knkm短編
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※まやかし続き
※転生現パロ、ネームレス
部下が担当していた取引先との連絡の際に不備があり、二人で直接謝罪をしに行った。新人が担当していたということもあって、先方は「次がなければそれでいい」と少しのお咎めだけで済んだ。
その帰りに、社用車を運転する月島の隣で余りにも彼女が落ち込んでいるので、思わず「昼飯でも食うか」と声を掛けていた。
車を停めて入ったファミレスで注文を済ませると、彼女が口を開いた。
「本当、月島部長にも付き合って頂いて…、すみませんでした。」
「いや、もう先方も許してくれたんだし、ミスだって昔俺もあった。そんなに気にするな」
「昔って…前、ですか?」
ふと、月島は遠い記憶を思い出す。結局前世で彼女は鯉登と恋仲となれず、蕎麦屋の裏で一人泣いていた所を見かけていた。あの時声を掛けていれば。月島はそう思うこともあったが、“あの人”の影が過ぎってその足を路地へと踏み出すことが出来なかった。
「そう、だな。前の話になるが…。お前は蕎麦屋で勤めていただろ。それでその、鯉登少尉に好意を寄せていて…」
「…はい、フラれちゃいましたけどね」
「あぁ、少尉から聞いていたし、なんなら店の裏手で泣いているお前を見かけていたんだ」
「そうだったんですね、恥ずかしいなあ」
困ったように笑って彼女は水を飲んだ。
「その時に、声を掛けずにいたことを未だに後悔していた。あの時、色恋より自分には全うする事があると、誤魔化して。」
「え、と。それって…」
お互いに水を飲むばかりだった。また間違ったな、と月島は内心頭を抱えていた。暫しの沈黙を破ったのは彼女のぽつりぽつりとした独白のような言葉だった。
「私も実は、その。前は月島さんのこと、知ってるようで知らなくて。前世の話も、ただのいっぱいある蕎麦屋の娘なのに覚えて下さってて。上司が“あの”月島さんと同じ方だと知って、こんなに優しくてあたたかい方だったんだと分かってから、私も」
「待った」
「…ここじゃ格好つかないから、やり直させてくれ。あと、その先は俺が言う」
今夜空けといてくれ、と月島は伝票を持って席を立った。
***
悲しいまま終わらせません。
22.04.21
※転生現パロ、ネームレス
部下が担当していた取引先との連絡の際に不備があり、二人で直接謝罪をしに行った。新人が担当していたということもあって、先方は「次がなければそれでいい」と少しのお咎めだけで済んだ。
その帰りに、社用車を運転する月島の隣で余りにも彼女が落ち込んでいるので、思わず「昼飯でも食うか」と声を掛けていた。
車を停めて入ったファミレスで注文を済ませると、彼女が口を開いた。
「本当、月島部長にも付き合って頂いて…、すみませんでした。」
「いや、もう先方も許してくれたんだし、ミスだって昔俺もあった。そんなに気にするな」
「昔って…前、ですか?」
ふと、月島は遠い記憶を思い出す。結局前世で彼女は鯉登と恋仲となれず、蕎麦屋の裏で一人泣いていた所を見かけていた。あの時声を掛けていれば。月島はそう思うこともあったが、“あの人”の影が過ぎってその足を路地へと踏み出すことが出来なかった。
「そう、だな。前の話になるが…。お前は蕎麦屋で勤めていただろ。それでその、鯉登少尉に好意を寄せていて…」
「…はい、フラれちゃいましたけどね」
「あぁ、少尉から聞いていたし、なんなら店の裏手で泣いているお前を見かけていたんだ」
「そうだったんですね、恥ずかしいなあ」
困ったように笑って彼女は水を飲んだ。
「その時に、声を掛けずにいたことを未だに後悔していた。あの時、色恋より自分には全うする事があると、誤魔化して。」
「え、と。それって…」
お互いに水を飲むばかりだった。また間違ったな、と月島は内心頭を抱えていた。暫しの沈黙を破ったのは彼女のぽつりぽつりとした独白のような言葉だった。
「私も実は、その。前は月島さんのこと、知ってるようで知らなくて。前世の話も、ただのいっぱいある蕎麦屋の娘なのに覚えて下さってて。上司が“あの”月島さんと同じ方だと知って、こんなに優しくてあたたかい方だったんだと分かってから、私も」
「待った」
「…ここじゃ格好つかないから、やり直させてくれ。あと、その先は俺が言う」
今夜空けといてくれ、と月島は伝票を持って席を立った。
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悲しいまま終わらせません。
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