ワグボクで学パロ!

結果発表


「最近避けられている気がする」
 登校中、今にも消え入りそうな声でワグナスが呟いた。
 それを聞いていたスービエは腕を頭の後ろで組んで、空を見上げる。
 どんよりと沈んだワグナスの気持ちとは裏腹に、空は澄み渡る秋晴れだった。
「今日は園芸部の水やり当番なんだろ? 昨日はあっちは将棋部、お前はバスケ部。部活のあとはそれぞれ塾。登下校の時間が合わなくても、仕方ないだろ」
「だが、先週までは時間を調整して……」
 なおも食い下がってくるワグナスに、スービエは呆れながらため息をついた。
「中間試験前は部活禁止だから、調整もつけやすかったんだろう」
 ワグナスは眉間に皺を寄せ、難しい顔で口をつぐんだ。
 沈黙が訪れた。
 駅から学校までの道を、同じ制服を着た高校生に混ざって歩く。風景に溶け込みたいところだが、スービエもワグナスも体格に恵まれているため目立って仕方がない。
 今のワグナスはしょんぼりと肩を落としているからなおさらだ。
「で。本当に相談したかった内容は、なんだ?」
 ワグナスは考えるように目を伏せた。歩きながら目を閉じるなよー、と茶化しかけたが黙っておいた。
「……口付けとは、交際してからどのくらいでするものだろうか」
 周りくどいな、とスービエは心の中でツッコミを入れた。
「つまりは、キスをしたから避けられているんじゃないかと心配しているわけか」
 ワグナスの目が見開かれる。なぜそれが分かったのかと顔に書いてあるが、バレバレだ。
 スービエは二度目になるため息を吐いた。
 続きを促してみると自分はボクオーンの信頼を裏切ってしまったと意味のわからない懺悔が始まった。
 校門を通過する。三分ほどは黙って聞いていたが、だんだん堂々巡りになってきたので手で制して話を打ち切った。
「恋人なんだから、キスくらいするだろ」
「……ボクオーンにも、全く同じことを言われた」
「じゃあ尚更問題ないんじゃね?」
 納得いっていないような表情だが、無理やり飲み込むことにしたようだ。
 上履きを履いたところで別れ、スービエはボクオーンの教室に向かった。様子を伺うついでに揶揄うためだ。
 踵を踏んだ上履きが、歩くたびにピタピタと音を立てる。
 掲示板の前に人だかりができていた。そういえば中間試験の順位表が張り出される頃か。総合と理系文系のトップ二十の名前が公開されるが、スービエには関心がなかった。
 あくびを噛み殺しながら通り過ぎようとした時、女生徒たちのひそひそ声が耳に入ってきた。
「ワグナス様と……調子に乗っているから」
「……、いい気味よ」
 辺りが騒々しいので全てが聞き取れたわけではない。だが、嫌な予感がした。
 話をしていた女生徒を見ると、彼女達はワグナスのファンクラブのメンバーだった。スービエと目が合うと、愛想笑いを浮かべてそそくさと逃げていく。
 彼女達の後ろ姿を見送り、人だかりに入る。
 総合一位はワグナスだった。試験の順位はいつもワグナスとボクオーンが主席と次席を争っているので、それはいつも通りだ。「せいぜい今回はワグナスの勝ちか」程度の感想だ。
 だが、その隣にはボクオーンの名前はなかった。
 三位、四位、と下がり、十位にようやく目当ての名前を見つける。
 今日この場所が賑わっているのはこれが原因か、とようやくスービエは理解した。
 ボクオーンとは中学校以来の付き合いだが、彼が三位以下を取ったのは初めてだった。
 体調が悪かったのか。それともまさかワグナスのキスのせいだとでもいうのだろうか。
 ボクオーンに限って、まさか――
 スービエは深刻な顔をして、ボクオーンの教室へと急いだ。
 だがその朝、スービエは彼に会うことはできなかった。
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