8章 交差
「ゼニガメ、アクアテールだ!」
「ゼニ!」
勢いよく水しぶきを上げた尻尾で弧を描き相手のラッタを吹っ飛ばした。とても綺麗に決まったのが嬉しかったのか、ゼニガメは誇らしげな表情を浮かべる。相手のトレーナーは、戦闘不能になったラッタをモンスターボールに戻し、挨拶をして帰って行った。
「……よくも短期間で、こんなにバトルが強くなったものだわ」
ヒナの言葉に、リョウスケも同感らしく頷いた。この二、三日でタカナオは凄く成長した。ハナダの一件以来、何かがタカナオを変えたようだった。
バトルの指示が的確になり、そこそこのトレーナーにもあっさり勝つようになった。タカナオを見ると、ゼニガメの頭を撫でている。
「なんだか、ミズカみたいね」
ヒカリが後ろで呟いた。「えっ?」と二人は声を揃える。
「昔ね。チルタリスに2、3日でゴッドバードを覚えさせてたの。もちろん、チルタリスが凄いんだけど、それに関してはかなり勉強してたわ」
ニコッと笑うヒカリは、何だか嬉しそうである。最近、タカナオも強くなりたいと言って、バトルについてや、ポケモンの育て方について、わからない事があればすぐに聞いてくるようになった。ゼニガメが新たにアクアテールを覚えたのも、そんな彼の姿に刺激を受けたからだ。
「皆、ご飯かも!」
大声で彼らを呼ぶ、ハルカの声がした。昼食が用意されたテーブルの所まで行く。
「もうそろそろかしらね?」
カスミがハルカに聞くと、
「えぇ、多分」
と彼女は笑った。実は、タケシともう一人、少年を待っているのだ。ハルカはその少年とタカナオにバトルをさせたいと思っている。
「やった、おにぎりだ」
当の本人はそれを知らない。待ち合わせをしていることも知らず、お腹を空かせて席についた。
「いただきます」
おにぎりを口に入れる。形はイビツだが美味しい。タカナオをおにぎりを口に頬張った。
「ミズカが見つかって安心した?」
カスミの質問に、タカナオは笑って頷いた。
「まあ、あれだから、生きてるとは思ってたけど……」
彼の言葉に、カスミ達は苦笑した。そう。ミズカは簡単に死ぬやつではない。それはカスミ、ハルカ、ヒカリの三人がよくわかっている。
「お姉ちゃん、いつも色々と巻き込まれるから。その度に一人で悩んで、自分を追いつめる」
「変わってないのね。ミズカの性格」
「いつもの事だよ。時々、大変になるとわかっていて、自ら突っ込んで挑む。見てるお母さんとかは、頭を抱えてるよ」
そんな状況はよくあることだ。自分では絶対にやらないことを姉は簡単にやってのける。躊躇はしないのだろうか。不安にならないのだろうか。姉から日常生活を聞いているとそう思って止まない。
「もしかしたら、お姉ちゃんにとってはいつものことかもしれないな」
そう思えるほど、彼女のいる所には必ず問題が発生していた。唯一、楽しんでいたのは、中学校最後の年くらいだ。
「……それは、言い過ぎだと思うけどね」
苦笑しながら言うと、ゼニガメが頭に乗ってきた。どうやらバトルの練習をしたいらしい。タカナオは頷くと食べかけのおにぎりを一気に口へ放り込み、「ごちそうさま」と言って走って行った。
「あいつ、変わったな」
「え?」
「最初を思い出してみろよ。タカナオ、頼ってばかりだったじゃねぇか。それが、ポケモンに頼られるようになってきた」
リョウスケの言葉に、ヒナは嬉しそうに「そうね」と返した。たしかに、最近は自分達にあまり頼って来ない。それはトレーナーとしての大きな一歩だと彼女は思った。
「ゼニ!」
勢いよく水しぶきを上げた尻尾で弧を描き相手のラッタを吹っ飛ばした。とても綺麗に決まったのが嬉しかったのか、ゼニガメは誇らしげな表情を浮かべる。相手のトレーナーは、戦闘不能になったラッタをモンスターボールに戻し、挨拶をして帰って行った。
「……よくも短期間で、こんなにバトルが強くなったものだわ」
ヒナの言葉に、リョウスケも同感らしく頷いた。この二、三日でタカナオは凄く成長した。ハナダの一件以来、何かがタカナオを変えたようだった。
バトルの指示が的確になり、そこそこのトレーナーにもあっさり勝つようになった。タカナオを見ると、ゼニガメの頭を撫でている。
「なんだか、ミズカみたいね」
ヒカリが後ろで呟いた。「えっ?」と二人は声を揃える。
「昔ね。チルタリスに2、3日でゴッドバードを覚えさせてたの。もちろん、チルタリスが凄いんだけど、それに関してはかなり勉強してたわ」
ニコッと笑うヒカリは、何だか嬉しそうである。最近、タカナオも強くなりたいと言って、バトルについてや、ポケモンの育て方について、わからない事があればすぐに聞いてくるようになった。ゼニガメが新たにアクアテールを覚えたのも、そんな彼の姿に刺激を受けたからだ。
「皆、ご飯かも!」
大声で彼らを呼ぶ、ハルカの声がした。昼食が用意されたテーブルの所まで行く。
「もうそろそろかしらね?」
カスミがハルカに聞くと、
「えぇ、多分」
と彼女は笑った。実は、タケシともう一人、少年を待っているのだ。ハルカはその少年とタカナオにバトルをさせたいと思っている。
「やった、おにぎりだ」
当の本人はそれを知らない。待ち合わせをしていることも知らず、お腹を空かせて席についた。
「いただきます」
おにぎりを口に入れる。形はイビツだが美味しい。タカナオをおにぎりを口に頬張った。
「ミズカが見つかって安心した?」
カスミの質問に、タカナオは笑って頷いた。
「まあ、あれだから、生きてるとは思ってたけど……」
彼の言葉に、カスミ達は苦笑した。そう。ミズカは簡単に死ぬやつではない。それはカスミ、ハルカ、ヒカリの三人がよくわかっている。
「お姉ちゃん、いつも色々と巻き込まれるから。その度に一人で悩んで、自分を追いつめる」
「変わってないのね。ミズカの性格」
「いつもの事だよ。時々、大変になるとわかっていて、自ら突っ込んで挑む。見てるお母さんとかは、頭を抱えてるよ」
そんな状況はよくあることだ。自分では絶対にやらないことを姉は簡単にやってのける。躊躇はしないのだろうか。不安にならないのだろうか。姉から日常生活を聞いているとそう思って止まない。
「もしかしたら、お姉ちゃんにとってはいつものことかもしれないな」
そう思えるほど、彼女のいる所には必ず問題が発生していた。唯一、楽しんでいたのは、中学校最後の年くらいだ。
「……それは、言い過ぎだと思うけどね」
苦笑しながら言うと、ゼニガメが頭に乗ってきた。どうやらバトルの練習をしたいらしい。タカナオは頷くと食べかけのおにぎりを一気に口へ放り込み、「ごちそうさま」と言って走って行った。
「あいつ、変わったな」
「え?」
「最初を思い出してみろよ。タカナオ、頼ってばかりだったじゃねぇか。それが、ポケモンに頼られるようになってきた」
リョウスケの言葉に、ヒナは嬉しそうに「そうね」と返した。たしかに、最近は自分達にあまり頼って来ない。それはトレーナーとしての大きな一歩だと彼女は思った。