「ふぅ…旨かった」

「うん、ピリ辛のキャベツがスープと合って本当に美味しいかった。ご馳走さまです。」

「ありがとうね。」

空いた器を多恵は笑顔で片付ける。

「さて、悠僕は先に帰るよ。」

「おぅ、お疲れさん。」

「うん、君もな。お疲れ様だ。じゃまた。」

まゆは机に自分の代金を置いて先に店から出ていく。
「…っで、お前ら話せる状態か？」

一息ついて前の2人に再び話かける。

「俺はアニキの話なら何時でも聞くぞっと。」

「聞いてねぇだろ！」

「千夜がさっきから邪魔するからだろ！」

「お前…」

「あーもー止めろ！止めろ！…アニキでも何でも好きに呼んでいいよ…話が前に進まん。」

悠が折れる形で繰り返される無駄な争いを回避する。

「アニキは話がわかるぞっと」

「はぁ…そーいや、何で戌塚と悠は闘ってたんだ？」

「そーいや！アニキ！あの金髪娘とはどんな関係だぞっと？」

戌塚は思い出した様に身を乗りだし尋ねる。

「関係も何も赤の他人だ、たまたまぶつかったてお前らが人の話を聞かずに絡んできたんだよ…」

悠は疲れた顔で説明する。

「やっぱ、話聞いてねぇし。」

すると千夜は呆れた顔で戌塚を見る。

「いや、あれはあの金髪娘が紛らわしい事言うからだぞっと！」

ﾎﾞﾃﾞｨｶﾞｰﾄﾞと言う明らかな嘘が紛らわし事なのだろうか？

「いつの間にか消えてたしな……っか何であの金髪娘を追ってたんだ？」

「あの女、急に飛び入りで対決を無茶苦茶に引っ掻き回したんだぞっと」

「引っ掻き回しただと？」

千夜の顔つきが変わる…

「そうだぞと…対戦中の2人と周りの奴をぶっ倒して急に逃げ出したらしいぞっと…」

「戌塚はその場に居なかったのか？」

「俺が来た時には既に逃げてて、話を聞いて追いかけたらアニキに会った訳だぞっと」

「成る程…(はぁ…全くもって迷惑な話だ…)」

悠は心の中で大きくため息を吐く

「氷室さんが居ない間に勝手な事されんのは困る…その女見つけ次第ぶっ潰すぞ。」

「血の気の多い奴だぞっと」

「あ？テメェはこのままで良いと思ってんのか？」

グィっ！

千夜は戌塚の胸ぐらを掴み上げる。

「絡むなよと…第一どうせ今さら見つから無いぞっと」

「ぐっ……」

「少し落ち着くべきだぞっと。」

頭に血が回ると冷静さが欠ける千夜に比べ、戌塚は一定の感情をキープするタイプの様だ。

「戌塚の言う通りだ、下手に騒いだら余計混乱するぞ？只でさえ最近池袋の辺りは警察の動きが速いのに。」

「そうだぞっと。昨日も警察が来たから良いとこだったのに…」

「まぁ…決め技使うとこだったしな……っか正直こいつ人間か？って思ったよ。」

「それは此方の台詞だぞっと。俺は攻撃しても当たらない、なのにピンポイントで当てて来る…。」

「確かに悠は別格だ。人の技盗むは直撃は避けるは…」

戌塚と千夜は悠を見ながら頷く。

「お前ら…人を化物みたく言うな……」

「けど…俺はアニキのそんな強さに惚れたぞっと。」
戌塚は親指を立てて宣言する。

「…俺はそっちの趣味は無いからな？」

「俺も女が大好きだぞっと。惚れたのは強さにだぞっと。」

……どうして俺は妙な奴に気に入られるんだろう。

「さぁて、俺も帰るとするか…じゃ、またな。」

話も区切りが着いたので拉麺の代金を千夜に渡して店を後にした。