4章 バタフリーと密猟団

「大量だな。兄貴」
「あぁ、これなら一ヶ月は暮らせる金が出来る」

しばらく歩いていると、弾んだ会話が聞こえてきた。バレないようにタカナオ達は木の陰に隠れる。

「密猟団か……」

リョウスケが呟いた。隣でヒナも頷いている。タカナオにも何となく、密猟団の意味はわかった。密猟団が何をしているのかというと、バタフリー達の巣を荒らして、彼らを捕まえている。金が出来ると言ったのは、捕まえたバタフリー達を売るつもりなのだろう。

「酷い……。でもなんでバタフリーなの?」
「今一番、繁殖率が悪いポケモンなんだ。ここ五年間でかなり激減してる」
「つまり、バタフリーがレアになってるのよ。そしたら、バタフリーを欲しがる人も増えるでしょ? 密猟団から金を払っても欲しいと思う人も増える。その分、密猟団もバタフリーを捕まえてお金を作ろうとするのよ」
「悪循環になってんだよ。で、バタフリーは保護禁止対象。ゲットは一人一匹までと決められてる」

タカナオは、それを聞いて顔を歪めた。人間の勝手な行動でバタフリー達に迷惑をかけている。正直、ポケモン世界でこんなことがあるとは考えたくなかった。

「……あの!」

気がついたら、密猟団の前に立っていた。

「あ? なんだお前」

当然、密猟団からしたらそういう反応になるだろう。タカナオは、この先を何も考えていなかった。いつもは考えて行動するが、今回はどうも許せず、冷静さを失っていた。

「ば、バタフリーが可哀想かと……」

何を言えば良いのだろう。言ったところで話を聞いてくれるわけがない。

「あいつ……。大丈夫か?」
「さぁ……」

後ろで隠れているリョウスケとヒナ、そしてバタフリーは、頼りないタカナオを前に溜め息をついた。彼らは顔を見合わすと、バレないようにこっそりと行動し始める。

「なんだ。ただの雑魚か」
「ほら、早くバタフリーをトラックに積め」

タカナオをスルーする事にした密猟団は、トラックにバタフリーを積み始めた。タカナオはゼニガメとエーフィを出す。

「兄貴。俺、行ってくる」
「あぁ、頼んだ」

仕方なさそうに、密猟団の一人が相手になる。密猟団の出したポケモンは、ゴースとライチュウだった。相性はかなり悪い。

「な……」

まさか、こんな相性が悪いポケモンと当たると思ってなかったタカナオは、ごくりと息を飲んだ。勝てる自信がない。

「ゼニゼニ!」

そんな気持ちが伝わったのか、ゼニガメが振り向いてニコッと笑った。エーフィも振り向いて、自信ありげな表情を浮かべる。何か考えがあるらしい。

「わかった。エーフィ、君は君の意思で動いて。ゼニガメは僕の指示を聞いてくれる?」

二匹とも頷いた。この間のバトルからして、この選択が一番良いと思ったのだ。

「あたしは、トラックに入ったバタフリーを助けるわ」
「あぁ。俺は兄貴ってのとバトルする」

このタカナオの行動で、ヒナとリョウスケも行動に移した。バタフリーは、何故かタカナオのもとへ飛んで行く。三人の中で一番頼りないと思ったからだ。

「フィ」

最初に動いたのは、エーフィである。彼女は、ライチュウに向かってアイアンテールを放った。慌てて、ライチュウは尻尾で防ごうとするが、予想以上に威力が強く、まともに喰らってしまった。

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