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5章 初めてのジム戦、リョウスケの苦悩

「フィ!」

エーフィは、攻撃を喰らうがすぐに立ち直った。タカナオの指示が遅い。エーフィはタカナオの言うことも聞かず、アイアンテールでフィールドの小岩を砕いた。そして、それをサイコキネシスで持ち上げ、ウソッキーにぶつける。

急だったもので、ウソッキーは躱しきれずに当たってしまった。

「エーフィ……」

エーフィに次の指示を出そうとしたが、彼女は勝手に動き出してしまった。つまり、言うことを聞かず自らの意志で動くことを選んだ。エーフィは次にスピードスターを放つ。そのまま、電光石火でウソッキーに正面から突っ込んだ。

どちらの攻撃も見事に的中し、ウソッキーを吹っ飛ばした。ウソッキーが立ち上がると同時にエーフィは催眠術をかけ、よろめかせた。止めに、サイコキネシスでウソッキーを宙に浮かせ、地面に叩きつけた。もはや、タカナオがバトルに参加する余地はない。

「ウソッキー、戦闘不能。エーフィの勝ち」

リョウスケの言葉にハッとした。まただ。また、宙に浮いた感じがした。以前、少年に勝った時のような気分だ。タケシは次のポケモンを出そうとしなかった。

「タカナオ」

彼はタカナオを呼ぶ。

「何?」
「エーフィをモンスターボールに戻してゼニガメでバトルしてくれないか」

その言葉に驚いた。何故、エーフィではなく、ゼニガメに代えなくてはならないのだろうか。タカナオには不思議でならない。

「フィ!!」

何も言わないタカナオを余所にエーフィはタケシに反論する。バトルを続けて欲しいと言っているのだろう。

「エーフィ。お前が頑固な性格なのは知っている。でも今回は聞いてくれ。これはお前のためでもあるが、タカナオのためでもあるんだぞ」

タケシの言葉に、エーフィは不満そうな表情を浮かべながらも頷いた。彼の言いたい事はなんとなくわかっているらしい。タカナオだけ一人ついていけない。

「タカナオ、ゼニガメに代えてくれ」

タケシはもう一度言った。タカナオは少し戸惑いながらも、ゼニガメを出す。そして、エーフィをモンスターボールへ一旦戻した。

「すまないな」
「いえ……」
「それじゃ、バトルの続きをやろう」

そう言って、タケシは元の場所に戻ると、次のポケモン、ゴローンを出した。

「ゼニガメ、水鉄砲!」

ここは相性を考え、妥当な技を指示した。しかし、ゴローンに効いた様子はない。

「ころがるだ」

タケシが指示した技はころがるだった。スピードはかなり速く、ゼニガメは躱しきれない。一度喰い立ち上がるが、もう一度、ゴローンがスピードを上げ、ゼニガメに攻撃する。威力が凄いのか、吹っ飛んだ。

「そこから立て直して、泡攻撃だ!」
「ゼニィ」

次に泡攻撃。しかし、転がっている状態のゴローンはそれを弾き飛ばしてしまった。地へと落ちるゼニガメは結局、次のころがるで戦闘不能になった。

「ゼニガメ、戦闘不能。ゴローンの勝ち」
「ゼニガメ、ありがとう」

タカナオは、そう言って、ゼニガメをモンスターボールに戻し、再びエーフィを出した。すると直ぐ様、エーフィはゴローンへ攻撃しようと動き出した。

「戻れゴローン」

しかし、タケシはバトルする気がないらしく、攻撃される前にゴローンをモンスターボールへ戻した。タカナオは、驚いた表情でタケシを見つめる。

タケシはエーフィに近づき頭を撫で始めた。

「エーフィ、お前……」

タケシの言葉に、エーフィは目を逸らした。

「タカナオに余計な心労をかけたくないのはわかるが、これは言うべき事だろ」
「フィ……」
「あの……。どういうこと?」

全く話の展開が読めないタカナオに、リョウスケがため息をついた。

「前に、お前がエーフィとバトルが息が合わなかった時、俺は、エーフィは自分勝手には動いていないって言ったよな? でも今日は、タカナオの言うことを全て無視した」

リョウスケに言われて、タカナオは頷いた。たしかにエーフィは、今回、自分勝手で攻撃し判断している。

「頼り過ぎていたのよ。タカナオは」

ヒナが眉間にシワを寄せながら言った。

「二人から聞いたぞ。息が合わなかったバトルから、エーフィに自分の意志で動くように指示をしていたらしいな」
「うん……」
「それがエーフィには不安だったんだよ。タカナオはバトルと……、いや自分と向き合いたくないんじゃないかって……。だったら、強いトレーナー相手に自分の判断で動いた方が良いとな」

タケシの言葉に、「あっ」と声をもらした。エーフィを人間として考えれば、すぐに理解出来たかもしれない。彼女だって不安なはずなのだ。違うトレーナーと旅をして。
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