―小鳥遊宅―

「爺さん帰ったぞー」

広間に顔を出す。

「んっなんじゃその面?喧嘩か?」

俺の顔を見て読んでいた新聞をたたむ。

「ああ一方的なリンチに近い喧嘩だけどな・・湿布あるか?」

椅子に座りながら尋ねる。

「ほほーそうかそうか!どれ、ちょっと待っとれ」

爺さんは嬉しそうに湿布を持ってきてくれる。

「サンキュ、つぅ」

俺は右のわき腹に湿布を貼る。

「それで、勝ったのか?それとも
負けて逃げてきたか?」

にやにやしながら聞いてくる。

「勝ったに決まってるだろ、余裕だよ。」

「くっははは、余裕か。ばかが余裕ってのなは一発ももらわない事を言うんだよ」

笑いながらそう言うと爺さんは椅子から立つ。

「ついて来い小僧」

爺さんが歩き出す。

「なんだ・・・急に?」

俺はついて行く。


―道場―

「なんだって?爺さん」

俺が尋ねる。

「ふん、じゃからワシを殴ってみろ。っと言ったんじゃよ」

爺さんは首をコキコキっと鳴らしている。

「あのな、いくらなんでも年寄り殴れるわけ無いだろ。」

「阿呆がお前の拳など当たるわけ無いわい、いいからこい。」

「しらねーからなぁ」

俺は一気に殴りにかかるが

ヒッュ

「えっ」

ドサ

「阿呆が。」

爺さんの声がするが姿は見えない。

「なんで・・」

俺の目にはなぜか天上が映っている。

「ほら起きろ。」

俺は体を起こす。

「今何したんだよ」

「投げ飛ばしただけじゃよ。」

「へぇ・・」

俺は全身を戦闘態勢に切り替える。

「いい目になったな」

爺さんは笑っている。

「何者だよじじぃ」

俺は喧嘩の経験どころか格闘技の経験すらない、けど目の前の奴がヤバイかどうか位はわかる。

「ほれほれ、終わりか?」

「なら、いくぞ」

俺は腰を落とし自分の持てるトップスピードで

ダッ

床を蹴り進むように距離を詰める。

「ほほぉ」

「(取った!)うらぁ」

爺さんの腹目掛けて拳を打つが。

スコーン!!

「っなぁ」

ゴン

「おしかったのー」

「痛ってて」
俺が殴る瞬間に足払いでバランスを崩されてそのまま倒される。

「まいった、俺の負けだ。」

寝転びながら答える。

「いいか悠喧嘩ってのはなただ単に筋力つけりゃあ勝てるわけじゃない、判断力や時には運もいる。」

「っが、それ以上に技を持ってたほうがいいって訳か?」

「そう言う事じゃ、今日から鍛えてやる。」

「ふん、直ぐに追い抜いてやるよ。」

俺は立ち上がる。

「生言いおってからにとりあえず今日からこれを覚えてもらうぞ喰らっとけ」

爺さんが近づき

こつん

俺の腹に軽く拳を当てる。

ズクン

「ごはぁっ」

俺は内臓を圧迫されるような痛みが走りうずくまる。

「貫銅花効いたろ?」

「ってめぇ、ごほごほふざけるなよ・・」

「これから毎日地獄じゃぞ。ははは」