君の夢を捕まえに
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セアラは、このキッド海賊団唯一の女性だった。歳はキッドよりも数個下で、船員たちの中でも最年少だった。だから皆は若くてかわいいセアラを、性的な対象ではなく、妹のように想い大切に思っていた。
いつだか、キラーは気まぐれに「お前はウチの海賊団の天使ちゃんだな」などと言ったことがあった。
セアラあ、女神じゃないんだねとちょっぴり嫌そうに返した。天使ちゃんなどと言われ子ども扱いされたことが恥ずかしかったのだろう。もちろん子供などという年齢ではないし、彼女も立派な女性なのだ。それでも、クルーたちにとってはやはり、「天使ちゃん」なのだ。
そんな天使が、もしこのガラの悪い船から唐突に姿を消したとなれば、どうなるだろうか。彼女があまりにこの海賊団になじみ、船長を尊敬し、戦闘をこなしてきたものだから、そんなこと、誰も考えたことがなかった。
「おい、あいつは一体どこに行きやがった!」
だん、と机を拳でたたくキッドはこめかみに血管が浮くほどの怒りようだった。停泊していた他の数個の海賊団は、すでに海の藻屑にされていた。海軍が近くにいた様子もない。
殺されたわけでも、捕まったわけでもない。それが明白だからこそ、セアラに怒りが収まらない。彼女に「怒り」を感じたことなど、キッドにはこれまで一度もなかった。
まさか船を自ら降りたのか。考え付くのはそれしかないが、誰もそれを口にできない。
ログの関係で、今日中には出航しなくてはならない。この島もさほど大きくはないが、いちいち民家の戸を開けて探している時間はなかった。
「キッド、なにか変わったことはなかったか?」
「ねぇよ!」
「おちつけ、小さなことでもいいんだ。食料を買い込んでいたとか…」
「あいつが出てったとでもいいたげだな、キラー」
「そうはいっていない。セアラが船を降りる理由があるのか?」
キッドは怒りに忘れていたが、昨日は確かに一つ変わったことがあった。それをヒートがそっと手を挙げながら言った。
「そういや俺、昨日通路であいつに頼まれて、やけに重たい箱を運ばされた。あれはなんだったんだ?」
皆が首をかしげる中、キッドはすぐに思い至った。
「あいつ…いままでため込んでた金、何に使いやがった…?」
キッドはすぐに食堂を出る。皆も慌てて付いていく。向かっているのはセアラの部屋だ。鍵はかけられていなかった。鍵穴にさしっぱなしにされている。キッドが勢いよく扉を開ける。この際女性の一人部屋だなんだと言ってられない。シンプルな部屋はいつもと変わらないが、たしかにそこには昨日までキッドの部屋に置いてあった木箱があった。蹴とばすと、簡単に倒れた。空っぽだった。
「キッド、これは…」
「あいつがウチに来てから使わずにため込んでたもんだ。昨日金が欲しいと言ったんで、俺の部屋から持って行けと言った。もう、ここにはないがな」
もっと部屋の奥に行くと、彼女の小さなテーブルに置手紙があった。
ひとこと、こうつづられていた。
頭の夢は、私の夢。
だから、気が済むまで許してください。
部屋は、少しの間出掛けるようにきちんと片付けられ、布団もたたまれていた。
いつだか、キラーは気まぐれに「お前はウチの海賊団の天使ちゃんだな」などと言ったことがあった。
セアラあ、女神じゃないんだねとちょっぴり嫌そうに返した。天使ちゃんなどと言われ子ども扱いされたことが恥ずかしかったのだろう。もちろん子供などという年齢ではないし、彼女も立派な女性なのだ。それでも、クルーたちにとってはやはり、「天使ちゃん」なのだ。
そんな天使が、もしこのガラの悪い船から唐突に姿を消したとなれば、どうなるだろうか。彼女があまりにこの海賊団になじみ、船長を尊敬し、戦闘をこなしてきたものだから、そんなこと、誰も考えたことがなかった。
「おい、あいつは一体どこに行きやがった!」
だん、と机を拳でたたくキッドはこめかみに血管が浮くほどの怒りようだった。停泊していた他の数個の海賊団は、すでに海の藻屑にされていた。海軍が近くにいた様子もない。
殺されたわけでも、捕まったわけでもない。それが明白だからこそ、セアラに怒りが収まらない。彼女に「怒り」を感じたことなど、キッドにはこれまで一度もなかった。
まさか船を自ら降りたのか。考え付くのはそれしかないが、誰もそれを口にできない。
ログの関係で、今日中には出航しなくてはならない。この島もさほど大きくはないが、いちいち民家の戸を開けて探している時間はなかった。
「キッド、なにか変わったことはなかったか?」
「ねぇよ!」
「おちつけ、小さなことでもいいんだ。食料を買い込んでいたとか…」
「あいつが出てったとでもいいたげだな、キラー」
「そうはいっていない。セアラが船を降りる理由があるのか?」
キッドは怒りに忘れていたが、昨日は確かに一つ変わったことがあった。それをヒートがそっと手を挙げながら言った。
「そういや俺、昨日通路であいつに頼まれて、やけに重たい箱を運ばされた。あれはなんだったんだ?」
皆が首をかしげる中、キッドはすぐに思い至った。
「あいつ…いままでため込んでた金、何に使いやがった…?」
キッドはすぐに食堂を出る。皆も慌てて付いていく。向かっているのはセアラの部屋だ。鍵はかけられていなかった。鍵穴にさしっぱなしにされている。キッドが勢いよく扉を開ける。この際女性の一人部屋だなんだと言ってられない。シンプルな部屋はいつもと変わらないが、たしかにそこには昨日までキッドの部屋に置いてあった木箱があった。蹴とばすと、簡単に倒れた。空っぽだった。
「キッド、これは…」
「あいつがウチに来てから使わずにため込んでたもんだ。昨日金が欲しいと言ったんで、俺の部屋から持って行けと言った。もう、ここにはないがな」
もっと部屋の奥に行くと、彼女の小さなテーブルに置手紙があった。
ひとこと、こうつづられていた。
頭の夢は、私の夢。
だから、気が済むまで許してください。
部屋は、少しの間出掛けるようにきちんと片付けられ、布団もたたまれていた。