七英雄わちゃわちゃ

タームとの最終決戦の道中にのんびりほのぼのと話をしているボクオーン&ロックブーケ&クジンシーの話。
院卒の先生と若者達風。

ワグナス様のために命をかけ隊


 タームの本拠地へ潜入した後のこと。
 ボクオーンは若手二人の護衛という名目で、制圧後の空間で待機をしていた。
 タームが態勢を立て直す前に攻め込みたいスピード勝負の戦いだ。可能な限りリスクは排除するため、吸収の法の経験が浅い二人を、使用後すぐに戦場へ投入することは避けたかった。そのため彼らが吸収した魔物と馴染むまで時間をかけ、様子を見るためにこの場に留まっている。
 その際にお守りは必要だろうということでボクオーンに白羽の矢が立ったわけだ。
 
「はやく行こうぜっ。このままじゃクィーンを倒されちまうっ」
「まだです。もう少し経過を見ます」
 誰のせいでこんなことになっているのだとクジンシーを罵りたいが、堪えた。リーダーであるワグナスが許可したのだから、何も言うまい。
「でも、本当に大丈夫ですの? 私達はワグナス様に置いていかれたのでは?」
 ボクオーンがいるのでそれはない。ノエルだってクジンシーに対して言っていたではないか。彼ではボクオーンの代わりにならないと。つまりそれはボクオーンは戦力として期待されているということ。
「ボクオーンまで?」
 そこについてはクジンシーも疑問に思ったようで、理由をロックブーケに問うた。彼女は意味ありげな視線をボクオーンに投げて、口元を綻ばせた。
「だって、ボクオーンだって、私たちと同じでワグナス様やお兄様のお情けで入隊できた組でしょう?」
「はぁ!?」
 ボクオーンは思わず声を上げた。
 クジンシーが期待に満ち溢れたキラキラした瞳をこちらに向ける。おい、その目はやめろ。親近感を持つな。仲間意識を持つな。
 若者の戯言を間に受けるな。大人の受け答えをしろと自分に言い聞かせた上で、ボクオーンは口を開く。
「私は違います。ワグナス殿の策に足りない要素を助言したことが認められて――」
「他の三人はワグナス様がスカウトに行ったけど、あなたは自分から売り込みに行ったじゃないですか。こちら側ですわ」
 沈黙する。ここで細部を説明して反論するのも大人気ないと思ったからだ。しかも彼女の発言自体は間違ってはいない。
 ロックブーケは両手を口元に当てて、くふふと意地悪げに笑う。
 舌打ちしたいのを我慢して、腕を組みながら目を伏せる。相手にするだけ無駄だ。
「じゃあ、『ワグナスのお情けで入隊でき隊』の結成だなっ」
「何よそのネーミングセンス、最低。大体私はワグナス様のお情けではありません。でも、そうね。『ワグナス様のために命をかけ隊』、ならいかがかしら」
 却下、と心の中でダメ出しをした。
 どちらもセンスが最低だ。どうせ名付けるなら――と考えて、慌ててその思考をかき消した。自ら仲間に加わってどうする。自分は部外者だという立場を貫け。
 クジンシーも反論したいらしくモニョモニョと口の中で何かを言っているようだが、ロックブーケに睨まれて明確な音として発することはできないようだ。
「もう、なんでもいいやっ。俺たちも、足手纏いなんて言われないように、頑張るぞーっ!」
「静かにされよっ」
 拳を上げて立ち上がるクジンシーを制止したがもう遅い。
 「ぞーぞーぞー」と、クジンシーが発した声が洞窟の中に木霊する。これでは敵に自らの位置を知らせているではないか。逆に、ワグナス達に聞こえていたら、問題が発生したと懸念されて戻ってくる事態にもなりかねない。
 予定していた時間まではまだあるが、ここに留まる事のデメリットが大きすぎる。
「急ぎ、ワグナス殿と合流します。移動するので、付いてきなさい。良いですか、し・ず・か・に、ですっ」
 ボクオーンが駆け出すと、それぞれの武器を手にした二人も慌てて付いてきた。
 
 その後、交戦中のワグナス達への助太刀時にクジンシーが「『ワグナス様のために命をかけ隊』参上!」などと名乗りをあげたり、その結成の理由を聞いたスービエに爆笑されたり、ワグナスから隊名の変更を依頼されたりと、ボクオーンにとって頭が痛くなる事案が続くことになるのだった。
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