「ちょ、何だ？デッカイ旦那離してくれ！今からが良いとこなのによぉ！」

振り払おうともがくが万力にでも掴まれているかの如くビクともしない。

「まぁ、待て…順番だ。」

「順番？」

「…おい、何時まで寝てるつもりだ？」

金剛はピクリともしない悠に声を掛ける。

「……」

「無駄、そいつは起きないなの」

「……」

ずっ…

「え？」

ズズッ…
伸びきった腕が脚が少しずつ動き…

「っぅあ…ぅぅ…はぁ…あー…頭ン中で星が翔んでるよ……」

ダラリと口から鼻からでこから血を流しつつ、悠は身体を起こし胡座をかく。

「どうして…」

「っぺ」

「「「うっ…」」」
「「「げっ…」」」

びちゃっ…
悠は口から赤黒い血肉を吐き出す…

「！成る程…器用なの。」

「器用じゃねぇよ…古武術かと思ったら古流殺法何か使いやがって…」

ｺｷｯｺｷｯと首を鳴らす。

「「古流殺法？」」

「…ぶじゅつじゃなくころしのわざ…」

全員が？を浮かべる中、翡翠が呟く…

「……知ってる者が居たのは驚きなの…」

秋宵月は翡翠を見る。

「ちょい待ち、色々わからへん…まず、さっき何で悠は倒れたんや？」
「…さっきのはぜつだん…」

古流殺法・舌断

「舌断？」

「簡単に言えば名前の通り舌を叩っ切る技だよ。痛っ……俺が拳を…」

説明によると悠の拳が秋宵月に当たる直前前に股間を蹴りあげ、その痛みに舌が出た所を狙って顎を打ち上げたと言う。

「人間っか男は人体の構造上、股間に攻撃を受けると舌が出るからな…痛っっ…」

鼻血を拭いながら秋宵月を見る。

「……って、ちょい待ち！ほんなら舌ちょんぎれたんか？！」

皆、先ほど悠が吐き出した血肉を見る

「アホ…まだ繋がっとるわ」

べっ…
血で真っ赤に染まった舌を出す。

それを見てゾッとしつつも皆安堵のため息を吐く。

「じゃあ…あれは…っかどうやって避けた？」

「恐らく両頬の内肉デスワ。」

千夜の質問にいつの間にか舞台から降りていたデイジーが答える。

「ほ、頬肉？」

「多分デスが小鳥遊様は舌が器用なのかと…こか…ｺﾞﾎﾝ！急所を蹴られ痛みで一瞬我に戻り、顎を穿たれる直前に舌を引きいれた…デハ、アリマセンカ？」

パチン！
指を鳴らしデイジーは名探偵が推理をしたようなポーズをとる。

「あぁ…痛っ…正解だよ。それで、あのままなら確実に気絶してたから頬肉をクッションにした…痛っ…けど、結局少し堕ちてたけどな…」

悠は喋る度に口の中に痛みが走るらしく…
喋り難そうにする。

「ふぅ…さて、秋宵月ちゃん、少しは見直してくれたか？」

「見直す？…もう一度言うなの…猿猴捉月…なの」

秋宵月は悠の顔すら見ずに呟く。

「なぁ、兄ちゃん、さっきから言うとる、「えんこうそくげつ」ってなんや？」
海は頭を少し倒して見上げる様に質問する。

「……えっ？」

対して宮塚は抱き抱えた海と星凪を見つめてボーッとしていて話を聞いていない。

「猿猴捉月ってのは、猿が水に映った月を取ろうとしたが、水に落ちて溺れて死んだって故事だ。意味は後先考えず行動にでると災難に捲き込まれるとかそんな感じだぜ、仔猫ちゃん」

「「「おぉ～」」」

紅の説明に数人が成る程と頷く。