しゅうぅぅ…

「やった…」

誰かが呟いた…
その一言に皆ワッ！と声をあげた。

「…にひひ、チクショウ…ぶべっ…」

ドダッ……
口から血を吐き出しながら仰向けに倒れて行き…

「「「！？」」」

「ふぅ……両手を使ったのは久々なの」

秋宵月はポンポンと服の汚れを払いながら立ち上がる。

「…あのガキ何で立ってんだよ……」

千夜の疑問は当然だった。今しがた悠の放った渾身の一撃は確かに命中していたはず。

「…あたってない…」

翡翠が小さく呟く。

「あ？」

「仔猫ちゃんの言うとおりだ…当たって無い。」

どうやら、金剛、紅、鈴音、翡翠の4人には何が起こったのか見えたらしく頷く。

「待てよどーゆ事だぞっと？」

「空中に投げ出された不安定な体勢で悠の拳を悠に流した…としか言えないわね。」

鈴音は見た通りを伝えた。
叩き込もうとした拳をまず右手で触れ、力の流れを自分からずらし、左手で悠自信に反る様に返した結果…

つまり、悠は渾身の一撃を自分に打ち込んでしまったと言うことだ。

「よいしょ…」

ぺたん…

「っぅ…」

仰向けに倒れた悠に馬乗りになる秋宵月、所謂マウントポジション。

すっ…すっ…すっ…

「この体勢でなら目を潰すも喉を穿つも肩でも壊せるなの…」

悠の血で紅く染まった親指で優しく目、喉、肩を撫でる。

「…はぁはぁはぁ……なら、壊される前に1ついいか？」

「…何？」

「俺は…何をしたんだ？」
「……まず、春野家、夏喜家、冬花家、秋月家の四季家は昔から武家だった。」
秋宵月は悠にしか聞こえないくらいのトーンで話す。

「しかし、時は流れ武家は衰退の道を辿っていったなの。そんな中、四季家はある決断をした、遠縁に当たる小鳥遊家との協力…その結果小さくなったとは言え四季家の名は残ったなの。」

「……」

悠は朦朧とするなか一言一句を確りと聞く…

「…数年前、小鳥遊財閥は大々的な乗っ取りを行った…」

「……(数年前？)」

「しかも、それは同じ小鳥遊家が小鳥遊家を乗っとるやり方で…」

「……」

「その乗っ取りで結局、京都の小鳥遊家つまり西の本家と東京の小鳥遊家東の本家の二大のみが残った。」
「……」

「分家を潰すと言うことはその分家と繋がりのある関係無い親類も潰れる。」

「…まさか……」

「けど…東京で本家の近くに居た春夏冬家は何も問題無かっただろうけど…西に居た秋月家は……潰えたなの。」

「……」

「…真桜は人より頭が良く丁度アメリカに留学中だったけど…秋月家が無くなり一家は散りじり私は1人になり名前も無くなった。」

「……」

「学費が払えず、施設に引き取られそうになるなか真桜は友人のデイジーに助けられ無事卒業も出来た。そして、目標を立てた、秋月いや、秋宵月家としての再建…そして、小鳥遊悠への復讐を…」

「あぁ…成る程そいつは…俺が悪いな……」

悠は目を閉じて…拳を振るわせる…