ダメか？」

「……他の奴に呼ばせたら殺すから注意しとけなの。」


………