ダンターグ×ボクオーン
夏イベントを満喫しよう企画その3。
何かの任務で和風っぽい国に来たダンターグとボクオーンの話。
二人はセフレのような関係です。
ドォンと大きな音が鳴る。
ビリビリと空気が震え、その衝撃でボクオーンは目を開いた。
咄嗟に飛び起きる。
しかし視界に映ったダンターグが座したままだったので、ボクオーンは動きを止めた。
ボクオーンにかけられていた浴衣がはらりと畳の上に落ち、白い肌がむき出しになった。うちわで仰がれる風が、ボクオーンの髪を揺らす。
ドォンドォンと音が響いた。
状況が把握できずに瞬きをしていると、浴衣を肩にかけただけの男の茶色の瞳がこちらを向いた。
「よぉ、起きたか」
彼が手を止めると、火照った肌を冷ましていた風も止んだ。
「ああ、寝てましたか。すみません。随分と無茶をさせられたもので」
目をこすりながら嫌味をこめて告げると、ダンターグは苦虫を噛み潰したような顔をして、どこか気まずげに視線を外へやった。
膝をついたまま窓際ににじりよる。
空に大輪の花が咲いた。赤、青、黄色。様々な色が混ざった艶やかな花が、下界を染める。
一瞬遅れてドォンという音が響き、窓枠がビリリと小気味に震えた。
「花火ですか」
話には聞いたことがあるが、実物を見るのは初めてだ。好奇心が刺激され、心が躍る。金色の目に次の花火の鮮やかな色が映し出され、キラキラと輝いた。
そっと肩に浴衣がかけられる。
「夜風は冷えるぞ」
「あなたが裸になるじゃないですか」
隣の男の傷だらけの体を見ると、「鍛え方が違うんだよ」と返された。
別に寒くはないが、好意は素直に受け取るとしよう。
浴衣を胸の前で合わせて、肌を隠した。直前までダンターグの肌を覆っていた浴衣から彼の残り香がふわりと漂う。
彼に抱かれているみたいだと、胸をざわつかせた。酷く落ち着かない気持ちになってきて、こっそりとダンターグの横顔を見つめる。
彼は特に何かの感情を抱いた風はなく、無機質な瞳を夜空に浮かぶ灯りに向けていた。打ち上がる花火の色が、彼の髪や肌を色とりどりに染めていく。
借りている宿は街中にあるので、高い位置に上げられたものだけが見えた。
「お前ぇ、花火は知ってんのか?」
唐突に問われ、質問の意図が分からずにボクオーンは首を傾げた。
「知識としては知っていますよ。火薬と金属の粉末を混ぜて包んだものに火をつけて打ち上げているのです。色が変わる仕組みは炎色反応を利用して……」
「小難しいことはいらねぇ」
「じゃあ何を聞きたかったんですか?」
率直に聞いてみると、ダンターグは顎を上げて空を指した。
「花火を見るのが初めてなんだったら、外に観にいくか?」
ぱちりと瞬きをする。
「あなたがこんな風流なものに、興味を持つなんて珍しい」
「人をなんだと思ってんだよ。俺にだって綺麗なものを愛でる感性くらいあるわっ」
「強い物にしか興味がないと思っていました。……ああ、花火は確かに強そうですよね。打ち上げる力は強いので、あれを受けたらさすがのあなたでもタダでは済まないと思いますよ」
ちっと舌打ちをする音が聞こえる。
「興味がねぇならいいよ」
純粋に花火を楽しみたいという気持ちがあったのだと、少し驚いた。だからボクオーンは慌てて訂正をして、臍を曲げてしまったダンターグのご機嫌をとりながら、外に出ようと説得したのだった。
カランコロンと軽い音が響く。
石畳を下駄の歯で叩きながら、ボクオーンはダンターグと共に参道を歩いていた。
参道は立ち並ぶ屋台の呼び声やそれを冷やかす人の声で、にぎやかな活気にあふれていた。
少しだけ涼しくなった風に乗って特徴的な香辛料の香りが鼻をくすぐり、食欲をそそる。
「何の香りでしょうかね」
独特の良い香りだ。好奇心を刺激されて辺りを見ていると、人とぶつかってよろけた。
その瞬間ダンターグの太い腕が伸びてきたのでそこに掴まり、ほっと息を吐いた。
「ありがとうございます」
見上げると、呆れたように見下ろす茶色の瞳がある。
ドォンと花火が上がり、金茶の髪が赤く染まった。
「人間とぶつかったくれぇでよろけんなよ。情けねぇ」
「この下駄というものが、微妙にバランスが取りにくくて……」
「いつも本ばかり読んでるから、体幹が弱ぇんだよ。もっと鍛えろ」
そんな突き放す言い方をするくせに、差し出した腕はそのままだ。ニヤリと笑みを浮かべてやると、彼はそっぽを向いて歩き出す。
「おら、行くぞ」
腕にそっと寄り添って進む。
赤錆色の浴衣は前をきちんと合わせていないから、立派な胸筋がのぞいていた。そんなだらしない着方でも、妙に様になっていてとても男らしい。
そっと盗み見をしていると、その視線に気付いたダンターグが「なんだよ」とぶっきらぼうに尋ねてくる。
ボクオーンは声に出して笑った。
「こうして寄り添っていると、恋人同士みたいですね。いっそのこと、このまま恋人になりましょうか」
ダンターグはちっと舌打ちをして、視線を前方へと向けた。その先には長い階段がある。
「好きにしろよ」
「はいはい。それでは好きにさせていただきますね」
空を大輪の赤い花が彩る。ダンターグの頬が赤いのはその残光が染めたせいか、はたまた――
この関係に名前が欲しいわけではないけれど、胸がくすぐったくて仕方がない。
微笑みを浮かべたボクオーンの姿が金色に浮かび上がり、パチパチと散る光とともにキラキラと輝いた。
石造の長い階段を登った先には、小さな社があった。高台にあるここからは付近の景色が一望できる。
穴場なのか、人の気配はまばらだった。
近くの手頃な岩に並んで座り、夜空を眺める。
ドォンと音を立てて花火が上がる。打ち上げ場所から離れたため迫力は薄れたが、その分全景を見ることができた。真円を描く見惚れるような大輪の美しい花。パァンとはじけた賑やかな無数の小さい花。哀愁を漂わせるように筋をひきながら流れていく星――。
どの花火も味わい深く、感嘆混じりの息が漏れる。
火薬の知識はあったが、魔法の方が便利なので扱ったことはなかった。だが、学べば何かに使えるかもしれないなと考えていると、ダンターグの呟きが上から降ってきた。
「あの石階段は、鍛錬前のウォーミングアップにちょうどいいな」
息ひとつ乱していないくせに鍛錬になるのだろうか。きっと明日の朝一人で走りに来るのだろう。この街に来た目的を忘れるなよと思いつつも、ダンターグらしいので何も言わないでおいた。
ドォンドォンと鳴り響く花火を無言で眺め、うちわで自身を仰ぐ。
「なぁ」
呼びかけられて、「はい」と返事をした。
しかし続きの言葉がなく、沈黙が続く。
訝しげな視線を送ると、ダンターグは腕組みをして難しい顔をしていた。彼にしては珍しい表情である。
ボクオーンの視線に気付いたダンターグが、ガリガリと頭を掻きむしった。
「名前が欲しいか?」
「何にですか?」
「……俺たちの関係に」
ボクオーンは一度大きく瞬きをして、合点がいって声を漏らす。先ほどの悪ふざけが、彼の心に何かの波紋を描いたのだろう。
連続した破裂音が空に響き、ボクオーンの視線はそちらに吸い寄せらせた。低い空を色とりどりの光が覆い、下界を明るく照らしていく。
一瞬の後には残像だけが残り、それすらもゆっくりと闇に塗り替えられていった。
「愛って花火と同じですよね。燃え上がった瞬間は美しくて夢中になりますが、すぐに儚く消えていく」
「また小難しいこと言いやがって」
次の花火までに間があって、沈黙が落ちる。
束縛をしたりされたりのような関係にはなりたくない。勝手気ままに生きる中で、ふと人肌が欲しい時に寄りかかるような。そんな、都合のいい相手でいたい。
「よく分かんねぇけどよ」
ヒュルルと高い音が響き、地上から一筋の光が上がっていく。
ボクオーンが顔を向けると、ダンターグは空を見上げたまま、静かに言葉を続けた。
「花火はすぐに消えちまうけど、こうして一緒に見た記憶はずっと残るもんじゃねぇのか」
大きな爆発音と共に空に大きな大輪が咲き、彼の姿が赤く染まった。
その通りだなと思った。彼とこうして過ごした日々は決して消えない記憶だ。そして愛ではないけれど、確かにここにある名前を持たない感情もまた、消えずに心に残っていくのだ。
ふっ、と思わず笑みがこぼれる。
「あなたがどうしてもと言うのなら、恋人になってやっても良いですよ」
ダンターグはその挑発的な言葉に対して肩をすくめ、首の後ろを掻きながら広い夜空を仰いだ。
「俺はこのままが心地良い」
「では、この話は終わりですね」
しばらく無言で花火を見つめる。
「綺麗だな……」
ダンターグがこぼした声が、花火の音でかき消された。その視線が一瞬だけ自分に向けられたような気がして、横を向く。しかし彼の瞳には空に浮かぶ花火の金色が映る。自分の瞳と同じ光の色だ。
ほんの少しだけむず痒くなって、こてんと首を傾けて彼の腕に寄りかかった。
「綺麗ですね」
ボクオーンは言葉を返して、口元に笑みを浮かべた。
自分たちの関係には相変わらず名前などない。
だけど何かが少しだけ、変わった気がした。
何かの任務で和風っぽい国に来たダンターグとボクオーンの話。
二人はセフレのような関係です。
花火
ドォンと大きな音が鳴る。
ビリビリと空気が震え、その衝撃でボクオーンは目を開いた。
咄嗟に飛び起きる。
しかし視界に映ったダンターグが座したままだったので、ボクオーンは動きを止めた。
ボクオーンにかけられていた浴衣がはらりと畳の上に落ち、白い肌がむき出しになった。うちわで仰がれる風が、ボクオーンの髪を揺らす。
ドォンドォンと音が響いた。
状況が把握できずに瞬きをしていると、浴衣を肩にかけただけの男の茶色の瞳がこちらを向いた。
「よぉ、起きたか」
彼が手を止めると、火照った肌を冷ましていた風も止んだ。
「ああ、寝てましたか。すみません。随分と無茶をさせられたもので」
目をこすりながら嫌味をこめて告げると、ダンターグは苦虫を噛み潰したような顔をして、どこか気まずげに視線を外へやった。
膝をついたまま窓際ににじりよる。
空に大輪の花が咲いた。赤、青、黄色。様々な色が混ざった艶やかな花が、下界を染める。
一瞬遅れてドォンという音が響き、窓枠がビリリと小気味に震えた。
「花火ですか」
話には聞いたことがあるが、実物を見るのは初めてだ。好奇心が刺激され、心が躍る。金色の目に次の花火の鮮やかな色が映し出され、キラキラと輝いた。
そっと肩に浴衣がかけられる。
「夜風は冷えるぞ」
「あなたが裸になるじゃないですか」
隣の男の傷だらけの体を見ると、「鍛え方が違うんだよ」と返された。
別に寒くはないが、好意は素直に受け取るとしよう。
浴衣を胸の前で合わせて、肌を隠した。直前までダンターグの肌を覆っていた浴衣から彼の残り香がふわりと漂う。
彼に抱かれているみたいだと、胸をざわつかせた。酷く落ち着かない気持ちになってきて、こっそりとダンターグの横顔を見つめる。
彼は特に何かの感情を抱いた風はなく、無機質な瞳を夜空に浮かぶ灯りに向けていた。打ち上がる花火の色が、彼の髪や肌を色とりどりに染めていく。
借りている宿は街中にあるので、高い位置に上げられたものだけが見えた。
「お前ぇ、花火は知ってんのか?」
唐突に問われ、質問の意図が分からずにボクオーンは首を傾げた。
「知識としては知っていますよ。火薬と金属の粉末を混ぜて包んだものに火をつけて打ち上げているのです。色が変わる仕組みは炎色反応を利用して……」
「小難しいことはいらねぇ」
「じゃあ何を聞きたかったんですか?」
率直に聞いてみると、ダンターグは顎を上げて空を指した。
「花火を見るのが初めてなんだったら、外に観にいくか?」
ぱちりと瞬きをする。
「あなたがこんな風流なものに、興味を持つなんて珍しい」
「人をなんだと思ってんだよ。俺にだって綺麗なものを愛でる感性くらいあるわっ」
「強い物にしか興味がないと思っていました。……ああ、花火は確かに強そうですよね。打ち上げる力は強いので、あれを受けたらさすがのあなたでもタダでは済まないと思いますよ」
ちっと舌打ちをする音が聞こえる。
「興味がねぇならいいよ」
純粋に花火を楽しみたいという気持ちがあったのだと、少し驚いた。だからボクオーンは慌てて訂正をして、臍を曲げてしまったダンターグのご機嫌をとりながら、外に出ようと説得したのだった。
カランコロンと軽い音が響く。
石畳を下駄の歯で叩きながら、ボクオーンはダンターグと共に参道を歩いていた。
参道は立ち並ぶ屋台の呼び声やそれを冷やかす人の声で、にぎやかな活気にあふれていた。
少しだけ涼しくなった風に乗って特徴的な香辛料の香りが鼻をくすぐり、食欲をそそる。
「何の香りでしょうかね」
独特の良い香りだ。好奇心を刺激されて辺りを見ていると、人とぶつかってよろけた。
その瞬間ダンターグの太い腕が伸びてきたのでそこに掴まり、ほっと息を吐いた。
「ありがとうございます」
見上げると、呆れたように見下ろす茶色の瞳がある。
ドォンと花火が上がり、金茶の髪が赤く染まった。
「人間とぶつかったくれぇでよろけんなよ。情けねぇ」
「この下駄というものが、微妙にバランスが取りにくくて……」
「いつも本ばかり読んでるから、体幹が弱ぇんだよ。もっと鍛えろ」
そんな突き放す言い方をするくせに、差し出した腕はそのままだ。ニヤリと笑みを浮かべてやると、彼はそっぽを向いて歩き出す。
「おら、行くぞ」
腕にそっと寄り添って進む。
赤錆色の浴衣は前をきちんと合わせていないから、立派な胸筋がのぞいていた。そんなだらしない着方でも、妙に様になっていてとても男らしい。
そっと盗み見をしていると、その視線に気付いたダンターグが「なんだよ」とぶっきらぼうに尋ねてくる。
ボクオーンは声に出して笑った。
「こうして寄り添っていると、恋人同士みたいですね。いっそのこと、このまま恋人になりましょうか」
ダンターグはちっと舌打ちをして、視線を前方へと向けた。その先には長い階段がある。
「好きにしろよ」
「はいはい。それでは好きにさせていただきますね」
空を大輪の赤い花が彩る。ダンターグの頬が赤いのはその残光が染めたせいか、はたまた――
この関係に名前が欲しいわけではないけれど、胸がくすぐったくて仕方がない。
微笑みを浮かべたボクオーンの姿が金色に浮かび上がり、パチパチと散る光とともにキラキラと輝いた。
石造の長い階段を登った先には、小さな社があった。高台にあるここからは付近の景色が一望できる。
穴場なのか、人の気配はまばらだった。
近くの手頃な岩に並んで座り、夜空を眺める。
ドォンと音を立てて花火が上がる。打ち上げ場所から離れたため迫力は薄れたが、その分全景を見ることができた。真円を描く見惚れるような大輪の美しい花。パァンとはじけた賑やかな無数の小さい花。哀愁を漂わせるように筋をひきながら流れていく星――。
どの花火も味わい深く、感嘆混じりの息が漏れる。
火薬の知識はあったが、魔法の方が便利なので扱ったことはなかった。だが、学べば何かに使えるかもしれないなと考えていると、ダンターグの呟きが上から降ってきた。
「あの石階段は、鍛錬前のウォーミングアップにちょうどいいな」
息ひとつ乱していないくせに鍛錬になるのだろうか。きっと明日の朝一人で走りに来るのだろう。この街に来た目的を忘れるなよと思いつつも、ダンターグらしいので何も言わないでおいた。
ドォンドォンと鳴り響く花火を無言で眺め、うちわで自身を仰ぐ。
「なぁ」
呼びかけられて、「はい」と返事をした。
しかし続きの言葉がなく、沈黙が続く。
訝しげな視線を送ると、ダンターグは腕組みをして難しい顔をしていた。彼にしては珍しい表情である。
ボクオーンの視線に気付いたダンターグが、ガリガリと頭を掻きむしった。
「名前が欲しいか?」
「何にですか?」
「……俺たちの関係に」
ボクオーンは一度大きく瞬きをして、合点がいって声を漏らす。先ほどの悪ふざけが、彼の心に何かの波紋を描いたのだろう。
連続した破裂音が空に響き、ボクオーンの視線はそちらに吸い寄せらせた。低い空を色とりどりの光が覆い、下界を明るく照らしていく。
一瞬の後には残像だけが残り、それすらもゆっくりと闇に塗り替えられていった。
「愛って花火と同じですよね。燃え上がった瞬間は美しくて夢中になりますが、すぐに儚く消えていく」
「また小難しいこと言いやがって」
次の花火までに間があって、沈黙が落ちる。
束縛をしたりされたりのような関係にはなりたくない。勝手気ままに生きる中で、ふと人肌が欲しい時に寄りかかるような。そんな、都合のいい相手でいたい。
「よく分かんねぇけどよ」
ヒュルルと高い音が響き、地上から一筋の光が上がっていく。
ボクオーンが顔を向けると、ダンターグは空を見上げたまま、静かに言葉を続けた。
「花火はすぐに消えちまうけど、こうして一緒に見た記憶はずっと残るもんじゃねぇのか」
大きな爆発音と共に空に大きな大輪が咲き、彼の姿が赤く染まった。
その通りだなと思った。彼とこうして過ごした日々は決して消えない記憶だ。そして愛ではないけれど、確かにここにある名前を持たない感情もまた、消えずに心に残っていくのだ。
ふっ、と思わず笑みがこぼれる。
「あなたがどうしてもと言うのなら、恋人になってやっても良いですよ」
ダンターグはその挑発的な言葉に対して肩をすくめ、首の後ろを掻きながら広い夜空を仰いだ。
「俺はこのままが心地良い」
「では、この話は終わりですね」
しばらく無言で花火を見つめる。
「綺麗だな……」
ダンターグがこぼした声が、花火の音でかき消された。その視線が一瞬だけ自分に向けられたような気がして、横を向く。しかし彼の瞳には空に浮かぶ花火の金色が映る。自分の瞳と同じ光の色だ。
ほんの少しだけむず痒くなって、こてんと首を傾けて彼の腕に寄りかかった。
「綺麗ですね」
ボクオーンは言葉を返して、口元に笑みを浮かべた。
自分たちの関係には相変わらず名前などない。
だけど何かが少しだけ、変わった気がした。