5章 初めてのジム戦、リョウスケの苦悩

「お、大きい……」

ニビジムの中に入り、感動しているのはタカナオである。アニメで見た時よりも大きく感じる。学校の体育館を彷彿させる。フィールドは岩がたくさんあり、いかにも岩タイプのポケモンに有効そうなものだった。

今回の相手は、ここのジムリーダー、ジローではなく、タケシだ。実は、ジローは留守にしており、二日三日、帰ってこないらしい。その代役としてタケシが受け持つことになった。ちゃんとジローからも許可は得ている。

「ルールは三対三。チャレンジャーだけが、ポケモンの交代を自由に出来る。これで良いか?」

リョウスケに聞かれ、タカナオは頷いた。審判は彼がやってくれるらしく、審判台に立っている。

ごくりと息を飲んだ。初めてのジム戦で相手はタケシ。今はポケモンドクターではあるが、元々はジムリーダーをしており、ブリーダーもやっていた。彼は恐らく育てるのが上手く、ポケモンも強いだろう。一応、ジム戦前にトレーナーと何人かバトルはしているが、そんな小さな経験値で勝てるのだろうか、と今更ながら思ってきた。

「タカナオ! 自信を持ちなさいよ!! 君がしっかりしないとポケモンだってついて行けないわよ」

後ろからヒナの声がした。たしかにそうだ。自分がしっかりしなくては。そう思って大きく深呼吸をした。

「じゃあ、始めよう。俺の最初のポケモンはこいつだ」

タケシの最初に出したポケモンは、ウソッキーだった。

「えっとウソッキー……」

タカナオはポケモン図鑑を開いた。

「ウソッキー、ウソハチの進化系。樹木のように見える体は実は、石や岩に近い。水には滅法弱い」

図鑑から発しられる情報はタカナオもよく知っているものだ。ウソッキーは岩タイプ。どうしたものかと考える。

「よし、バタフリーよろしく!」

タカナオの最初のポケモンはバタフリーである。ゼニガメも考えたが、最初に戦闘不能になっては後がきつくなる。バタフリーで様子を見ることにした。

「バタフリーか。珍しいポケモンを持ってるな……。……そっちからいいぞ」

タケシはバタフリーを見て少し驚いた様子だ。やはりバタフリーは珍しいらしい。

「バトル開始!」

リョウスケの言葉と共にバトルは始まった。

「バタフリー、まずはサイケ光線!」

早速タカナオはバタフリーに指示をする。彼女は頷き、サイケ光線を放つ。

「ウソッキー、かわすんだ」

ウソッキーは、素早く、あっさりと攻撃を躱した。

「捨て身タックルだ」

続いてタケシは指示を出す。バタフリーは躱しきれず、攻撃を喰らってしまった。一旦、天井の近くまで行き、ウソッキーと距離を離す。

「そこから、超音波!」
「フリィ」

バタフリーは超音波を放った。これで混乱させようと思ったのだ。

「モノマネだ!」
「ウッソ!」

超音波は悪くない選択のはずだが、ここは流石ジムリーダー。モノマネにより、ウソッキーも超音波を放ち、両者、打ち消す形となった。タカナオはごくりと息を飲む。

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