7章 シャイルとミズカ
「ここみたいだね」
「緊張するぜ……」
一方、リョウスケから連絡があり、全てを話してもらったサトシとシゲルはファミレスにいた。
「ファミレスって……。もっと良い所、なかったのかよ」
サトシがボソッと言った。せっかくの緊張感も台無しである。
「そんな文句を言ってる場合じゃない。行くぞ」
シゲルは呆れるとスタスタ中へ入って行った。肩に乗せたピカチュウと顔を見合わせると、サトシもそれに続く。
中に入ると、窓から一番離れた所の端の席に、シャイルとマルナはいた。そこだけ異様な空気を放っている。マルナは二人に気づくと立ち上がり、お辞儀をした。
「すまないね。時間をもらって」
「いえ……、あの、どうぞ」
マルナは、二人に席へ促す。すると、店員が来て、メニューを聞く。二人は適当に飲み物を頼んで店員を見送った。
「こんにちは。俺はシャイル。こっちがマルナだ」
黙っていたシャイルが口を開いた。室内にも関わらず、ハンチング帽にマフラーをして顔を隠している。リョウスケにはシャイルはもしかしたらずっと黙っているかもしれないと言われた。二人は喋ってくれてホッとする。
「俺、サトシ」
「僕は、シゲルだ。よろしく」
二人が自己紹介をすると、軽くシャイルは頷いた。
「どうやら、タカナオをこの世界に連れて来るのに、君達も関わっていたらしいね」
「はい。リョウスケとあらかじめ、打ち合わせしていました」
シゲルの言葉に、マルナは答えた。シャイルからは、ある程度のことは答えて良いと言われている。
「裏で協力してくれたのは、ありがたいけど、どうしてリョウスケに背負わすような事をしたんだ?」
サトシが聞く。電話でのリョウスケは切羽詰まった様子だった。後で、いくらでも説教は聞くと。
「……背負ってるのはシャイル様のほうです」
ボソッとムッとした表情でマルナが言うが、シャイルが止めた。そして、サトシの質問に自分が答える。
「ああ。だから最初、俺はリョウスケに両親を連れて逃げろと言った。だが、あいつは手伝いたい、と自らが言ったのだ。別に強制はしてない。むしろ、手伝うという言葉に反対した」
その言葉にサトシは黙る。リョウスケならありえる行動だと思った。そして、シャイルの言葉に懐かしさを感じる。サトシは8年前の記憶を思い出していた。
「俺は、マルナとリョウスケに感謝しているんだ。こんな状況になって悪いと思ってる」
シャイルの隠れた横顔を見て、マルナは顔を歪めた。
「君達は、どうしてNWGに入ったんだい?」
シゲルに聞かれ、マルナはチラッとシャイルを見た。
「私は……」
「話す必要などない」
口を開いたマルナを遮り、シャイルはそう言った。「でも」とマルナが不満そうな表情をするが、シャイルは首を横に振る。
「シャイル様。私のことを考えて下さるのはわかります。しかし、話さなければならない事です」
「それは、そうだが……」
「大丈夫です」
顔は見えないが、マルナの言葉でシャイルは少し顔を歪めたようだった。それを見て、サトシとシゲルは首を傾げる。マルナについては、リョウスケからは何も聞いていない。
聞いているのは、これまでのリョウスケのことと、それからシャイルのことだ。
「……わ、私は、生まれた時から、組織の一員でした。生きていく中で、善と悪を選ぶ自由がなかったんです」
「どうしてだ?」
一瞬、マルナは躊躇した。目の前に座っている二人を見ると、今更ながら言っても良いのか不安になる。しかし、リョウスケの信頼していた人達であり、ずいぶん昔ではあるが、北風使いもかなり信頼をしていた人達だ。
そう思うと少し落ち着きを取り戻した。口を開く。
「私の……、私の母が……、NWGのボスだからです」
告白すると彼女は俯いてしまった。サトシとシゲルは驚いて、マルナを見た。
「緊張するぜ……」
一方、リョウスケから連絡があり、全てを話してもらったサトシとシゲルはファミレスにいた。
「ファミレスって……。もっと良い所、なかったのかよ」
サトシがボソッと言った。せっかくの緊張感も台無しである。
「そんな文句を言ってる場合じゃない。行くぞ」
シゲルは呆れるとスタスタ中へ入って行った。肩に乗せたピカチュウと顔を見合わせると、サトシもそれに続く。
中に入ると、窓から一番離れた所の端の席に、シャイルとマルナはいた。そこだけ異様な空気を放っている。マルナは二人に気づくと立ち上がり、お辞儀をした。
「すまないね。時間をもらって」
「いえ……、あの、どうぞ」
マルナは、二人に席へ促す。すると、店員が来て、メニューを聞く。二人は適当に飲み物を頼んで店員を見送った。
「こんにちは。俺はシャイル。こっちがマルナだ」
黙っていたシャイルが口を開いた。室内にも関わらず、ハンチング帽にマフラーをして顔を隠している。リョウスケにはシャイルはもしかしたらずっと黙っているかもしれないと言われた。二人は喋ってくれてホッとする。
「俺、サトシ」
「僕は、シゲルだ。よろしく」
二人が自己紹介をすると、軽くシャイルは頷いた。
「どうやら、タカナオをこの世界に連れて来るのに、君達も関わっていたらしいね」
「はい。リョウスケとあらかじめ、打ち合わせしていました」
シゲルの言葉に、マルナは答えた。シャイルからは、ある程度のことは答えて良いと言われている。
「裏で協力してくれたのは、ありがたいけど、どうしてリョウスケに背負わすような事をしたんだ?」
サトシが聞く。電話でのリョウスケは切羽詰まった様子だった。後で、いくらでも説教は聞くと。
「……背負ってるのはシャイル様のほうです」
ボソッとムッとした表情でマルナが言うが、シャイルが止めた。そして、サトシの質問に自分が答える。
「ああ。だから最初、俺はリョウスケに両親を連れて逃げろと言った。だが、あいつは手伝いたい、と自らが言ったのだ。別に強制はしてない。むしろ、手伝うという言葉に反対した」
その言葉にサトシは黙る。リョウスケならありえる行動だと思った。そして、シャイルの言葉に懐かしさを感じる。サトシは8年前の記憶を思い出していた。
「俺は、マルナとリョウスケに感謝しているんだ。こんな状況になって悪いと思ってる」
シャイルの隠れた横顔を見て、マルナは顔を歪めた。
「君達は、どうしてNWGに入ったんだい?」
シゲルに聞かれ、マルナはチラッとシャイルを見た。
「私は……」
「話す必要などない」
口を開いたマルナを遮り、シャイルはそう言った。「でも」とマルナが不満そうな表情をするが、シャイルは首を横に振る。
「シャイル様。私のことを考えて下さるのはわかります。しかし、話さなければならない事です」
「それは、そうだが……」
「大丈夫です」
顔は見えないが、マルナの言葉でシャイルは少し顔を歪めたようだった。それを見て、サトシとシゲルは首を傾げる。マルナについては、リョウスケからは何も聞いていない。
聞いているのは、これまでのリョウスケのことと、それからシャイルのことだ。
「……わ、私は、生まれた時から、組織の一員でした。生きていく中で、善と悪を選ぶ自由がなかったんです」
「どうしてだ?」
一瞬、マルナは躊躇した。目の前に座っている二人を見ると、今更ながら言っても良いのか不安になる。しかし、リョウスケの信頼していた人達であり、ずいぶん昔ではあるが、北風使いもかなり信頼をしていた人達だ。
そう思うと少し落ち着きを取り戻した。口を開く。
「私の……、私の母が……、NWGのボスだからです」
告白すると彼女は俯いてしまった。サトシとシゲルは驚いて、マルナを見た。