ワグボクで学パロ!
ロックブーケの憂鬱
茜色に染まった校庭で、まばらに散った生徒達が慌ただしく動き回っている。
ロックブーケは生徒会室の窓枠にもたれて、その光景を眺めていた。
朝礼台に立つボクオーンが生徒達に指示を出している。
そこへ、他の作業を終えたワグナスが歩み寄り、ボクオーンは台から身軽に飛び降りた。並んでファイルを覗き込み、近い距離で相談をし合う二人。そんなものは見慣れた光景だが、これからは恋人同士の仲睦まじい囁き合いとして、皆の目に映るのだろう。
ロックブーケにとって、ワグナスは幼稚園の頃からの憧れの人だった。
彼はかっこよくてキラキラしていて、近い年頃の女子達の初恋泥棒だった。
ノエルの妹という立場から、どうしても妹扱いされるのは不満だった。それでもワグナスと親しい位置にいられるので我慢をした。いつかきっと、兄やスービエとは違った立場でワグナスの役に立つことを目指して、努力を重ねてきた。
中学に上がり、彼らは生徒会の活動に精を出していた。兄やスービエは表舞台でワグナスのことを支えている。だからロックブーケは内助の功のごとく陰からサポートをしようと張り切っていたのに、その位置にはすでにボクオーンがいた。
彼は裏で段取りを整える能力が高く、邪魔になりそうなものは容赦なく排除した。しかしそのやり方は強引で評判も悪かった。
「あなた、みんなから悪く言われてますわよ。少し控えた方がよろしいのではなくて」
ロックブーケを含む仲間には親切だったから、彼が悪く言われるのが嫌で助言をしてみたが、一笑された。
「周囲の評判なんてどうでも良いですよ。それより生徒会の活動を成功させた方が教員の心証も内申も上がって得でしょう?」
ボクオーンの言葉は、文字通りの意味しかなかったのかもしれない。
けれど、ワグナスに時折向けられる熱を帯びた視線は、それだけではないように思えてならなかった。
「ロックブーケ。これはどこに置けば良いんだ?」
突然声を掛けられて、体を震わせた。振り向くと、両肩に重そうな箱を担いだダンターグが立っていた。
「お、驚かさないでください」
「何度も声をかけたのに、気付かなかったんだろうが」
彼は床に箱を置き、身軽になった肩を回しながら隣に並んだ。
眼下の光景を臨むダンターグの瞳が夕焼けの色を受けて赤く染まる。
「親友同士が結ばれたのに、別に嬉しくもなさそうですのね」
「恋愛ごとなんてどうでもいい。俺は強くなることにしか興味ねぇ」
相変わらずの回答だと呆れる。
「それに、遅かれ早かれだったろ」
淡々とした口調に、思わず息を呑んだ。
「……あなた、気付いていましたのね」
「逆になんでみんな気付かねぇんだよ」
あの豪放なダンターグに恋心を理解する情緒があったとは意外すぎる。
驚きが顔に出ていたのだろう。ダンターグは鼻の頭に皺を寄せながら、頭をガリガリと掻いた。
「お前こそ、こんなところで沈んでるだけで良いのかよ」
「……ワグナス様が悲しむことがなければ、構いません」
つんとすまして告げれば、苦笑を浮かべたダンターグの大きな掌が頭をポンポンと優しく叩いた。
「そんじゃ、あとは頼むわ。別の荷物を運んでくる」
彼は生徒会室から出ていった。
放っておいてくれるこの距離感が優しくて、でも少しだけ慰めの言葉が欲しかったような気もして――。
夕焼けに染まる窓辺で、ロックブーケはそっと微笑んだ。