あなたを鳥にしたい。(連載中)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「いえあー! おりゃおりゃおりゃおりゃー!! えへ、えへへ、この風呂…キッド様も使ってるのかな、いやん♡ っていかんいかん! 煩悩を払うのだ、磨け!一心に! 皆様への感謝を込めて! えっさー!ほいさー!」
「……?」
「ひぃひぃふぅ、ひぃひぃふぅ、カヤちゃん運動不足スギィ! もう…いや、だめよ、まだ半分も終わってないわよ!!」
風呂場から怪しい声が聞こえるが、その正体は分かる。
カヤという、昨日から我が海賊団の見習いになった女だろう。先ほど昼飯を恵んでやったのだが、いまはどうやら風呂掃除をしているらしい。
「これが終わったらワイヤー氏からお仕事をいただくぞい! がんばれ私!」
自分の名も聞こえてきて、気にならないはずもなくそっと覗いてみる。そこにはズボンのすそを限界までまくり上げて掃除するカヤの姿があった。しかし、その蟹股…
「カエルだな…」
「ん…?」
おっと、気づかれたな。
カヤはしばらく俺をじっと見てから、持っていたデッキブラシを取り落とし、はっとした顔できょろきょろしはじめた。
そしてどこからか風呂の椅子を持ってくるとオレの前において、「どうぞどうぞ」と言った。おもわず座ってしまった。
「どうぞ御見物ください」
「ああ…、?」
なぜ俺は見習いの女が風呂を磨く様子を眺めているのだろう。
今日は暇だし、かまわないが…妙な感じだ。
「ふっふっふー、ワイヤー氏、この風呂掃除が終わりましたらぜひお仕事をください!」
「…とくにはない」
「えええ! そんなこと言わずに!!」
「……、日が暮れる前に洗濯ものを取り込んでたたまねば」
「それは選択の仕事とセットなのでノーカンです」
意外と人に仕事を与えるのは面倒だ。
「たたんだ洗濯物を仕分けするのはどうだ。普段は各々勝手に洗濯物を回収している、洗濯とは別の仕事ということになると思うが」
「そうなんですか! じゃあそれやります! 「舎弟の仕事その3」ですね!」
***
男ばかりの場所だから、正直なところ掃除は最低限にしかされていない。風呂掃除など面倒なことは当番が回ってきても適当にこなすやつが多い。常に可もなく不可もなく、という感じだ。俺はここまできれいになった風呂は、この船に乗って初めて見たかもしれない。
実は、次の風呂掃除当番は俺だったから、面倒ごとが省けてよかった。ついでだから、服の仕分けを簡単に教えてやることにした。
「これがヒートのだ」
「これはどなたですか?」
「俺だ」
「えええ、脚長すぎません!?」
カヤが知っているのは、俺とヒートとキラーと頭のことだけらしかった。服と一緒にほかのクルーのことも簡単に説明してやる。
「あ、こ、これは…キッド様の腰布ですな…!」
「……」
「くんくん」
「……嗅ぐな、洗剤が同じなのだからどれもかわらん」
「はっ! そっか洗濯前に嗅がなきゃ意味なかった…!」
「……」
問題あのありすぎる女だが、ひとつ気になっていたことがある。
「お前、キッドの頭のことどう思ってるんだ?」
カヤは顔をあげると、驚いたようにこちらを見ていた。だがすぐに笑顔になって、洗濯ものをたたみ始めた。
「どう思ってるかって、そんなのは好きに決まってます!
好きだからここに来たんですよ私。それだけです」
「好き、か」
「まぁ、皆さんには劣ると思いますけど、ワイヤー氏もキッド様のこと好きでしょ?」
好きという表現であっているかはわからない。が、まぁ、カヤの言いたいことの意味は十分分かる。
「ああ、俺たちはキッドの頭が好きだ。じゃなきゃここにはいない」
「おんなじですね!」
「同じ、か」
「おこがましいことだと思いますけど、一か月後、私はほんとのクルーになるんです、だからおこがましいこと言いまくって頑張ります!」
すぐにへばって消えるだろうと昨日は思っていたのだが、思っていたよりは、しぶとい女なのかもしれない。
俺にはどうこうしてやることも、する気もないが。まあ。
「そうか、せいぜいがんばれ」
「はい!」
10/10ページ