6章 ハナダジムの戦い

「じゃあ、行きましょうよ!」

席を用意してもらっていたことが、とても嬉しかったのか、ヒナはタカナオとリョウスケを引っ張る。

「うん」

タカナオは、すぐにそう返事をした。3人がどんなショーをするのか気になっている。しかし、リョウスケは少し暗い表情で断った。行く気はないらしい。

「せっかくカスミが用意してくれたんだ。行かないなんて悪いと思う」

タカナオの言葉に、リョウスケは顔をしかめた。

「いや……さ。シャイルさんと連絡がとれそうなんだ」
「え、シャイルって……、君がこの間、話してた?」

ヒナが聞くと、彼は頷いた。

「行くわよ」

ヒナはそれ以上突っ込むことをせず、タカナオだけを連れて行った。部屋にリョウスケを置いていく。部屋を出る間際にタカナオが見たリョウスケの表情は深刻そうだった。それが気になりながらも、今更、部屋に戻る気にはなれず、ヒナについて行った。

「あの……、ヒナ?」

ヒナは返事をしなかった。彼女は、あの時以来、NWGの話を持ちかけられるのを嫌がっている。直接、口には出さないが雰囲気でわかる。結局、黙ったまま、水中ショーを見る形となった。リョウスケのことや、今隣に座っているヒナのことが気になり、楽しめない。

たしかに、ヒナも自分もリョウスケに裏切られたという気持ちはなくなっている。彼がどんな気持ちでNWGに入ったのか、性格を知っているからわかる。しかし、壁があった。タカナオはそこまで感じていないが、幼馴染みのヒナは、別人のように思ってしまっているのか、リョウスケに対して壁をつくっている。

こうなったのも、姉や自分のせいだ。ヒナとリョウスケは巻き込まれただけである。タカナオは小さくため息をついた。

――ところでヒナって……。

ふと、なぜ彼女が一緒に旅をしているのか疑問がわいた。リョウスケは、この間の一件でシャイルという人に頼まれたと言っていた。ならば、ヒナも何か理由があるのではないかと思ったのだ。

わざわざ、自分を守るために旅をしているのは、それなりの理由がありそうだ。

「ヒナってさ、どうして僕と旅をしてるの?」

ギャラドスでさえ優雅に泳げるほどの大きな水槽の中で、泳いでいるカスミ達を眺めながらヒナに質問した。また返事は返ってこない。いや、返せなかったのだ。タカナオは大きく目を見開いた。

ステージには、カスミ、ハルカ、ヒカリの他に、その彼女達を縄で縛ったNWGだと思われる奴らが二、三人水中の中にいる。ヒナの表情を見ると、かなりひきつった様子である。観客がドッと騒ぎ出した。ざわめき、中には泣き出す子供もいる。

「黙ってくれないかなぁ」

やがて、ステージの上をピジョットに乗って旋回している20代くらいの男性がマイクを使った。言い方は、きつくないのだが、妙な殺気が感じられ、身の危険を悟った観客達は黙る。

「あんた達、何なのよ!」

カスミが睨み付ける。彼女達は縄で縛られたまま、プールの飛び込み台まで敵に引き揚げられた。

「言わなくとも、わかると思うがな」

フッと笑いながら、敵の一人であるリンクが言った。カスミ達はハッとした表情になる。きっと、ミズカを追っている組織だとわかったのだろう。
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