短いお題色々

「こんな書き出しで書いてみて」様からお借りしました。
https://shindanmaker.com/606128

ボクオーン逆行話。

「たとえ未来が見えるとして、それがなにか意味をなすだろうか」から始まる小説



 自分が死ぬと世界が巻き戻る。
 それに気付いたのは、最初の生を終えた直後だ。
 アルコールの匂い。酒場のざわめきに不相応な、敵地へ攻め込む作戦の声。
 咄嗟に立ち上がる。見つめた先には、数千年を共にした仲間がいた。
 胸が熱くなる。夢であってももう一度彼らと肩を並べたいと、ボクオーンは彼らに声をかけた。

 やり直すなら裏切り者の汚名を着せず、彼らを救う。願いはそれだけだった。
 未来の記憶がある自分になら、できると思った。

 しかし、何度策を弄しても結果は同じだった。
 ワグナスは罪人として捕らえられ、仲間はこの世界から追放された。
 全滅をすることもあった。

 繰り返される絶望から、数ヶ月前にとうとう酒場で声をかけることをやめた。
「ワグナス様達は全滅したそうだ」
「そんなっ。俺たちはどうなるんだ」
 嘆きの声が酒場に響く。
 ボクオーンはカウンターに代金を置き、背を向けた。

 空から雨が溢れてくる。
 頬を濡らすのは雨粒か、涙か。
 未来を知る自分にしかできないことが、きっとあるはずなのに――。この闇から這い出すことができない。
 冷たく降る雨は、止む気配を見せなかった。
9/12ページ
スキ