皆が慌てて振り向くと…

「…」

剣道のフル防具を着けた奴が立っている。

「誰だ君は！」

ｼｭ…

まゆが言葉を発すると同時に…

「主将が負けた腹いせか？コラ？」

悠はフル防具の後に回り込んでいて…

死角から竹刀を横に払うが…

ｶﾞｼｨｨﾝ…

「あん？」

左手で竹刀を持って背中に向け…悠の横払いを受けた…

「…」

「ほぉ…偶然にしたらやる……なぁ！」

ビュッ！ 今度は逆の胴に振り払う…

ガァン！

「なっ！」

胴から小型の木刀を取りだし又も悠の竹刀を受ける…

「…」

ビュッパン！

「うわ！」

ズダン…

フル防具が竹刀を横に向け一回転し、悠は剣圧に尻餅をついてしまう…

「…」

スッ…

フル防具は無言で悠の首に竹刀を突きつけ…

「…！」

「悠危ない！」

ビュッ！

「ぬぉ！」

バッ… こなたの声で何とか零距離の突きを横に転げて避け

「OK…やってやるよ」

「…」

スッ

悠は立ち上がり竹刀を正眼で構え
フル防具は小刀を捨て居合いの構えをとる。

「…居合いか…」

「…」

「ハッ！」

悠は真っ直ぐ降り下ろすが…

スッ…

フル防具は頭を少し引き縦振りを避けた！

「甘い！突ｯ！」

悠は振りおろした後更に一歩踏み込み喉目掛けて突きを放った！

スゥ… スカ！

「なっ！斬釘截鉄を避けた？！」

…

「な、何ざんてい…」

「ふふ、斬釘截鉄(ざんていせいてつ・本来は一度目の縦振りを相手に受けさせて、上に突き上げる危険な技)よこなたちゃん。」

「「えっ？」」

…

「ｸｽ、間合い…(技が荒いどすな…)」

「えっ…あ！」

悠は攻撃のため更に一歩踏み出し腕を上に伸ばした、ため…

ｽﾞｯﾊﾟｧｧｧﾝ！

「がはぁ！」

居合いの一閃がまともに横腹に入り…

「…」

ガシィ！空いた左手で悠は顎を下から上にはね上げられ

ドダｯァァン！

下に叩きつけられる…

「！！(こ、これは小鳥遊流甲羅返しぃ？！)」

悠は痛み、脳の揺れ、使われた技…

すべての行動に目をパチパチとするしか出来なかった…

「ふぅ…約束は忘れたらあかんどすえ？悠ちゃん？」

フル防具が面を外すと…

「(梔姉さん！！)」

悠は痛みで声が出せないので口をパクパクする

「うふふふ、また良いのが取れたわ…悠。」

右から稲葉が顔を出す。

「(な、何で稲葉まで…)」
「な・ん・で・い・な・ば・ま・で。電話したでしょ？放課後用事が有るって。」

稲葉は読唇術で動きを読み解読する。

「(あ…そう言えば)」

「あ・そ・う・い・え・ば・…忘れてたみたいですよ梔姐様。」

「はぁ…悠ちゃん起こした時言いましたやろ？うち今日帰るから早めに帰るようにって。」

「中々悠が帰ら無いから私が学校まで案内したの、けど中々出てこないから探してたのよ、そうしたら悠ったら酷いわ…あんな楽しそうな事連絡してくれないなんて…」
稲葉はそう言いつつも確りとデジカメを持っている。

「な、なるほど…そう言う訳か…」

悠は何とか立ち上がる…

「あ、あの悠此方の方は？」

まゆが稲葉と梔を見る。

「こっちが中学の知り合いでこっちが従姉妹だ…」

「はじめまして、古川稲葉です。」

「うちは小鳥遊梔いいます。」

「あ、はじめまして、僕は坂神まゆです。」

まゆは慌てて頭を下げる。

「痛っ～梔姉さん顔ばかり勘弁してくれよ…」

「弱点を突くんが勝負どすぇ？」

「身内を殺す気で来ないで下さいよ……」

「ややわぁ、殺す気なら竹刀や使いまへんよ。」

今だかつて…笑顔に恐怖をここまで感じた事は無かった…

「さて、悠ちゃんうち帰りますわ…その前に…」

梔は防具を脱いで悠にタオルを渡す。

「タオル？」

「じっとしときや…」

ﾋｭﾊﾟ …

梔は横に手を払い…

「ほな、また…」

梔は皆に一礼していき出ていく… と同時に

「「「悠～(君・センパイ)！！」」」

皆一斉に悠の元に集まってきて…

「平気？」「痛くない？」「大丈夫ですか？」

次々に声をかけてくる。

「でぇい、暑苦し…よるな散れ！」

「ふふ、モテモテね悠。」

稲葉はデジカメを回す。

「撮ってんじゃねーよ！稲葉！」

ﾌﾟｼ… ﾀﾞﾗ…

「あれ？(左が赤い？)」

「悠！出血してるぞ！」

「ぬわ！なんだこりゃ！」

「タオル！悠、タオル！」

「おお！そうだ！」

悠は慌てて左目にタオルを当てる…

じわぁ…タオルは紅く染まっていく…

「もしかして、さっき血瘤手刀で切ったのか…梔さん…」

「あの人無茶苦茶するからな…」

悠は止まった事を確認してタオルを外し…

パチっ

「完全開眼。」

血まみれタオルを持った左手でVサインを作る。

「怖いって…」

皆は苦笑いをする。

「悠良いわよ…目線此方におねがい。」

稲葉はまだ撮影を続けていた…

………

「はい…これで大丈夫です…」

悠はみなみにﾊﾞﾝｿｰｺｰを張ってもらって応急処置をすます。

「さぁて…亮鞄頼む…」

「ああ…わかった。」

悠は亮に鞄を頼んで立ち上がる。

「ん～今日は良いもの見たよ～」

「結局流血したけどね…」

「悠明日忘れんなよ！」

「わかったから、っかいちいち背中を叩くな。」

こなた、かがみ、みさおと悠の背中を叩いていく。

「あ！そだ悠一緒に帰ろうよ～」

「ああ別に良いぞ」

「悠。」

帰る準備をしていると後ろからまゆが声をかけてくる。

「おっす、今日はお疲れさん。」

「いや、君の方こそお疲れさま。」

「悠鞄取ってきたぞ。」

「さんきゅ、じゃまたな、まゆ。」

亮から鞄を受け取って移動を開始する。

「ねぇ、悠今から行っても良いかしら」

「いや、勘弁してくれ今日は疲れた…」

「あら…写真…」

「どうぞ、キテクダサイ…」

稲葉は魔法の呪文を使った…悠は操られてしまう。

「……悠！」

「あん？」

後に振り向くと

「僕は……君の事が…」

「あん？俺の事が？」

悠は立ち止まり…

「(あれ…？)」「(まさか…)」「(嘘！)」

こなた達は顔を見合わせる！

「君の事が好きだ///！」

「へ？」

「「「あーーー！！」」」

「じゃまた///…」

まゆは顔を赤らめて皆とは反対側に走って消えていく…

「……なぁ亮」

「…どした？」

「…今のって告白…って奴か？」

「…ああ紛れもない告白だな。」

亮の一言に…

「あれ//ヤバ//俺…人にあんな事言われたの初めてだ//」

悠は驚くほど顔が赤くなっている。

「あらあら…意外と純情ね悠」

「稲葉今は撮るの止めてやれ…」

亮は流石に稲葉を止める。

「うわ//うわ//どうしょ…」

「どうするの？悠君…」

顔をあげるとかがみが何故か辛そうな顔で悠を見る。

「どうするって……わかんねぇよ…こんな事初めてだし…」

「そう…じゃ一言だけ言っとくわ…」

「え…」

「私も好きだから…」

「なっに…？」

悠は口をパクパクさせながら横を見ると…

こなた、みさお、ゆたかが無言で見てきて…

「ずるいよ…かがみ、私も悠好きだよ…」

「わ、私だって…だって…好きだぞゆう！！」
「私も…悠センパイが好き……です。」

一斉の告白……

「…っ」

悠は声を失い息を飲む…