ぼくの声、きみに届け。
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2 とある島の風景
南の海のとある島。
キッド7歳、キラー11歳。
2人の少年は、小さないかだに乗ってこの島に到着していた。
故郷の島はすぐ近くだが、二人は時々こうして島を抜け出し、ある夢に挑むいつかのための訓練をしていた。
キッドには親がいない。キラーにも親がいない。二人のいる街で、それは珍しいことではなかった。キッドは自分の親の顔は知らないが、キラーの親の顔は知っている。キラーの母親が病死して、そして二人は海賊になることを決めたのだ。それは何か大きな理由だあるわけではなく、ただ、好奇心と生まれ持ったものがそうさせただけだった。
2人は体が成長し終えるまで南の海をこうして旅し、いつか海賊団として出航することを夢見ている。
「なあキラー、お前この街は知ってるか?」
「ああ。来るのは初めてだ」
街は小さく、風車が回るのどかな地だった。だが奥には探検するのにうってつけな森がある。二人は大人たちに干渉されない隠れ家を見つけに歩き出す。
大人などこわくはないのだが、やはり子供が二人だけでいると、いちいち声をかけてくるのは面倒なのだ。
森の方へ行くと、岩場があり、二人は大きな岩の横を隠れ家に選んだ。その日は、どちらが大きな葉っぱを見つけられるか、一日中駆け回って探した。そうして集まった葉を寝床にし、枝を紐で組んで寛容的な屋根を作った。
ほとんどはキッドが行い、その間見つけた木の実や狩ったうさぎを食べられるようにするのはだいたいキラーの仕事だった。
2人はもう、一年近く外に出てはこうして居場所を作っている。
キラーは岩に立てかけた枝の骨組みに、ジャンプしながら葉を乗せるキッドをチラ、と見た。背丈のある自分が手伝ってやればいいのだが、彼はそういったことを嫌がる。
自分より4つ年下の幼い男の子だが、キラーは既に、彼の中にリーダーとしての素質を感じていた。だから、キラーは自分より小さなキッドの背中を守るように、後ろを歩くのが常だった。
時々キッドは振り向いて、歩くのが遅いと文句をつける。そうすると、やっと二人は並んで歩く。キッドは並んで歩く方を好むが、キラーはどうしてもついていく側になりがちなのだ。
行き先を決めるのも、一日に行動を決めるのも、全部キッドだ。キラーは彼が助けられたとわからないように、そっと手助けをした。
「よーしキラー!これでちょっとくらいなら雨も防げるぜ」
「すごいな、キッドは。焚火はこっちに作ったぞ。葉が燃えるから」
「おう、そうだな」
「じゃあ、飯にしよう。明日は何をする?」
「探検!」
「そうだな、もっと奥まで行ってみよう」
***
セアラ7歳、ドルヤナイカ9歳。
二人の少女は、生まれてこの方、この近くを離れたことがない。
2人の家は隣同士、物心ついたころからの幼馴染だった。
ちょっぴり弱気なセアラと、お姉さんになりたいお年頃のドルヤナイカ。セアラにとって彼女は頼れるお姉さんであり、あこがれる年上の女の子であり、そしてなにものにも代えがたい友人だった。
「ドルヤナイカ、何してるの?」
「ランプに火をつけてみたのよ」
「わあ、これあなたの?」
「ううん。パパの。借りてきたんだ。倒したらだめだよ、火事になっちゃうから気をつけなきゃいけないの」
夕暮れ時、ドルヤナイカの部屋で、二人はランプを眺めていた。普段から夜になれば使うものだが、セアラはまだ一人で使ったことがなかった。ランプは、安全に使える大人が持つものなのだ。それを持つ友人がうらやましくもあり、かっこよくも見えた。キラキラした目を向けられて、ドルヤナイカは得意げだ。そして少し気が大きくなったのか、こういった。
「本の中で、主人公は松明をもって森に入るの」
「本の中で?」
「そうよ。私も一度やってみたい。今夜こっそり抜け出して、森に行こうよ」
「ええ、怖いよぅ」
「大丈夫よ、だって今日はランプがあるんだもの。パパはしばらく貸してくれるって言ってたわ」
「じゃあ、私はバケツを持ってくる。水を入れて。そしたらもし倒しても、すぐに消せるもの」
「じゃあ、お互いの家の明かりが消えたら、外で会いましょう」
ちょっぴり怖かったが、好奇心が勝る。セアラは緊張した面持ちで、こくんと頷いた。
南の海のとある島。
キッド7歳、キラー11歳。
2人の少年は、小さないかだに乗ってこの島に到着していた。
故郷の島はすぐ近くだが、二人は時々こうして島を抜け出し、ある夢に挑むいつかのための訓練をしていた。
キッドには親がいない。キラーにも親がいない。二人のいる街で、それは珍しいことではなかった。キッドは自分の親の顔は知らないが、キラーの親の顔は知っている。キラーの母親が病死して、そして二人は海賊になることを決めたのだ。それは何か大きな理由だあるわけではなく、ただ、好奇心と生まれ持ったものがそうさせただけだった。
2人は体が成長し終えるまで南の海をこうして旅し、いつか海賊団として出航することを夢見ている。
「なあキラー、お前この街は知ってるか?」
「ああ。来るのは初めてだ」
街は小さく、風車が回るのどかな地だった。だが奥には探検するのにうってつけな森がある。二人は大人たちに干渉されない隠れ家を見つけに歩き出す。
大人などこわくはないのだが、やはり子供が二人だけでいると、いちいち声をかけてくるのは面倒なのだ。
森の方へ行くと、岩場があり、二人は大きな岩の横を隠れ家に選んだ。その日は、どちらが大きな葉っぱを見つけられるか、一日中駆け回って探した。そうして集まった葉を寝床にし、枝を紐で組んで寛容的な屋根を作った。
ほとんどはキッドが行い、その間見つけた木の実や狩ったうさぎを食べられるようにするのはだいたいキラーの仕事だった。
2人はもう、一年近く外に出てはこうして居場所を作っている。
キラーは岩に立てかけた枝の骨組みに、ジャンプしながら葉を乗せるキッドをチラ、と見た。背丈のある自分が手伝ってやればいいのだが、彼はそういったことを嫌がる。
自分より4つ年下の幼い男の子だが、キラーは既に、彼の中にリーダーとしての素質を感じていた。だから、キラーは自分より小さなキッドの背中を守るように、後ろを歩くのが常だった。
時々キッドは振り向いて、歩くのが遅いと文句をつける。そうすると、やっと二人は並んで歩く。キッドは並んで歩く方を好むが、キラーはどうしてもついていく側になりがちなのだ。
行き先を決めるのも、一日に行動を決めるのも、全部キッドだ。キラーは彼が助けられたとわからないように、そっと手助けをした。
「よーしキラー!これでちょっとくらいなら雨も防げるぜ」
「すごいな、キッドは。焚火はこっちに作ったぞ。葉が燃えるから」
「おう、そうだな」
「じゃあ、飯にしよう。明日は何をする?」
「探検!」
「そうだな、もっと奥まで行ってみよう」
***
セアラ7歳、ドルヤナイカ9歳。
二人の少女は、生まれてこの方、この近くを離れたことがない。
2人の家は隣同士、物心ついたころからの幼馴染だった。
ちょっぴり弱気なセアラと、お姉さんになりたいお年頃のドルヤナイカ。セアラにとって彼女は頼れるお姉さんであり、あこがれる年上の女の子であり、そしてなにものにも代えがたい友人だった。
「ドルヤナイカ、何してるの?」
「ランプに火をつけてみたのよ」
「わあ、これあなたの?」
「ううん。パパの。借りてきたんだ。倒したらだめだよ、火事になっちゃうから気をつけなきゃいけないの」
夕暮れ時、ドルヤナイカの部屋で、二人はランプを眺めていた。普段から夜になれば使うものだが、セアラはまだ一人で使ったことがなかった。ランプは、安全に使える大人が持つものなのだ。それを持つ友人がうらやましくもあり、かっこよくも見えた。キラキラした目を向けられて、ドルヤナイカは得意げだ。そして少し気が大きくなったのか、こういった。
「本の中で、主人公は松明をもって森に入るの」
「本の中で?」
「そうよ。私も一度やってみたい。今夜こっそり抜け出して、森に行こうよ」
「ええ、怖いよぅ」
「大丈夫よ、だって今日はランプがあるんだもの。パパはしばらく貸してくれるって言ってたわ」
「じゃあ、私はバケツを持ってくる。水を入れて。そしたらもし倒しても、すぐに消せるもの」
「じゃあ、お互いの家の明かりが消えたら、外で会いましょう」
ちょっぴり怖かったが、好奇心が勝る。セアラは緊張した面持ちで、こくんと頷いた。
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