ワグボクで学パロ!

未解決の問題


 体育祭の余韻に浸る間もなく、次にやって来たのは中間試験だ。
「ノエルー、教えてくれよ。数学が全然分からないんだ」
 自宅で勉強に励んでいたノエルの元を、涙目のクジンシーが訪れた。
 スービエ、ダンターグに次いで三人目だ。ノエルの自宅は自習室と化していた。
 ノエルは苦笑とともにクジンシーを居間へと招いた。テーブルの上には教科書と一緒に、スナック菓子と飲み物が並んでいる。
 ノエルは丁寧に解き方を教えるが、クジンシーは三十分もしないうちに音を上げた。
「わーかーらーなーいー」
「公式に当てはめれば、あとは計算するだけだろう」
「ノエルは感覚派だから、説明が下手くそなんだよ」
 勉強は諦めたのか、筋トレ雑誌を開いていたダンターグに言われる。正直ダンターグにだけは言われたくなかった。そもそも、一番赤点が近いのは彼なのだから、せめて教科書を開くくらいはしてくれと思う。
「ならばワグナスかボクオーンを呼べば良いのでは?」
 そもそも、今まで試験前にはボクオーンの家に集まっていた。それなら今回も彼に聞けば良いだろうに。
 そう告げた瞬間、三人ともが呆れたような顔をノエルに向けた。
「あいつらは二人でテスト勉強中だよ。邪魔してやるなよ」
「邪魔も何も、体育祭で宣言をしていたが、本当に付き合っているのか?」
 とノエルが問うと、スービエが大げさにため息をついた。
「お前もワグナスに呼び出されて一緒に聞いてただろ。ワグナスがボクオーンのことが好きだって言ってたの」
「ワグナスはそうであっても、ボクオーンの方はどうなのだ。アレは一位に釣られただけに思えたが……」
「ちょっと待った!」
 クジンシーが悲鳴をあげた。
 彼は顔面を蒼白にして、あわあわと狼狽えながら忙しなく手を動かしていた。
「ワグナスってボクオーンのことが好きなの⁉︎」
「そ。ワグナスはボクオーンちゃんのことが大好きなんだよ。ボクオーンだって自覚はないけど、ワグナスのことが大好きだろ?」
 スービエの説明に、ノエルは思わず「は?」と声を上げて表情を険しくした。ワグナスの方はともかく、ボクオーンの方からの好意は全く気付かなかった。それでは、あの二人は元々両思いだったというのか。いやしかし、ボクオーンには他に恋人がいた時期もあっただろう。どういうことだ?
 問うと、「そういうこともある」とスービエに言われた。意味が分からない。
 あまりの衝撃に固まっていると、「えぇぇ」と声を上げたクジンシーが頭を抱えた。
「ボクオーンはワグナスの気持ちに気付いてないけど。まずくないか?」
「ん? ワグナスが告白したから付き合い出したんだろ?」
「……付き合ってくれとは言ったけど、好きだなんて言ってない。ボクオーンは体育祭で宣言したから、ワグナスの評判を気にして仕方なく付き合ってるんだと思う」
 クジンシーの言葉を最後に、部屋に沈黙が落ちる。
 ノエルは頭の中で情報をまとめた。
 ワグナスとボクオーンは互いに思い合っている。
 そして体育祭で交際を始めた。
 だがボクオーンは自分の気持ちにもワグナスの気持ちにも気付いていない。一方のワグナスは、ボクオーンが自分と同じ気持ちだと思っているかもしれない。
 ――これは、こじれるだろう。
「なかなか面白いことになってんのな」
「面白がらないでくれ」
 軽薄なスービエの言葉に思わず苦言を呈する。
 どちらかにすれ違っていることを伝えるか? いや、しかし余計な世話かもしれない。
 どうしたものかと腕を組んで考えていると、つぶやきのようなダンターグの低い声が響いた。
「ガキじゃねぇんだから、自分たちでなんとかすんだろ」
 雑誌のページをめくりながら、ため息混じりに言った。「それもそうか」とノエル達は頷いた。
 二人ともが思い合っているのであれば、多少トラブルは起こるかもしれないが、きっと大丈夫だろう。
 ――さて。
 友人の問題が解決したことにして、ノエルは手を叩いた。
「休憩は終わりだ。苦手教科は俺が教えるから、勉強を再開しよう。スービエも得意教科は教える側に回ってくれ。問題を間違えたらペナルティで腹筋背筋腕立て十回ずつをワンセット行う。緊迫感があった方が、勉強も捗るだろう」
 罰ゲーム回避のために集中力が上がり、万一間違えても筋トレになる。なんて効率的な勉強方法なのだろう、とノエルは得意げに提案したというのに、残念ながらそれに賛同する者は現れなかった。
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