「さすが、タケシさんね」

ヒナは呟いた。彼女は少し不安げな表情でタカナオを見る。

「バタフリー、風おこし！」
「フリフリィー！」

タカナオは、ウソッキーの動きを止めるため、風おこしを指示する。上手くウソッキーの動きを止めることが出来た。

「そのまま、ウソッキーの正面に突っ込むんだ。近距離で、サイケ光線！」

バタフリーは頷き、風おこしを止めると、ウソッキーの正面に迷いもなく突っ込んで、サイケ光線を放った。なんとか上手くいき、ウソッキーにやっと一撃を喰らわすことが出来た。

しかし、距離を縮めたことにより、バタフリーは、またもウソッキーから捨て身タックルを喰らうことになった。レベルが低いためか、もうボロボロで上手く距離を離すことが出来ない。

「超音波！」
「モノマネだ」

相手を混乱させようと、超音波を指示しても先程と同じで打ち消される。次に指示を出したのは、風おこしだ。しかし、相手はタケシ。二度も通用しない。風おこしは近距離にも関わらず、あっさり躱されてしまった。

それを観ているヒナは深くため息をついた。今のタカナオでは勝ち目はないと直感した。まだ一匹目だが、この調子では、ゼニガメやエーフィに交代したところで同じだろう。

「嘘泣きだ」

ウソッキーはタケシの指示により、突然泣き出した。タカナオは動揺し、すっかり頭が真っ白になってしまった。何故、嘘泣きをさせるのか、考えても思いつかない。

――タケシさん。手加減ねぇな。

審判をしているリョウスケは、ウソッキーを見つめる。タケシは、タカナオを動揺させ、冷静さを欠けさせるために嘘泣きを指示したのだ。つまり、タカナオはあっさり術中にハマってしまったわけである。

「捨て身タックルだ」

ウソッキーは、隙をついて近距離にいるバタフリーに捨て身タックルをした。バタフリーは倒れる。まずはタケシが一匹を倒した。

「バタフリー、戦闘不能。ウソッキーの勝ち」
「ありがとう。バタフリー」

タカナオは、バタフリーをモンスターボールへ戻した。次にタカナオが出したのは、エーフィである。

「エーフィ、久しぶりだな」
「フィ！」

余裕そうに、エーフィにタケシは話しかけてきた。彼女は、彼の言葉にニコッと笑い返事をする。

「エーフィ、準備は良いかな？」

タカナオが聞くと、エーフィは表情を引き締めて頷いた。エーフィは一度、ジム戦をやったことがある。ミズカとの息の合ったバトルでも、ジムリーダーを倒すのにかなり苦戦した事を覚えている。

まともにバトルを学ぶ気のないタカナオでは勝てない。それもエーフィはわかっている。

「エーフィ、アイアンテール！」

その指示に、エーフィはとりあえず言うことを聞こうと、まずアイアンテールを繰り出す。

「ウソッキー、じたばただ」

タケシはウソッキーに、じたばたするように言った。エーフィのアイアンテールは上手く当たらず、逆に攻撃を喰らってしまった。