「もう少しでニビよ」

地図を真剣に見ながらヒナが言った。その言葉にタカナオは、笑みが溢れた。あと少しでニビシティに着く。つまりあと少しで初めてのジム戦が出来るということだ。彼は内心楽しみにしている。

「なぁ、あれなんだ？」

リョウスケが前方を指を差した。彼らの前から紫色の物体が物凄い勢いで飛んでくる。それはタカナオの顔面に衝突し、ボーッと少し先のことを考えていた彼は、豪快に尻餅をついた。

「い、痛い……」

お尻より、顔の方がヒリヒリする。顔を擦る。ノソッと立ち上がり、紫色の物体に目をやった。そこにはバタフリーがいる。

バタフリーは今にも泣きそうな表情でタカナオを見つめていた。それを見て、彼の表情はひきつる。

「あ……、ごめん……」
「……フリィ……」

少ししょんぼりした表情でバタフリーは返事をした。とりあえず大丈夫そうだ。ふぅと息を吐いた瞬間、バタフリーはタカナオに抱きつき大泣きし始めた。

「え……。ごめん！　何処か痛いところあるの！？」

それに驚き、タカナオは聞くが彼女は首を横に振った。

「このバタフリー、何かあったんじゃないのか？」
「たしかに。この子、慌ててて前が見えなかったみたいよね。だから、タカナオとぶつかったんでしょ？」

リョウスケとヒナの言葉に、バタフリーは頷いた。どうやら、タカナオと衝突したから泣いたというわけではないようだ。彼ら三人に会う前に何か事件に巻き込まれていたらしい。

「何があったの？」

タカナオが聞くと、バタフリーは彼から離れて、さっき来た道を見た。そして小さい手で指を差す。この先に進めばわかると言いたいのだろう。タカナオ達は顔を見合わせて頷くと、バタフリーに案内してもらった。