「…何なのコイツら…緊張感も無いし馬鹿ばっかり…なの」

秋宵月は呆れているらしく目が点になっている。

「はは…痛っ…悪いなこーゆー奴らで…さて、仕切り直しだ。……」

悠は真面目な声で呟いたが…

「……」

「「……」」
「「……？」」

悠は胡座を描いたまま動かない…

「…金剛立てらせてくれ。」

ずで…
悠の発言に数人がガグッとなる…

「……##66##」

秋宵月は表情には出さない物の怒りが貯まっている…

「ほれ。」

グイィ！
悠の腕を掴み引っ張り上げる…

「っ…お…」

悠は立ち上がった物のフラフラとする。

「いい加減にしろなの…いくら強がっても目、頬、背中の傷、脳の揺れ…既にお前は限界なの」

「……かもな…」

「地を這う獣が天の月には触れられない…さっきのでもうお前には失望…いや、興味が無いなの」

「…へへ、興味が無いのは「さっきの俺」だろ？なら、なら今の俺を見てくれよ。」

悠はニッと笑う。

「……今のお前には手を出す価値も無いなの。」

「…まぁそう言うなよ……今から気合い入れるからよ…」

悠はゆっくり大きく深呼吸して…

「金剛」

「なんだ？」

「俺の弱い処を言ってくれ」

「「「…はっ？」」」

「…女に弱い、子供に甘い、油断し過ぎる。普段は頭も良く判断力もあるくせに血が上ると後先考えない。自分で殴れ無いからと我を忘れて屑な闘い方をする大馬鹿野郎。」

「ははは…お前柏に似てきたな容赦ない…けど、その通りだな」

ザッ…
フラフラとしていた足が地面を踏み締め…

「相手が誰だろうとブッ飛ばす…それがタイマンのルール、そうだろ？」

「あぁ…そうだ。」

し…ん……

「…？(獣氣が薄れてる…？)」

「秋宵月真桜……いい名前だよな…。」

「……」

「春花秋月というかな……咲き乱れる桜(花)を秋の月が照す宵の美しさ…そんな物を見たら獣だってつい手を伸ばしちまうぜ。」

「何が言いたい…なの？」

「ふふ…なんかよ、すっきりしてさ……」

「……」

「人の拳ってのは不思議だよな…時に言葉を解せず気持ちが伝わる……お前の一撃一撃に込められた殺意と怒り…俺はよっぽどの事したんだな…」

「！……ただの獣じゃ無かった…なの。」

「…ただの学生(不良)さ。ただ…一体何をしたかはわからねぇ、それは後で聞き貸せてもらうわ。」

「後で…？」

「…はは、今は喧嘩が優先だ。…だってよ、ワクワクするんだよ。強ｪ奴と闘るとよ。」

ぐっ…ズズッブチチ！
上服を脱ぎ捨てると同時に鞭による潰傷で服と一体化していた部分の皮膚が千切れ悠は一瞬顔を歪める。

「っ……はぁ。」

「……(成る程…)」

秋宵月真桜は、この男は獣と似て決定的にに違うものがわかった…

悦び…
闘う事の悦びにこの男は誰よりも飢えている…
そして…

「本当に…何なの…」

あれだけ獣氣に淀んでいた大気が澄んでいく…

この男は……獣では無く…
まるで子供の様に…無垢で純粋な…邪鬼だと。