7章 シャイルとミズカ

「タカナオが来るのはいつなの?」
「いつかはわかりませんが、ちょうど3週間後、ボスの部屋の前を横切ると良いでしょう。それまで、このことは誰にも言わないでください」
「わかった」
「一番手っ取り早いのは貴方が死ぬことなんですけどね」

占い師の言うことにミズカはごくりと息を飲む。そして、じんわりと背中に汗が滲むのを感じながら、口を開く。

「……わかってる。だからあたしは……」
「無理ですよ」

ミズカの言葉を占い師は遮った。彼女だって馬鹿じゃない。最悪、その3週間後に死ぬつもりでいた。しかし、占い師は無理だと言った。一体、どういうことなのか。ミズカは眉間にシワを寄せる。

「貴方は一度、死ぬチャンスを逃しています。それどころか、世界を破滅から回避するチャンスをいくつも逃している。記憶にはないでしょうけど……」
「死ぬことは簡単でしょ?」
「やってみたらどうです? 何なら、私があなたを刺しましょうか?」

占い師は楽しそうにナイフを出してきた。一瞬ギョッとしたが、今は考えている暇はない。彼女は大きく頷いた。

「いきます」

占い師は勢いよくナイフをミズカの腹に突き刺したかに見えた。ミズカも死ぬつもりでいたに違いない。しかし、どうしたことか、ミズカの腹の前でナイフの刃先が半分消えた。占い師がナイフを引くと、再び姿を現す。

「これは……」
「あなたの目の前で空間の歪みが出来ているのです。恐らく、あなたの気持ちであなたの周りにある時空の流れが変わっているのでしょう」
「どうして?」
「わかりません。しかし、この世の中、説明のつかない事などいくらでもありますよ、ふふ」

占い師の曖昧な答え。しかし、ミズカにとってはずっと説明のつかないことが続いている。妙に納得してしまった。

「しかし、これで死なないとは思わないで下さい。貴方が死にたくないと思ったその時は、きっと……」
「わかった。ありがとう」

そう言って、ミズカは占い師のもとを離れた。その翌週、リョウスケと出会ったのである――。

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