短いお題色々

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「140文字で綴るSS小説お題」からお借りしました。
ワグボクで、ゲームが始まる少し前の時間軸くらい。

眠れる姫君


 それは繭のようだと、ボクオーンは思った。

 ワグナスの体を包む巨大な繭の表面は石のように硬く、ざらりとした感触を指先に残す。
 額を押し当てる。
 ただの無機質な物体だ。鼓動を感じない冷たさに心が沈む。だが同時に、歓喜に胸が沸いていた。
 ――彼はきっと、自由になれるのだ。
 蝶のように羽ばたくのか、鳥のように空を駆けるのか。その姿を思うと心が躍る。
 
 繭に口付けをして振り返る。そこには暗い表情のノエルとスービエが立っていた。
「何が出てくると思いますか?」
 蝶か鳥か。そう続ける前に、スービエが怒りを迸らせた声をぶつけてきた。
「ワグナスに決まっているだろうっ!」
 彼も不安のあまり、感情的になったのだろう。
 胸がぎゅうっと締め付けられる。
 ワグナスには記憶も人格も残っていないかもしれない。だとしても、従兄弟殿はそれをワグナスと呼ぶのだろう。
 自分はどうなのか。
 ――彼を愛し続けることができるのか。
 
 ボクオーンは愛おしげに繭を撫でた。その指先とは裏腹に、心は重く冷えている。
 出てきて欲しい。欲しくない。
 繭の中から返事はない。
 七英雄を三人もこの場に縫い止めて、眠れる姫君は硬い繭の中で沈黙するのだった。
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