君の夢を捕まえに
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いままで味わったことがないわけじゃなかったけれど、いくら慣れていてもやはり身体を痛めつけられるのは痛いに決まっている。
この2,3か月、さんざん人にそれをしてきたわけだが、別にそれは後悔していないし謝る気もない。
それでも、まったくなんというありさまだ。
「ああ、ほんとにわがままだよなぁ、勝手に出てきて、勝手に死にかけて、戻りたいだなんて思うのは」
証認欲求ばかりが膨らんで、持っていた大事なものを手放したのかもしれないと実感したのは、今更な感じだ。
シャボンディ諸島手前、セアラの小舟は沈没しかけていた。敵の海賊船はもう沈没している。この喧嘩は、吹っ掛けた喧嘩ではない。だが、賞金が上がるというのはこういうことだ。
分かっていたことだが、まさかこんなにすぐ倒されるとは。この航路をなめていたのは自分だったのかもしれない。
ひっくり返った船の上になんとかしがみついているが、まだ島は見えない。どこかに流される前に沈み切るか、力尽きるだろう。
塩水が傷に染みる。
こんなときになって、様々なことを思い出す。
さりげない日常のこと。
ワイヤーの服が戦闘でボロボロになって、意外にも本人が恥ずかしがってしまった時のこと。
ヒートの髪が雨の後ものすごく膨れてしまうこと。
キラーは実はすごくいいトリートメントを使っていること。実は夕食がパスタの時は、キラーがパスタを食べたくて大量に買い込んできて、コックがパスタにせざるを得ないとか。
ロールキャベツを作ってみたら、キッドが思いのほか喜んだ時のこと。
敵船から奪った財宝をみんなで山分けにしたり、武器をピカピカに磨いたり、酒を飲んで大騒ぎしたこと。
今日着ている服は、キッドが買ってきた黒いワンピースだ。スカートにスリットが入っていて、内側の赤い布が覗くのが、セアラは気にいっていた。なによりいいのは、黒と赤のこの服は、傷から流れる血で汚れたようには見えないことだ。
すばらしい死に装束だ。
そう思ってみたが、涙が止まらない。
自分のちっぽけなわがままなんて、この広い海には呑み込まれてしまうのだ。我慢していればよかった。そうすれば、なにも失わなかった。
それでも我慢できなかったのは、自分がやはり海賊だからだ。
「ごめんなさい頭。あなたに、あなたの海賊船に見合う女になりたかった。あなたにじゃなくて多分、私は世間から、自分から認められたかったんだ。
でも、頭にさえ認めてもらえれば、それが一番大切だったんだ。馬鹿だなぁ、私は」
だんだんと、どこが痛むのかもわからなくなっていた。
ヒトの声が聞こえるような気がしたが、多分気のせいだ。
蒼い世界が見えなくなる、黒い世界の中に、あの赤い男が立って、にやりといつもの笑みを浮かべて立っていた。
この2,3か月、さんざん人にそれをしてきたわけだが、別にそれは後悔していないし謝る気もない。
それでも、まったくなんというありさまだ。
「ああ、ほんとにわがままだよなぁ、勝手に出てきて、勝手に死にかけて、戻りたいだなんて思うのは」
証認欲求ばかりが膨らんで、持っていた大事なものを手放したのかもしれないと実感したのは、今更な感じだ。
シャボンディ諸島手前、セアラの小舟は沈没しかけていた。敵の海賊船はもう沈没している。この喧嘩は、吹っ掛けた喧嘩ではない。だが、賞金が上がるというのはこういうことだ。
分かっていたことだが、まさかこんなにすぐ倒されるとは。この航路をなめていたのは自分だったのかもしれない。
ひっくり返った船の上になんとかしがみついているが、まだ島は見えない。どこかに流される前に沈み切るか、力尽きるだろう。
塩水が傷に染みる。
こんなときになって、様々なことを思い出す。
さりげない日常のこと。
ワイヤーの服が戦闘でボロボロになって、意外にも本人が恥ずかしがってしまった時のこと。
ヒートの髪が雨の後ものすごく膨れてしまうこと。
キラーは実はすごくいいトリートメントを使っていること。実は夕食がパスタの時は、キラーがパスタを食べたくて大量に買い込んできて、コックがパスタにせざるを得ないとか。
ロールキャベツを作ってみたら、キッドが思いのほか喜んだ時のこと。
敵船から奪った財宝をみんなで山分けにしたり、武器をピカピカに磨いたり、酒を飲んで大騒ぎしたこと。
今日着ている服は、キッドが買ってきた黒いワンピースだ。スカートにスリットが入っていて、内側の赤い布が覗くのが、セアラは気にいっていた。なによりいいのは、黒と赤のこの服は、傷から流れる血で汚れたようには見えないことだ。
すばらしい死に装束だ。
そう思ってみたが、涙が止まらない。
自分のちっぽけなわがままなんて、この広い海には呑み込まれてしまうのだ。我慢していればよかった。そうすれば、なにも失わなかった。
それでも我慢できなかったのは、自分がやはり海賊だからだ。
「ごめんなさい頭。あなたに、あなたの海賊船に見合う女になりたかった。あなたにじゃなくて多分、私は世間から、自分から認められたかったんだ。
でも、頭にさえ認めてもらえれば、それが一番大切だったんだ。馬鹿だなぁ、私は」
だんだんと、どこが痛むのかもわからなくなっていた。
ヒトの声が聞こえるような気がしたが、多分気のせいだ。
蒼い世界が見えなくなる、黒い世界の中に、あの赤い男が立って、にやりといつもの笑みを浮かべて立っていた。