8章 交差

「バタフリー、頼んだ」
「フリィ」

まず、タカナオはバタフリーから始める事にした。彼女は嬉しそうに頷き、前に出る。

「いけ、ラグラージ!」

マサトの出したポケモンはラグラージだった。

「ラグラージ……。たしかホウエンの……」

タカナオはラグラージを見ながら、図鑑を開いた。

「ラグラージ、ミズゴロウの最終進化形。大型船を引っ張って泳ぐパワーがある。太い腕の一振りで相手を叩きのめす」
「……一振りって」

ごくりと息を飲んだ。マサトは、サトシ達を旅をしたことがあり、ジムリーダー、センリの息子である。それはタカナオも知っている。実力は見ないとわからないが、きっと彼は強いはずだ。

「そっちから良いよ」

タカナオは言った。マサトはニッと笑うと、ラグラージに指示を始める。

「ラグラージ、まずは水鉄砲だ」

マサトがそう言うと、あの体からは予測できない速さでラグラージは水鉄砲を放った。タカナオは、スピードに驚くが、落ち着いてかわすように指示を出す。バタフリーは水鉄砲をかわした。

「銀色の風!」

次の技を指示する。銀色の風はラグラージに当たり、ダメージを与えたようだった。

「次にサイケ光線!」
「フリィ!」

今度のサイケ光線はあっさりと躱された、ズカズカとラグラージがバタフリーに向かって走ってくる。

「突進だ!」

焦ってしまったせいか、バタフリーは躱すことは出来なかった。吹っ飛び、近くの木に衝突。バタフリーは戦闘不能となった。

「……一撃」

驚いた。近くの木と言っても、バトルのスペースを考えて広い所を選んでいるのだ。距離はある。それが軽々と、いやもっと飛びそうな勢いで、吹っ飛んでしまった。タカナオは、慌ててバタフリーに駆け寄る。

「だ、大丈夫?」
「フリィフリィ……」

なんとか平気らしく、バタフリーは頷いた。なんて凄まじいパワーなのだろうか。一振りで相手を叩きのめすという言葉に間違いはないだろう。

「ありがとう。休んでて」

タカナオはバタフリーをモンスターボールに戻した。

「ゼニガメ、頼んだ」
「ゼニ!」

ゼニガメに頼むと、先程よりも気合いが入っているようだった。どうやら、今のバトルを見ていて燃えてしまったらしい。水タイプなのだが、後ろから炎が吹き出しそうな勢いだ。

「マサト、また強くなってるわね」

ヒナが言うと、リョウスケはムッとした表情で頷いた。実はリョウスケとマサトはライバル同士。こないだのリーグでの決勝の相手もマサトだった。そのため、認めるのが癪だった。

4/13ページ
スキ