数分後…


「はぁはぁ…はぁはぁ…くそ…」

足には自信があった…
そして、いくら堂々と逃亡宣言したとは言え追跡開始には混乱で十分は掛かると見ていたのに…

甘かった…

ものの数分で無数の車に終われた。
もし車に学園のシンボルマークが描かれて無ければ捕まって居たかも知れない。
「っち…(動きが良すぎる…軍人崩れの指揮か…)」

右往左往と走り回る車…
持久戦になれば成る程不利…

「はぁはぁ…(……やれる、やってやる。)」

バッ！
悠は再び走り出した。
道路を使わず、絶対に車が入れない山中に潜り、畦道を渡りどんなに遠回りでも危ない道でも走り続けた。
………

ブロロ…

車内では運転手が辺りを見回しながら何重も道を往復していた。

「まだ、見つからないのか？」

「はい……けど、ガキ1人です。」

ｺｯ…
運転席の後ろから軽い圧が掛かる。

「ガキ1人に大人(警備員)が何人殴り倒され、何人でばってる？」

「そ、それは…」

「話す暇が有るなら探せ……」

ギュリ…
圧は更に強くなり…

「全員に伝えろ。今日中に見つからなければお前らを執行する…と。」

「は、はい！」

「……(くく、久々に生きの良い獲物だな。)」



…………

ｺｯ…

「ん？」

扉に何かが当たった気がした。

「虫か？」

特に気にかけずにいると……

ドザッ…！

「!!」

明らかに何かが倒れる音がして扉を開けると

「はぁはぁはぁ…がは、えほっ…ひゅ…ひゅ、はぁはぁはぁ」

「悠！」

店の前には泥々ﾋﾞｼｬﾋﾞｼｬで息をするのも苦しそうな悠が倒れている。

「はぁひゅひゅ…み、水。」

「水？水か？と、取り敢えず中に入れ。」


轟は引き摺る様に中に運び入れ、水をゆっくり飲ませる。

「ﾝｸﾞﾝｸﾞ……はぁはぁはぁ」

「何があった？」

「はぁはぁはぁ…ちょはぁ…ちょっと、六時間走り続けただけだ……はぁはぁ。マスター…悪いけど、肉食わせてくれ…血がさ…止まんないんだよ…足りねえんだよ……」

悠が居る床は汗と血が滴っている。

「おいおい、今救急車を…」

「じ、時間が無いんだよ…頼む…血が足りねえ…」

「……わかった。待ってろ…」

轟は迅速に料理を作った、ハンバーグ、フィレステーキ、赤ワイン…
血を作る為に一番効率の良いものを出した。

「はぁはぁはぁ…頂きます。」

ｶﾞｯｶﾞｯｶﾞｯ…
ﾊﾞｸﾊﾞｸﾊﾞｸ…
ｶﾞｼｭｶﾞｼｭ…

悠は食べ飲み続けた。
味わうとか楽しむは二の次全身全霊を掛けて血を作り快復させるために……

数十分後…

「ゲフッ…」

ハンバーグ、フィレステーキ数キロにワイン3本…
この身体の何処に入ったのか…

「落ち着いたか？」

「あぁ、本当に助かったよ。」

手のひらの血は止まり、既に傷には皮膜が張っている。

「本当に何があった最近顔を出さなかったし…」

「ちょっと、面倒な所にな……轟さん。ちょっと迷惑掛けて良いか？」

「水くさい事を言うな、何でも言え。」

「なら…………」


…………