「ちなみに…壊される理由は何だ？」

「……自分で考えてみろ…なの。」

「ちょい待ちや！いきなり壊すとかなんやねん！」

しゅぱ！

海が悠との間に入り秋宵月に手を伸ばし掴みかかろうとした。

「……」

スッ…
秋宵月はゆっくりと手を伸ばす。

ゾッ…

ビュバッッ！

それと、同時に一陣の風が吹きさぶった…

「「「！？」」」

「ひゃ！」
「なんや！」
「…！…」

「……」

悠は星凪、海、翡翠の3人を抱き抱え。

一瞬にして舞台から離れ、金剛と宮塚の側に移動した。

「……」

誰もが驚く中、秋宵月は特に反応を見せずに悠を見る。

「…ちょっとこいつら頼む。離すなよ。」

悠は金剛に海達を渡し…

ひゅ…
また、一瞬で舞台に戻った。

「ちょ！なんやねん！こらデカイん離さんかい！」

「ちょ、う、海ちゃん、失礼だよ…」

「……」

金剛の腕の中で暴れる海達…

「……宮塚頼む。離すなよ。」

「お、おい！」

金剛は宮塚に無理やり押し付けて舞台に近づく。




「さて……真桜ちゃん俺は一体何をしたんだ？」

「……」

「黙りか…まっ、人に恨まれる事は散々やってきたし…仕方ないけど。俺は黙ってやられる程人間出来て無いぜ？」

ぎゅっ…
悠は左拳を握る…
それは明確な威嚇行為
周りから見れば子供相手に何をする気？と思わせる。

「……シンプルなのは嫌いじゃ無いなの…けど」

「破っ！」

秋宵月が自分から射程内に入ると同時に悠は拳を放った。

ズダァン！

「っ…ぁ…」

悠は突然前倒れになり顔を床に打ち付ける…
「「「！？」」」

「全く無駄……あと、気安く名前を呼ぶな……なの」
秋宵月はさもつまらない物を見る冷めた目で倒れた悠を見る。

「っ…(何だこりゃ…)」

ダンッ！
跳び跳ねる様に後ろに下がりながら起き上がり鼻血を拭う。

「……どうした？子供相手に何を恐れる？……なの」

淡白な表情のまま呟く。

「……」

悠は無言で左拳を伸ばし、足を肩幅に開き初めて構えをとった。

「そう…構えた方がいいなの。」


………


この状況に一番混乱していたのは悠では無く周りに居る者達だった。

瞬く間に起こった異常事態に紅達は舞台の前に集まり状況を呑み込めずにいた…

「なぁ紅…」

「何だ？」

「正直に聞く…あの小娘どうなんだ？」

炎銃は視線を秋宵月から外さずに尋ねる。

「異質だな。少なくとも…子供と思わない方がいい。」

「……紅がそこまで断言するか…」

海達をしっかりと抱き抱えた宮塚が近づく。

「なぁ宮塚、御下げの兄ちゃんが断言して強さが判るんか？」

海は平然と宮塚を呼び捨てにして腕の中から質問する。

「…まぁな……」

宮塚と炎銃が納得する理由。
それは紅がある特殊な能力を持っていたからだ…

『空間把握認識能力』

一般的には医者特に内科医が持つと言われる眼能力…
紅の場合は目に映った相手の身長、体重、手足の長さを誤差±3㎝内で正確に捉える事が出来る故に相手の射程を計れ、体力や力量を見計らえる。