7章 シャイルとミズカ

――両親が捕まり、闇の世界へ足を踏み入れたリョウスケは、全ての人間を敵だと思っていた。そんな時、彼女達に会った。

「……シャイル様。この任務……どうしますか?」
「様は付けるな。任務は無視すれば良い」

偶々、そんな会話が聞こえてきた。そこは食堂で、ミズカとマルナは一緒にご飯を食べていた。

「あたしは、悪い事はしたくない」
「シャイル様、あたしではなくて俺にして下さい。それに、顔は隠しながら食べて下さい」

ミズカはハッとした表情になり、下げていたマフラーを鼻にかけた。NWGに来てから結構経つが、口調や仕草に慣れないでいる。

最初にリョウスケに気付いたのはマルナだった。気づかれ、恥ずかしそうにしているリョウスケに、

「一緒に食べようぜ?」

と、ミズカは誘った。

「シャイル様、男口調と言っても砕けすぎです」
「悪い……。じゃない、すまなかったな」

男口調にしろと言われれば、簡単に出来るが口調が悪くなり過ぎる。そんな二人の会話に、リョウスケは不審に思った。

「ほら、一緒に食べましょうよ!」

ミズカではなく、マルナが言った。彼女は席を立ち上がると、無理矢理、彼を連れて来た。

「あ、俺はシャイルだ」
「私はマルナ。宜しくね」

ニコッと笑いながら、名前を言ったマルナにピンときた。

NWGのボス、カルナの娘だ。リョウスケは顔をしかめる。ボスの娘と顔を隠した変な人を前に、リョウスケの二人に対する第一印象は最悪だった。しかし、マルナは人懐っこく、どんどん話しかけてくる。

「貴方、リーグ優勝者のリョウスケ君だよね?」
「あ……、あぁ」
「へぇ、凄いな」

自分のことをマルナが知っていて意外だった。シャイルの方が知っていそうだとリョウスケは思ったのだ。

「たしか、組織に入りたくて入ったわけじゃないのよね?」

マルナは顔を歪めながら、リョウスケに聞いた。

「ボスや幹部さん達……、皆、強引だから……」
「……ふざけるなよ」

マルナの話に、リョウスケはムッとした表情を浮かべた。話のついていけないミズカは首を傾げる。

「ふざけるなよ! お前らに……、お前らに何がわかるんだ! もう話しかけてくるな」

席を立ち上がり、リョウスケは行ってしまった。

「マルナ、あいつがどうしてこの組織に入ったのか教えてくれ」

歩いて遠ざかって行くリョウスケを見ながら、ミズカはマルナに聞く。あれは望んでここにいるわけではない。彼の態度から察した。

「何が、強引だよ」

リョウスケはやりきれない思いでため息をついた。一人、与えられた部屋のベッドで寝転がっている。

「あれは犯罪だろ……」
「そうだな。犯罪だ」

独り言のはずなのに、誰かに返事をもらった。驚いて起き上がると、シャイルがいる。

「な……。お前、勝手に人の部屋……」
「すまないな。鍵が開いていたから邪魔した」

シャイルは勝手にその場にドスッと座る。リョウスケは眉間にシワを寄せた。

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