8章 交差

「ラグラージ、だいぶスピードがついたわね」
「あぁ、そうだな」

ヒカリの言葉に、返事をしたのはタケシだ。

「片付けありがとう」

カスミがニヤッとして言う。どうやら先程、片付けを後にすると言ったのは、タケシの性格をわかっていて言ったものだったらしい。それをわかっていてタケシも片付けたため、彼は苦笑するだけだった。

「しかし……、タカナオもだいぶバトルに慣れたみたいだな」

ニビジムでのバトルとは比べたものにならないくらいの成長ぶりだった。相手があのラグラージでなければ、もっといいところまでバトルを持ち込めただろう。

今までスピード速いポケモンに追いつかなかったのが、素早いラグラージの水鉄砲を落ち着いてかわすように指示できていたのも成長した証拠である。

「わたし達の教えが良いのよ」
「ゼニガメのアクアテールを覚えさせられたの、ハルカさんのおかげですもんね」

自慢げに言うハルカに、ヒナがニコッと笑う。ハルカは昔、自分のカメールにアクアテールを覚えさせていた。そのため、コツを教えてあげた。

「ゼニガメとラグラージか。いい勝負になるかもな」

ボソリと言ったリョウスケの表情は真剣だった。ヒナは、リョウスケの気持ちがなんとなくわかったのか、この後が少し楽しみだった。

「今度はそっちから良いよ」

マサトが言った。タカナオは素直に聞き入れる。

「ゼニガメ、ラグラージに向かって走って!」
「ゼニ!」

攻撃の指示はせず、ラグラージに向かって走るように言った。ゼニガメは頷き、走り出す。

「突進だ」

マサトは、ラグラージに突進を指示する。このままでは先程と同じだ。

「尻尾で高く跳ぶんだ」

ゼニガメは、ラグラージの攻撃をかわすように、尻尾を上手く使い、跳ね上がった。それに驚いたラグラージは、急ブレーキをかけてとまる。ラグラージの真上にはゼニガメがいた。

「アクアテールだ!」
「ゼニ!」

下に落ちるスピードを利用しながら、ラグラージを地面に叩きつけるように、攻撃した。スピードが力になり、ラグラージは叩きつけられる。無論、それだけではラグラージは倒れなかった。

「水鉄砲!」
「こっちも水鉄砲で向かい打つんだ!」

次に、タカナオが水鉄砲を指示すると、マサトも同じ攻撃を指示した。水対水。若干、ゼニガメが圧されている。

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