7章 シャイルとミズカ

「何しに来たんだよ」
「いや。謝りたくてな」
「は?」

彼には意味がわからなかった。シャイルは、チラッとリョウスケを見ると立ち上がり、彼の部屋の鍵を閉め、窓にカーテンをかける。他に何もない事を確認し、シャイルはハンチング帽とマフラーを取った。

ハンチング帽からは長いポニーテールが現れた。

「え……、お……、女?」

シャイルの中身を見て驚いた。リョウスケは完璧に男だと思っていた。

「男だと思ってくれて、ありがとう。そうじゃないと帽子とマフラーの意味がないから……」

嬉しそうに、ニコッと笑う。

「あたしはミズカ。外では偽名を使って、シャイルと名乗ってるの」
「は、はあ……」

いきなり口調が変わってしまい、リョウスケは戸惑う。

「それで、……謝りたいって何ですか?」

このままでは話が進まない。リョウスケは本題に入った。

「あたしのせいだから……」
「……?」
「貴方が、NWGに入らなきゃならなくなったの……。あたしのせいだから……」

ミズカの言葉、リョウスケは首を傾げた。彼女が一体何をしたというのだろう。

「あたし……、北風使いの生まれ変わりなの」

そんな言葉から彼女の話は始まった。NWGについての事、組織の目的、自分が北風使いだとバレてはいけない事、破滅の鍵の事。全てを話された。

「ごめんなさい」

彼女は、かなり責任を感じている様子だった。

「悪いのは組織ですよ」
「そうだけど……ね」

寂しく笑った彼女の表情に、リョウスケは顔を歪めた。自分よりも大きなものを背負っているミズカと住んでいる世界が違う気がした。

「それでね。あたし……」

瞬く間に、ミズカの表情は真剣なものとなった。時間なのか、再びハンチング帽にマフラーをする。

「お前の両親を助ける手伝いをしたい」

彼女は男口調に戻っていた。ミズカの言葉に迷った。しかし、はいそうですか。と協力してもらうわけにはいかない。彼女が北風使いだと言うのは本当だろうが、この組織にいる。おかしいではないか。安々と信じて良いわけがない。それに、あまりいい心地がしない。

「いいです。一人でやりますから」
「いや、俺の責任だ。協力させてくれ」

最初、リョウスケは断る一方だったが、ミズカがどうしてもと聞かないため、ポケモンバトルで決める事にした。そして、ミズカとポケモン達の絆がよく通じ、逆に彼女を信じるようになったのだ。その後、マルナのことも信用するようになった――。
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