1章 北風使いの生まれ変わり
シゲルはサトシと一緒に一本の大きな木の下へ来た。
「本に挟まっていた写真の場所か?」
「そうだね」
シゲルはそこへ腰を下ろす。サトシも隣に座った。ピカチュウがサトシの膝の上へ乗る。
「どうする? 聞くかい?」
「俺は何の話か知らないから、そう聞かれても困る」
「聞き方を変えよう。今から話すことは、君の父親に関することだ。……どんな父親でも聞いたと後悔しないでもらいたい」
シゲルの話にサトシは目を見開く。てっきり、北風使いの生まれ変わりの話かと思っていたら違うらしかった。
「俺の父親?」
「あぁ。彼が何をしたかをこれから話そうと思う」
「俺と母さんを捨てて、新しい家族を作ったって話じゃないのか?」
「違う。もっと残酷なことさ」
シゲルは少し遠くを眺めた。サトシは息をのむ。
「……とはいえ、その行動は今回の件に繋がっていると考えられる」
「今回の件に……」
「聞くのをやめるかい?」
「そこまで聞いてやめられるかよ」
サトシの言葉にシゲルは苦笑する。そして、真面目な表情になると口を開いた。
「ここでこの写真を撮った日、あれはサトシと僕が、初めてミズカの存在を知った日だった。サトシの父親に連れて来られた彼女に正直戸惑いしかなかったよ」
「わざわざ父さんは何しに来たんだよ?」
サトシの質問にシゲルは表情をなくした。重々しい空気になる。シゲルは眉間にシワを寄せた。
「そのときは知らなかったが、どうやらミズカをこちらの世界で殺害しようとしていたらしい」
「……は?」
サトシは目を見張った。シゲルから恐ろしい単語が出てきて、ごくりと息を飲む。
「オーキド博士がそれを止めたらしくてね。止めてこちらの世界に用がなくなったからなのか。ミズカとサトシはその場で一度記憶を消された。それから、博士はミズカが今後殺害されぬように手を貸したんだ。……この世界に呼んでトレーナーにしようとしたらしい。ミズカが父親に殺されそうになったときに、ちゃんと対抗できるように」
サトシは言葉を失った。なぜ、わざわざこちらを捨ててまで作った家族を殺そうとするのか。サトシには皆目見当もつかない。
「博士はサトシの存在は伏せるつもりだった。だが、奇跡的に会ってしまったんだよ、君たちは。だから、互いの関係を知らぬまま、友人として旅をしていた。……無論、それには終わりが来た。また君らの父親がミズカを殺そうとしてきた。だから、博士は二人に関係を話すしかなくなったんだ。友情を切り裂く話だったとしてもね」
サトシはギュッとピカチュウを抱き締めた。微かに過ぎる記憶は、いい記憶ではない。
『無理だよ。もうあたしはサトシを友達として見れない。もちろん、兄妹としてもね』
嘲笑する黒髪のショートの女の子が掠める。
「本に挟まっていた写真の場所か?」
「そうだね」
シゲルはそこへ腰を下ろす。サトシも隣に座った。ピカチュウがサトシの膝の上へ乗る。
「どうする? 聞くかい?」
「俺は何の話か知らないから、そう聞かれても困る」
「聞き方を変えよう。今から話すことは、君の父親に関することだ。……どんな父親でも聞いたと後悔しないでもらいたい」
シゲルの話にサトシは目を見開く。てっきり、北風使いの生まれ変わりの話かと思っていたら違うらしかった。
「俺の父親?」
「あぁ。彼が何をしたかをこれから話そうと思う」
「俺と母さんを捨てて、新しい家族を作ったって話じゃないのか?」
「違う。もっと残酷なことさ」
シゲルは少し遠くを眺めた。サトシは息をのむ。
「……とはいえ、その行動は今回の件に繋がっていると考えられる」
「今回の件に……」
「聞くのをやめるかい?」
「そこまで聞いてやめられるかよ」
サトシの言葉にシゲルは苦笑する。そして、真面目な表情になると口を開いた。
「ここでこの写真を撮った日、あれはサトシと僕が、初めてミズカの存在を知った日だった。サトシの父親に連れて来られた彼女に正直戸惑いしかなかったよ」
「わざわざ父さんは何しに来たんだよ?」
サトシの質問にシゲルは表情をなくした。重々しい空気になる。シゲルは眉間にシワを寄せた。
「そのときは知らなかったが、どうやらミズカをこちらの世界で殺害しようとしていたらしい」
「……は?」
サトシは目を見張った。シゲルから恐ろしい単語が出てきて、ごくりと息を飲む。
「オーキド博士がそれを止めたらしくてね。止めてこちらの世界に用がなくなったからなのか。ミズカとサトシはその場で一度記憶を消された。それから、博士はミズカが今後殺害されぬように手を貸したんだ。……この世界に呼んでトレーナーにしようとしたらしい。ミズカが父親に殺されそうになったときに、ちゃんと対抗できるように」
サトシは言葉を失った。なぜ、わざわざこちらを捨ててまで作った家族を殺そうとするのか。サトシには皆目見当もつかない。
「博士はサトシの存在は伏せるつもりだった。だが、奇跡的に会ってしまったんだよ、君たちは。だから、互いの関係を知らぬまま、友人として旅をしていた。……無論、それには終わりが来た。また君らの父親がミズカを殺そうとしてきた。だから、博士は二人に関係を話すしかなくなったんだ。友情を切り裂く話だったとしてもね」
サトシはギュッとピカチュウを抱き締めた。微かに過ぎる記憶は、いい記憶ではない。
『無理だよ。もうあたしはサトシを友達として見れない。もちろん、兄妹としてもね』
嘲笑する黒髪のショートの女の子が掠める。