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※「犬と彼女」同設定
フェザーンの代理総督官低爆破テロでオーベルシュタインが負傷したと聞いたとき、フロイラインは珍しく執事のラーベナルトを困らせた。
いつも執事の言いつけを守るのに、この時ばかりはすぐにオーベルシュタインの入院した病院に向かうと言って聞かなかったのである。
フロイラインは少し前老犬と共にこのオーベルシュタイン宅で暮らすようになった少女である。
先日はオーベルシュタインが軍務尚書の座についたことを喜び、祝った。おおげさだといいつつも、まんざらでもなさそうなオーベルシュタインをラーベナルトは穏やかな気持ちで見ていた。
ところが今日、このような不幸な事態に陥ってフロイラインは不安でならなかった。執事もそれをよく分かっていて、できるだけ情報を集めとうとうフロイラインを病院に送り出したのだった。
ラーベナルトが来るまで待つ中、フロイラインは見舞いの品を手に持ってオーベルシュタインの病室を訪ねた。
ラーベナルトがあらかじめ連絡を入れておいたおかげで、軍務尚書の病室はすぐに教えてもらえた。
フロイラインはオーベルシュタインの怪我の具合が悪くないことを祈りながら病室に向かった。
「ここがパウル様の病室ね……」
緊張した面持ちでノックしようと手を上げる、と突然扉が開きフロイラインは悲鳴交じりにあとずさった。
出てきたのは銀色の髪の男である。服装からして軍の者のようだ。
「おっと、すみません」
「ご、ごめんなさい」
男は一度病室を振り返り、にこにこと笑顔のまま退出していってしまった。
「……そこに突っ立っていないで、入ったらどうかね」
「わっ、は、はい。そうさせていただきます」
中から声をかけられて、フロイラインはあわてて病室に入った。
体のいたるところに包帯を巻かれているが、オーベルシュタインは至っていつも通りだった。
「パウル様、ご迷惑かもしれないけど心配で」
「良い、分かっている。フェルナーと出くわしたことだけは面倒事となろうが」
「あ、あの方がフェルナーさんだったのですね。すみません驚いてロクな挨拶もできなくて」
「後でフロイラインのことを聞かれるだろう。面倒なことだ」
「ちゃんと良い子だって言っておいてくださいね」
「なんだ、卿はフェルナーを気に入ったのか」
「なっ!」
フロイラインは驚いて、次いで顔を真っ赤にして反論した。
「違います! ただの冗談なのにパウル様には通じなかったみたいです」
「私は冗談が苦手なのでな」
「ごめんなさい知っていますよ。
それより、なんだかいつもの勢いで話してしまいましたがお怪我は大丈夫なんですか?」
「大事ない、すぐに退院できるであろう」
フロイラインにはわかった。
本当は少し辛いくせに、わざといつものようにふるまっているのだと。
「パウル様は、人前で弱みを見せないお人ですけど、でも私にもだめですか?
私パウル様が弱っていらっしゃるのをみても得がないから、大丈夫だと思うんですけど……」
見舞いの品をベッドのサイドテーブルに置いて、ベッド前の椅子に腰かける。
オーベルシュタインは少し困ったように顔をしかめたが、フロイラインの手を引いて近くに寄せると、前かがみになってその肩に額を当てた。フロイラインはまるで甘えるようなそのしぐさにひどく驚きはしたが、そっと手を後頭部に添えた。
「正直に言えば、流石にまだ痛む」
「そうですよね、そうですよ。痛いに決まっています」
命を狙われるくらいなら、出世などしてほしくないのに。
口にはできないから、心の中でそう言っておく。
「だがこれも、仕事だ」
まるでフロイラインの心の内を察したかのようにオーベルシュタインはそう言った。
ならば、その仕事で傷つく彼を、少しでも支えたいとフロイラインは思うのだった
見舞い
あとがき
ちょっと弱っている軍務尚書がさぁ!こう、弱みを見せてくれたらさぁ!ぶっ倒れる自信あるよぉおお!
フェザーンの代理総督官低爆破テロでオーベルシュタインが負傷したと聞いたとき、フロイラインは珍しく執事のラーベナルトを困らせた。
いつも執事の言いつけを守るのに、この時ばかりはすぐにオーベルシュタインの入院した病院に向かうと言って聞かなかったのである。
フロイラインは少し前老犬と共にこのオーベルシュタイン宅で暮らすようになった少女である。
先日はオーベルシュタインが軍務尚書の座についたことを喜び、祝った。おおげさだといいつつも、まんざらでもなさそうなオーベルシュタインをラーベナルトは穏やかな気持ちで見ていた。
ところが今日、このような不幸な事態に陥ってフロイラインは不安でならなかった。執事もそれをよく分かっていて、できるだけ情報を集めとうとうフロイラインを病院に送り出したのだった。
ラーベナルトが来るまで待つ中、フロイラインは見舞いの品を手に持ってオーベルシュタインの病室を訪ねた。
ラーベナルトがあらかじめ連絡を入れておいたおかげで、軍務尚書の病室はすぐに教えてもらえた。
フロイラインはオーベルシュタインの怪我の具合が悪くないことを祈りながら病室に向かった。
「ここがパウル様の病室ね……」
緊張した面持ちでノックしようと手を上げる、と突然扉が開きフロイラインは悲鳴交じりにあとずさった。
出てきたのは銀色の髪の男である。服装からして軍の者のようだ。
「おっと、すみません」
「ご、ごめんなさい」
男は一度病室を振り返り、にこにこと笑顔のまま退出していってしまった。
「……そこに突っ立っていないで、入ったらどうかね」
「わっ、は、はい。そうさせていただきます」
中から声をかけられて、フロイラインはあわてて病室に入った。
体のいたるところに包帯を巻かれているが、オーベルシュタインは至っていつも通りだった。
「パウル様、ご迷惑かもしれないけど心配で」
「良い、分かっている。フェルナーと出くわしたことだけは面倒事となろうが」
「あ、あの方がフェルナーさんだったのですね。すみません驚いてロクな挨拶もできなくて」
「後でフロイラインのことを聞かれるだろう。面倒なことだ」
「ちゃんと良い子だって言っておいてくださいね」
「なんだ、卿はフェルナーを気に入ったのか」
「なっ!」
フロイラインは驚いて、次いで顔を真っ赤にして反論した。
「違います! ただの冗談なのにパウル様には通じなかったみたいです」
「私は冗談が苦手なのでな」
「ごめんなさい知っていますよ。
それより、なんだかいつもの勢いで話してしまいましたがお怪我は大丈夫なんですか?」
「大事ない、すぐに退院できるであろう」
フロイラインにはわかった。
本当は少し辛いくせに、わざといつものようにふるまっているのだと。
「パウル様は、人前で弱みを見せないお人ですけど、でも私にもだめですか?
私パウル様が弱っていらっしゃるのをみても得がないから、大丈夫だと思うんですけど……」
見舞いの品をベッドのサイドテーブルに置いて、ベッド前の椅子に腰かける。
オーベルシュタインは少し困ったように顔をしかめたが、フロイラインの手を引いて近くに寄せると、前かがみになってその肩に額を当てた。フロイラインはまるで甘えるようなそのしぐさにひどく驚きはしたが、そっと手を後頭部に添えた。
「正直に言えば、流石にまだ痛む」
「そうですよね、そうですよ。痛いに決まっています」
命を狙われるくらいなら、出世などしてほしくないのに。
口にはできないから、心の中でそう言っておく。
「だがこれも、仕事だ」
まるでフロイラインの心の内を察したかのようにオーベルシュタインはそう言った。
ならば、その仕事で傷つく彼を、少しでも支えたいとフロイラインは思うのだった
見舞い
あとがき
ちょっと弱っている軍務尚書がさぁ!こう、弱みを見せてくれたらさぁ!ぶっ倒れる自信あるよぉおお!