1章 北風使いの生まれ変わり
オーキドに案内され、サトシとカスミは客室へ来た。ケンジが「押しかけちゃったのか」とカスミに苦笑する。どうやらケンジも北風使いの生まれ変わりを思い出しているようだった。
サトシは自分だけ何も知らない空間に怪訝になる。みんなで自分を騙しているのではないかと思えてくる。
「サトシはまだ思い出していないんじゃな?」
「……はい。そもそも、北風使いの生まれ変わりのニュースすら知りませんでした」
「そうか。やはりな」
「だけど、シゲルとカスミから、北風使いが破滅の鍵? みたいなのを操れるから、悪い組織に追いかけられてるって聞きました。あと、そいつが俺の異母兄妹で俺と一緒に旅してたってことも……」
そう言うと、オーキドは目を逸らした。
「そうか」
「あの、シゲルが聞いたとき、なんで答えなかったんですか?」
「お前さんたちが思い出したら答えるつもりじゃった。記憶のないままだと誤解されかれないからのう」
さっきのカスミと同じことを言われた。記憶の戻っていない自分に話していいのか……。
「そこまでしか聞いてないんじゃな?」
「はい」
「……カスミはどう思う。この先を話して大丈夫だと思うかのう?」
「……正直言うとわかりません。都合よくミズカの記憶だけ戻れば良いのにって思っているところもあります」
カスミは困った表情で答えた。ミズカの記憶だけ? カスミの含みのある言い方にオーキドも腕を組んで考える。
「……俺、何があったかは知らないけど、父親なんて18年間いないし、もうどうでもよくなってます。だから、今更妹の存在を知ったところで何も思わないし、記憶が戻らなくてもカスミのことは手伝います。世界の破滅が懸かってるっていうなら余計に」
何も知らないサトシは、ケロッと言いのける。サトシはこれまで父に会ったことがない。そりゃ、18年も家にいないのだから、とっくに捨てられててもおかしくはないと思っていた。
サトシにとっては、虫唾が走る話だが、外で女をつくって他に子供を作られていても不思議ではない。サトシはハナコが少し心配なくらいであまり気にはしていない。
だから、なぜカスミとオーキドが躊躇しているのかわからなかった。
「それに、カスミと仲が良かったんなら、良い奴なんだろ? だったら、そのミズカって奴に何があったか話してくれよ」
カスミとオーキドは目を見合わせた。
「サトシがその気なら話さない方法もあるんじゃが。話さずにミズカを探してもらうこともできんことはない」
「……そんなに話したくないんですか?」
オーキドの言葉にサトシは首を傾げた。
「そうじゃな。話したいと思う人間はいない話じゃ」
素直にいうオーキドにサトシは意外そうにした。そこまで言われると逆に気になる。
「僕が話します」
ドアの向こうを見れば、シゲルが入ってきた。サトシは目をパチクリさせる。
「カスミが心労する必要はない。僕がサトシに話している間にオーキド博士から話を聞いてくれ。すべて思い出したから」
「え、思い出したのかよ」
「ああ。オーキド博士、サトシを借ります」
「お、おお……」
シゲルはサトシを手招きする。サトシは首を傾げながらも、聞けるのならと立ち上がった。カスミは不安そうにはしたが、今はオーキドから話を聞くことにする。
サトシは自分だけ何も知らない空間に怪訝になる。みんなで自分を騙しているのではないかと思えてくる。
「サトシはまだ思い出していないんじゃな?」
「……はい。そもそも、北風使いの生まれ変わりのニュースすら知りませんでした」
「そうか。やはりな」
「だけど、シゲルとカスミから、北風使いが破滅の鍵? みたいなのを操れるから、悪い組織に追いかけられてるって聞きました。あと、そいつが俺の異母兄妹で俺と一緒に旅してたってことも……」
そう言うと、オーキドは目を逸らした。
「そうか」
「あの、シゲルが聞いたとき、なんで答えなかったんですか?」
「お前さんたちが思い出したら答えるつもりじゃった。記憶のないままだと誤解されかれないからのう」
さっきのカスミと同じことを言われた。記憶の戻っていない自分に話していいのか……。
「そこまでしか聞いてないんじゃな?」
「はい」
「……カスミはどう思う。この先を話して大丈夫だと思うかのう?」
「……正直言うとわかりません。都合よくミズカの記憶だけ戻れば良いのにって思っているところもあります」
カスミは困った表情で答えた。ミズカの記憶だけ? カスミの含みのある言い方にオーキドも腕を組んで考える。
「……俺、何があったかは知らないけど、父親なんて18年間いないし、もうどうでもよくなってます。だから、今更妹の存在を知ったところで何も思わないし、記憶が戻らなくてもカスミのことは手伝います。世界の破滅が懸かってるっていうなら余計に」
何も知らないサトシは、ケロッと言いのける。サトシはこれまで父に会ったことがない。そりゃ、18年も家にいないのだから、とっくに捨てられててもおかしくはないと思っていた。
サトシにとっては、虫唾が走る話だが、外で女をつくって他に子供を作られていても不思議ではない。サトシはハナコが少し心配なくらいであまり気にはしていない。
だから、なぜカスミとオーキドが躊躇しているのかわからなかった。
「それに、カスミと仲が良かったんなら、良い奴なんだろ? だったら、そのミズカって奴に何があったか話してくれよ」
カスミとオーキドは目を見合わせた。
「サトシがその気なら話さない方法もあるんじゃが。話さずにミズカを探してもらうこともできんことはない」
「……そんなに話したくないんですか?」
オーキドの言葉にサトシは首を傾げた。
「そうじゃな。話したいと思う人間はいない話じゃ」
素直にいうオーキドにサトシは意外そうにした。そこまで言われると逆に気になる。
「僕が話します」
ドアの向こうを見れば、シゲルが入ってきた。サトシは目をパチクリさせる。
「カスミが心労する必要はない。僕がサトシに話している間にオーキド博士から話を聞いてくれ。すべて思い出したから」
「え、思い出したのかよ」
「ああ。オーキド博士、サトシを借ります」
「お、おお……」
シゲルはサトシを手招きする。サトシは首を傾げながらも、聞けるのならと立ち上がった。カスミは不安そうにはしたが、今はオーキドから話を聞くことにする。