短いお題色々

ボクオーンはBLゲームの主人公は無理でも、こういう路線ならハマりそうだよなーと思った悪役令嬢店生。
こんな話が読みたいなーの冒頭だけ。

悪役令嬢ボクオーン


 ゴッ! と教室に重い音が響いた。
 その衝撃で思い出す。――前世を。
 私は七英雄ボクオーン――だった存在だ。私はすでに滅んだはず。
 ――これは何だ?
 じんじんと痛む額を押さえながら自身を見下ろす。胸の豊かな膨らみの上に、赤い縦ロールが流れてきた。――なるほど、今世では女なのか。
 目を伏せて記憶をたぐる。
 この体の持ち主は公爵令嬢で、この国の第一王子の婚約者だ。容姿端麗、成績優秀。しかし我儘三昧で周囲からは煙たがられている。
 彼女を取り巻く情勢を辿り、気付いた。これは人間の文化を研究していた時に読んだ、低俗な小説と同じ設定だと。
 私は主人公に嫌がらせをし、最終的には王子の怒りを買って断罪される、悪役令嬢役だ。
 なんということだ。
 まずは断罪は回避する必要がある。
 だがそれだけでは面白みがない。
 王子と結ばれ、彼を傀儡に王族を操って我が意のままに国政を操りたい。
 ――乗っ取るか、この小説を。
 
「だ、大丈夫ですか、お義姉様……」
 辿々しい声に振り返る。そこにいた人物の顔を見て、息を呑んだ。
「クジンシー!?」
「は、はひ!」
 舌を噛みながら返事をして、クジンシーは直立の姿勢を取る。
 何故こいつに姉呼ばわりされるのだろうと考え、思い出した。彼は我が公爵家の跡継ぎとして親戚筋から引き取られた養子だ。小説の中では主人公に惚れて姉を裏切る立ち位置だ。――こいつも取り込んでおいた方がいいな。
 それにしても、見知った顔が近くにあるということは、小説で主人公に与する男どもは七英雄の誰かの可能性が高い。
 目の前に立つクジンシーが落ち着きなく体を動かしながら、教室の扉を指した。
「ワグナス王子が迎えにきました」
 そこには、柔らかい微笑みを浮かべるワグナスがいた。
 その両側にはノエルとスービエもいる。ノエルは硬い顔、スービエに至ってはあからさまに嫌悪感を露わにしている。随分な嫌われようだ。
 しかし律儀なワグナスのこと。そう簡単に婚約者を切り捨てはしまい。
 残る七英雄がどんな役割を担うのかは知らないが、この悪役令嬢の役割を、私が思うがままに書き換えて見せよう。
 
 さあ、幕は上がった。
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