「1・2・3・4……」

亮は床に足を開いて座り、右、左と体を倒し柔軟をしていた。悠と羅漢両方に毎日柔軟運動は欠かすなと言われてたからだ。

「よしっと………」

立ち上がり…拳を握り…

「…(強いな…悠。)」

小さなため息を吐き亮は部屋からでた。

-台所-

台所に近づくといい匂いが立ち込めてくる…

「いい匂いだな…」

「あら、亮ちょうど良かったもうすぐ出来るわよ。」
「そうか……何か似合うな」

「ん？何が？」

決して広くは無い台所に…

「千草お姉ちゃん～」

「こっちの味付けこれでいいですか？」

「…ｽｯ…」

月美に茶髪の娘と薄い水色髪の無口な娘が千草の手伝いをしていて、まるで母親と娘に見える。

「どれどれ～、ﾊﾟｸｯ…ん！美味しい、OKよ♪」

「やったね！」

「うん！」

「…ｺｸｺｸ…」

「じゃあ、ご飯にしようか、皆はお友達呼んできて。」

「「はい」」「…ｺｸ…」

三人はトタトタと走って行き…。

「可愛いわね。」

「だな、並べるの手伝うぞ。」

「あ、じゃあこのお鍋お願い。」

千草はクリームシチューがたっぷり入った鍋を渡してくる。

「量多いな…」

「うん、何せ8人分は作ったからね。」

「月美の友達6人もいるのか…」

「えぇ確か…穂坂学ちゃん、冬花星凪ちゃん、夏喜海ちゃん、春野翡翠ちゃん」
「よく知ってるな…」

亮はテーブルに鍋を置くと、足りない分の椅子を出す。

「さっき話したのよ、皆可愛いわよ～♪いなっちなら絶対誘拐するわ。」

「リアルに有りそうだから恐いな…」

「そう言えば最近、凄く可愛い子達見つけたって言ってたわね…いなっち…」

亮と千草は月美達が居る方を見てまさかな…っと苦笑いした。


… … …

「先生終わりましたし帰りましょう。」

「ん？帰るたってバスもぅ無いしな…」

「あの…俺がどうやって此処に来たかわかってます？」

「え？」

黒井先生はキョトンとした顔を向ける。

「…まさか、俺が雨の中走って来たとか思って……ませんよね？」

「え、あはは…」

思ってたんかい！と口から出かかったが飲み込み…

「車で来ましたよ…送りますから帰りますよ…」

「え！ほんまか！」

「はい、ですから帰り準備してください。」

支度が終わり玄関に向かうと

「おわ、また豪快な事したなぁ」

ﾀﾞｰｸｸﾞﾘｰﾝのJEEPがどでんと横付けされている。

「はは、グラウンド一回走ってみたかったんすよ。」
先に黒井先生が乗り、悠はそれを見て運転席側に乗り込み、走りだし…

「無茶な運転せんやろな～」

「大丈夫、ﾐｽﾀｰﾉｰﾌﾞﾚｰｷの異名を名乗ってますから。」

「降りる！今すぐ降りる！」

「ははは、冗談ですよ、冗談。」

「あんまり、冗談に聞こえへんかったで……なぁ悠これオートマか？」
変わった形のﾁｪﾝｼﾞﾚﾊﾞｰが目につき質問すると

「いや、ｾﾐﾏﾆｭｱﾙです、ｵｰﾄﾏにもﾏﾆｭｱﾙにでも変えれますよ。」

「へぇ、すごいやん」

「じじ…爺さんが好きだったんで結構いじられてんっすよ、CDﾌﾟﾚｲﾔｰは俺がつけましたけど。」

「ほぉ…あ、次の角右な」
「ういっす。」

悪天候で他の車もほとんど居なく話して居るうちに、目的地には数十分で到着した。

「結構良さそうなマンションですね。」

「まぁまぁやな。」

「んじゃ、お疲れさまっす。」

「せっかくやから上がっていかんか？」

「はっ？」

悠は予想外のお誘いに目を丸くする…

「なんや？珈琲くらいいれるで？」

「え、ぁ～、いや、いいんすか？」

「？別に人入れれんほど汚れとらんで？」

「いや、そうではございまいませぬて一応先生独身ですし、夜遅い中生徒とは言え男を入れるのはどうなんでございませうか？」

悠はおかしな日本語を使った…

「ぷっ！なんやまさか悠、エロイ事考えとるんか？」

「いや…………すいません少し考えました…」

「あっははは、アホやな～」

黒井先生は大爆笑している…

「だぁ！帰りますから、早く降りてください！」

「わかった、わかった。ほな今日はありがとな。」

「はいはい、んじゃ失礼します。」

悠は一応頭を下げて来た道を引き返して行く…

「悠もかわえぇ所あるなぁ。はは」

見送り終わると黒井先生はマンションに入って行った。